長編
春 6
背中にオレ達と同じ生命を感じる。この瞬間、腕の痛みを感じて、エイが流す涙をみて、なかまの脈を感じて初めてオレは“生きている”のだと実感した。
そうか…オレ達は、桜という本体とは別のしっかりとした意識であり、生命なのだ。
オレ達は、精霊であるが、桜の意識ではないと理解していたがわかってなかった。
ふと思う事がある……
だったら、オレが抱いているこの気持ちはおかしものではないのではないか……と
今までオレは…オレ達のことを生命でなく、意識として捉えていた。だから、同じ存在が大切で「好きなのだ」と思ってきた。
でも、人間と同じ生命なら…オレ達にもしっかりした意識があるのなら、この思いはもっと「特別」なのではないのか……
「なぁ、エイ…オレ今日初めて生きてると思ったよ。」
「何いってるんですか。…わたし達は生きてますよ。確かな意識を持って。」
「だからさ、オレの意識はオレの物で……お前のでも、ましてや「桜」のものでもないんだよな。」
「そうですよ。…サク、「サク」という人格をしっかり持って生きてるんです。」
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