伝承異譚
心象風景−夕闇の中のひととき−
心象風景 −夕闇の中のひととき−
夕闇が忍び寄る
蒼く深い、静寂の中に、彼は居る。
やがて、闇が彼を覆う。
闇のなかに、そっと息づいている。
誰にも気づかれることなく、息をひそめて。
凍える寒さの中、
孤高の狼のように。
背中に少女の重みを想いながら、
今日も彼は丘に登る。
そして、青白く光る月に背を向ける。
彼は、遙かに人間の魂を持つ狼。
小さな、赤子が近づく。
赤子は知っている。
彼には何も悪意のないことを。
赤子は無邪気に笑う。
そして、彼は今日も赤子を胸に抱くように眠る。
銀の艶やかな狼。
彼は、皆から恐れられるバンパイヤ。
赤子とひっそり暮らすバンパイヤ。
でも、誰も本当の彼を知らない・・・・。
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