長編
春 7
エイは、はっきりと肯定してくれた。
だったら……
「だからさ、オレがおまえを思ってるこの気持ちは、「ただの好き」じゃなくて……もっと、「特別」なものなのかなって思ったんだ。これは、勘違いかもしれないけど……こんなの、人間とか動物みたいな生き物にしかないって思ってたし…」
だから……
弱くその言葉を絞り出した後は、しばらくの沈黙が続いた。
何も考える事が出来ず、エイの顔も見られないでいた。
と…いきなり、一瞬のぬくもりを感じたと思えばオレはエイの中に包まれいた。
トクン…トクン…
「聞こえますか、サク。あなたもわたしも生きているのですよ。」
「だから、わたし達が持ってしまった感情は決して勘違いでも、同族愛でも、誰かの意識でもないんです。」
耳に唇をあて、優しく囁かれた声に、オレはエイの伝えたかったすべてを知った。
耳に寄せられていた唇は顔の前に運ばれ、静かにオレの唇と重なった。
伝わる熱が心地良くてオレは身を委ねるようにそっと目を閉じた。
離された唇から、微かに漏れる声……
やっと…言えますね。サク、わたしは……
愛していますよ
そして、もう一度強くてやさしい力で抱きしめられた。
時は春
桜の花に導かれるように
全ては始まり
生命達は、歩みはじめる
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