アイマイモコ
15
「…‥はぁー‥」
瑞樹は先に屋上を後にした。
残された陸は屋上のフェイスに寄りかかり膝を抱えると、自然と漏れる自分の溜息にまた嫌気がさしていた。
「珍しいね、陸のそういう顔」
「!!」
にっこり笑いながらゆっくりとした足取りで陸に近付いてきたのは、秋だった。――陸は反射的に逃げる体制をとろうとした。しかし途端に秋は後ろ手でカチャリ、と屋上のドアの鍵を閉めた。
「おっと、どこ行くの? 陸って本当に逃げるの好きだね?」
「………っ、」
「いずれは捕まっちゃうんだからさ、悪あがきはやめたら?」
「…っ、余計なお世話だっ!あれだけ言ってるのに何でお前まで近づいてくるんだよっ!」
「“お前まで”って、他に誰か近付いてきたの…?」
「…っ、」
「まぁいいや。それを聞いたところで陸は教えてくれないし、俺もいらない嫉妬するだけだし」
嫉妬、という言葉に口を紡いだ陸を横目に、秋はそれはそれは楽しそうな顔をしていた。けど、それと同時に、陸は疑問も持った。
「お前、笹川と付き合ってるんじゃないのかよ…?お前がそう言ったんだろう!?」
「…ん、あぁそうだね? でも瑞樹、陸が知ってるって分かって、ものすごく動揺してたよ。あれはもう傑作だよ」
「……わざとやったんだろっ」
「えぇー?何のことぉ?」
あくまでシラを切る秋に、陸は奥歯をグッと噛み潰した。
それがどうしてだがは分からないが、今の秋のこの言動が愉快でないことだけは確かだった。
「お前、何考えてんだよ」
「……さぁ?あ、でも、俺面白いことを考えちゃったんだ」
「…っ!!」
また被害者が増えるっ!
反射的にそう思った陸は、くやしさの余り堅く目を瞑った。
そーやって、また同じ事を繰り返していく秋を陸は、ただ睨むことしか出来なかった。
『ねぇ?みんなさー、俺の言うことを聞かないと、どうなるか分かってるよねぇ──』
『陸は特別だよ』
『次はアイツだ。アイツ、陸に馴れ馴れしいんだよねぇー?』
『友達をやめる…?へぇ、じゃあ陸。陸はどうなっても良いって言うんだね?』
・
・
「………」
「どうしたの?顔色悪いよ」
「お前って、ホントに残酷な奴だな?でも俺はお前の友達やめて正解だったよ。お前みたいな最低な奴を友達だと思いたくないし―」
「笹川瑞樹…。アイツほど扱いやすい男はいなかったなぁ。よっぼど友達が居なかったんだろうね?ちょーっと突っついたらすぐこっち側に来たし。ふぅ、可哀想な陸くーん」
「っ、」
「でも、一人ぼっちは慣れてるもんねぇ?あーあ、俺が恋人だったら優しく慰めてあげるのにぃ」
「……‥」
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