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長編
春 5

微かに頬をつたうねつに目を覚ますと、ま…予想通りの顔が目の前にあった。
涙をながし、必至に唇を噛みしめて、何かに耐えているエイの顔が写し出されている。



何がそんなに悲しいのかも、何がそんなに悔しいのかも大体の察しはつく。



ああ…本当にこいつは、やさしいな……



そんなことを思いながら、まだ少し痛む右腕をエイの頬に伸ばしてやる。すると、オレが目覚めたのに気付いたからなのか、やっと少しの笑顔を見ることが出来た。しかし、その顔もまたすぐ悲しみを押し殺す様な顔に戻ってしまった。



「サク…目覚めたのですね。本当に…ほんとに良かった……」


「なに…言ってんだよ。お前が無事なんだから、オレも無事に決まってんだろ。……だからさ、そんな顔すんなよ。」


「わたしは…サクの影でしかありません。だから、あなたの痛みも半分しか分かちあえない……。仇を討とうにも、わたしには…わたしたちには、そんな力なんてありません。」

「……いいんだ。もともとオレはこんなもの一つための復讐なんて望んでない。それよりエイが無事でよかったって……本気で思う方が一杯だ。」


あらかた痛みも消えてきたので、エイの手を借りて起き上って、失礼ながら「仲間の木」にからだを預けた。










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