アイマイモコ
15
「あれぇ?ないっ!」
「私のもないよぉ‥」
次の日──まだ右足の筋肉痛も取れず、疲れ半分の俺が教室移動から戻ってくると、クラス内で各自机を探ったり鞄の中身を全部出したりして必死になっていた。
俺は不思議そうにその光景を見ながら自分の教科書を机に置くと、近くにいたクラスメートの男子に声をかけた。
「おいどうしたんだ?」
「おう瑞樹。それがさー、教室に戻ったら女子達の財布がなかったらしいんだよ」
「‥マジで!?」
高校生ともなればバイトが出来る。けど、この学校でバイトをやっている女子は数えるほど──したがって女子高生にとって財布はとっても必需品なのだ。
そんな大事なものが無くなったとあれば、泣きたくもなる。
「もう‥ひどい〜っ!」
「ぐすっ‥せっかく朝1万円入れたばかりだったのにぃ!」
「…‥」
ちなみに、
女子と言っても全員というわけではなく、無くなったのは先日陸と楽しそうに話していた木内たちのグループだ。
「俺わかったぜ!」
「あ、俺もっ!」
何やら考え込んでいたクラスの男子が口を歪ませて可笑しそうにそう言った。
何がわかったんだろう?
なんか、嫌な予感がする…
「犯人は陸だっ!」
「「「「……」」」」
やっぱり言うと思った。
女子一同はその一言に神妙な面持ちをしながら黙り込んだ。
その姿に、男子たちも小さくガッツポーズをしている。
しかし、
「バッカじゃないのぉ?」
「…え?」
女子はきっぱりと否定した。
あまりの断定に、男子たちも一斉に目を見開いていた。あいつ等の事だから、良いところでも見せて株でも上げようと思っていたんだろう…。不憫な奴らだ。
「──俺がなんだよ?」
「…っ、」
遅れて教室移動から戻ってきた陸が、ドアを開けながらそう言った。本人の登場にまたしても黙り込む男子たち──そんな臆病な男子に舌打ちをする陸。
「また俺が悪者なんだ?随分楽しそうなネタにしてくれるな?」
「…‥」
「良いぜ?…別に、俺が悪者になったって誰も悲しむ奴なんかいないし…それにお前等のストレス解消になるんだろ?」
「宮沢くん、何もそこまで…」
「お前たちもさ、クラスメートなんだし仲良くやれよ?」
「宮沢くん…」
女子は心配そうにそう言った。
すると、陸が突然自分のカバンを開いてひっくり返していたのだ。みんな片眉を上げてそれを黙って見ていた。
しかし、中身が出てくる中に俺を含めて、みんなの目に信じられない物が映った。
──カタン
「はい。女子の財布を盗んだのは、この俺でした」
「……っ」
(…ウソだろう?)
陸は観念したかのように両手を上げて、自分が財布を盗んだことを認めたのだ。
その言葉通り、机の上に散らばる教科書の他には、ブランドの女物の財布が出てきた。
「これで納得した?」
「…‥」
「俺んちは貧乏なんで、金の有りそうな奴の財布を盗んだの」
「…宮沢くん、」
「ただそれだけ…」
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