ShamanKing 2 「名前、忘れ物は無い?」 「多分大丈夫。」 荷物をまとめ終わった頃、お母さんが尋ねて来た。とりあえず必要だと思ったものは用意したので、大丈夫だとは思うが、それでもまだ不安だったのだ。"多分"というのは私の口癖みたいなもので、小さい頃は自然とその単語を口に出すたびに、自分は心配性なのだろうかと悩んでいた。 結局結論は出ていないが、今となっては出そうとも思っていないから、そんなに気にしてはいない。 「3番線の電車に乗ったら終点まで行って乗り換えて、ふんばりヶ丘駅ってゆーところで降りるのよ。」 地図を開き鉄道を指でなぞりながら言う。教えてくれるのはいいんだけど、コレ本日13回目だから…。 昨日は19回聞いた。ちゃんと数えていた私を褒めてほしい…。 心配性なところは完璧お母さん似だな… 「おじいちゃんに一言伝えていくのよ。おじいちゃんも心配してるんだから…」 初めての一人暮し。 初めての東京。 じいちゃんは最後まで反対していたっけ… 正直、私はじいちゃんが苦手だ。怖いし、何かと煩いし…。今まで何度怒られてきた事か…泣かされてきた事か…。どんな人より私を泣かせた回数はじいちゃんが1番多いだろう。 「じいちゃん…」 襖を開けると、鼻につく畳の匂い。嫌いじゃないけど好きでもない、小さい頃から嗅いでいた、じいちゃんの部屋の匂い。 じいちゃんはその部屋の真ん中に座布団を敷いて座っていた。 「名前…入ってきなさい…」 「はい…」 いつも以上にびくびくしていたかもしれない。私はじいちゃんに出された座布団の上に腰を下ろした。もちろん正座。 「支度は済んだのか?」 「あ…はい…そろそろ家を出ようかと…」 「そうか…」 じいちゃんは俯いて目を閉じると、再び私に向き直り、 「森羅学園…だったか…?」 「通う学校の事?そうですけど…?」 いきなり学校の話をしてきた。 「…うむ… あの学校には知り合いの孫も通っておる。」 「え…?そうなんですか…?」 「その知り合いもよろしくと言っておった。」 「…わかりました」 じいちゃんには日本中に沢山の知り合いがいる。 みんな仕事関係の人ばかりらしいが詳しい事はよく分からない。 部屋を出ようと襖を開けた時… 「名前…手を出したものは…やり通せ…諦めたりはするな…」 「うん…」 じいちゃんの顔が一瞬、不安の色に染まった気がした。 [*前へ][次へ#] |