長編
春 1
春のオレらは、大層美しいんだそうだ。
人間がゴミの様に集まっては、騒ぎ始める。
ひとの体を折るは
聖地を穢すは
本当に好かんやつ等だ。
枝に腰掛、人間を見下ろす内に、つい口に出てしまった。
「一遍、祟りでも起こしてやろうか。」
「そんなこと、ボクらには出来ないでしょう。」
オレの背後から、気配一つさせずに、こいつはいつも現れる。
「わかってるよ・・・エイ」
そんな会話が、自分達の上で繰り広げられているなど露知らず、人間達のバカ騒ぎはまだまだ続くようだ。
え・・・何で気づかないのかって?
それはな、人間じゃないからだよ
オレも・・・エイもな
なんて言えばいいのだろう。
オレらは、「桜」で
エイは、「オレ」で、「影」で、「光」な訳で
確かに言えることがあるとするなら
そう・・・
お前らの言う所の、「好きなやつ」だ。
前へ次へ
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!