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アイマイモコ
14

『あっついな陸、もう夏だぜ?』

『あぁそうだな。けど俺、夏ってなんかすげぇ好きだよ!』

『陸は全部好きなんだろう?』

『ううん…。実は俺、春はあまり好きじゃないんだ』

『なんでだ?』

『………。さぁ?何でだろうな』

『俺が聞いてるんだけどっ』

『あははははは──』


中1の夏休み前の帰り道、俺と陸は他愛のない話しをしながら帰っていた。陸は暑い空の下でも、いつも爽やか笑っていた。
――だけど、これが、俺達の関係が近くなったきっかけになっていたんだ。

『あぁ、彼女欲しいな』

『……彼女?』

『そうそう。俺も中学生になったんだし可愛い彼女が欲しいかなぁ、なんてね?』

『………』

『俺いっぱい色んな所に行きたいな!ベタだけど、遊園地水族館、動物園は…なんか臭そうだからこれはちょっと外そ……って瑞樹どうしたの?』

『………』

『瑞樹?どうし……っ、ふ』

陸に彼女が出来ちゃう、と思った瞬間、俺は頭の中が真っ白になっちゃったんだ。
そして、気付けば陸を壁に押し付けて強引にキスをしていた。必死で抵抗する小柄な陸を押さえつけるのは陸より一回り大きい体の俺には簡単だった。

『…瑞、樹‥やめ』

『……』

愛おしい。

『止め、ろ…!』

男にキス――自分の思考回路がおかしいと思いつつも、キスに慣れてない初々しいそんな陸が愛おしいと思ったら止まらなかった。



 ・
 ・
 ・

「和解、だと?」

「あぁ」

「ふざけんなっ!自分からし向けたくせに今更何言ってんだよ」

「だからこそ和解がしたんだ」

「………断るっ!」

そう言って陸は、俺を押し退けながら「やっぱりお前の話しなんて聞くんじゃなかった」とボソッと呟いていた。
…長期戦、かぁー。
上等じゃねぇか、だったら俺だってもう遠慮はしないんだからなっ。そっちがその気なら俺は俺で勝手にやらせて貰う。

「わかったよ。今日のとこは帰るけど、明日からは絶対に逃がさないからな?」

「……てめぇー‥」

「瑞樹、って言ってるだろ?」

「…………」

図々しいと言われてももう構わない。俺は今まで自分が欲しい、と思っていた物や事をすぐに諦めていた。その人が「欲しい」と言えば、嫌われたくないから全部それを譲っていた。
だけど、陸に嫌われているんじゃあ他の人に好かれたって意味がないってことに気付いたんだ。

どんなに新しい出会いをしても、絶対に陸を忘れることなんて出来なかった。

「陸」

「…っ、」


 ・
 ・

「………」

「あぁ!やっと見つけたっ!……ん?秋くん、ドアなんかに寄りかかって何やってるんだ?それに、屋上に来るなんて珍しいね」

「…‥別に。お前こそ何の用だ」

「あっそうだ!先生が秋くんのこと呼んでたんだよ!」

「今行く」




――陸と瑞樹の会話を、秋が聞いていたことを二人は知らない。

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あきゅろす。
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