アイマイモコ
14
「やっぱ、陸ムカつくな!」
「お前に言われたくない」
「…っ、お前女子に言っても良いんだぜ?本当の陸は冷たくて何を考えてんだかわかんない奴だぞ、ってな!」
「…‥」
ほらぁ、だんまりした!
やっぱり陸だって1人ぼっちでいるのはさすがに辛いんだ!
俺はそんな陸に優越感に近いものを感じてたまらなかった。
だけど陸は、そんな優越感に浸ってる俺とは裏腹に表情1つ変えずに言った。
「言えば?」
「え…?」
「別に言えば良いじゃん。お前には、俺がそういう風に映ってるんなら言えば良い…」
「…‥」
「──それに、今更嫌われたところで俺は痛くも痒くもない」
「…‥え?」
表情がなかった陸が、突然パンッと手を合わせるとリュックを背負い始めた。今度こそ集合場所に戻るのかと思いきや、一拍置いて立ち上がるとやっぱり反対方向を歩き始めた。
「さーてと、俺帰るわ」
「はぁ?何言ってんだよ陸?」
「だってどうせ俺がいたってお前たちは気分悪いだけだろ?…それに俺も色々面倒だし!」
「…‥」
伸びをしながら、陸はさも当然のように迷いもなく確かにそう言っていた。
それを聞いた俺は、こんなに近くにいるはずなのに陸がものすごく遠くに感じた。
ま、もっとも俺たちは今、友達じゃないんだから当然と言えば当然なんだけど…
「おい陸…っ!」
「もう集合時間だぞ?」
「…‥」
「早く行けば?」
早く1人になりたいんだかそれとも、俺の集合時間を心配してくれたんだか、早口で俺にそう捲くし立てた。
「…‥陸‥」
結局、お弁当を少し口にしただけで終わってしまった俺は、やむを得ず集合場所に向かった。しかしそこに陸の姿がないことから「帰る」と言ったのは本当だったらしい…
俺は思った。1人で何ができるというんだと‥お前なんかに何ができるというんだよ、陸。
──だけど、タイミングが良いんだか悪いんだか、それを俺に証明するかのようなある事件がこの後起きてしまった。
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