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「あれ、名前をどうぞ携帯鳴ってるよ?」
ヒロが近くに置いてあった携帯を手渡すと、名前をどうぞの表情が僅かに歪む。
「出ねーの?」
『ぁ、うん…』
いいの、と苦笑し床へ置くとしばらくして鳴りやむ。
だがすぐに再び鳴りだした携帯。
またもやチラリとディスプレイを見るが出ない名前をどうぞ。
『……もしもし、』
それが4、5回繰り返されたのち名前をどうぞは諦めたように小さくため息をつくと、通話ボタンを押し立ち上がった。
「……」
「もしかして…あれかな、見合いした人」
チャマの言葉に、皆がああー、と納得した。それならば出るのを渋っていた行動も頷ける。
『あのー、まだちょっと予定がハッキリしなくてですね……はぃ……』
少し離れたところにいる困ってる背中を皆で見守るが、なかなか電話は終わらない。
『今引っ越しとかでもバタバタしてまし…え、?場所、ですか…?えー、と……それはちょっと…』
電話でも押しの弱さを発揮する名前をどうぞにだんだんとイライラしてくる。
さっさと切りゃいいのに。
「ちょ、藤くん…!?」
『ぇ、とあの…また予定がわかればこちらかっ!?ちょ、基くん!?』
我慢できなくて立ち上がると背後から近づき手から携帯を奪いとった。
驚いた瞳が俺を見上げる。
『それ、返して』
「お前は黙ってろ」
『なっ、』
「あのー、もしもし?」
かわりに話しかければ、電話の相手の男が少し困ってるのがわかった。
「悪いんですけど、コイツは俺のなんで…金輪際こーゆうのやめてもらっていいですか」
負けじと、君は誰だと電話口で問われる。
誰だって……
「名前をどうぞの彼氏ですけど。なにか」
『……』
パチクリさせ、見上げてくる瞳を見つめながら言ってしまった。
やべー。もう電話放り投げてェ。
言ったよコイツ!!と背後で驚きながら笑っているチャマ達は、これが本心だとわかってるのかどーか。
「だから、諦めてもらっていいすか。俺、誰にも渡す気ないんで」
そう啖呵きって電話をきれば、ヒューっとチャマが指笛を吹いた。
「ちょっと藤くんかっこよすぎ!!何してんのお前」
「男前だな」
名前をどうぞに携帯を返してチャマ達に微笑む。
再び名前をどうぞに向き合えば、困ったような瞳にぶつかった。
『なんか…怒って、る?』
「…」
『あの、ありがとう…』
お礼を言うものの、なんとなくこの微妙な空気を察しているのか名前をどうぞが少し怯えてるのがわかった。
「お前さぁ、なんでちゃんと断らないわけ?」
『こ、断ったよ。断ったけど諦めてくれないから…』
「諦めてくれないから、また会うわけ?諦めてくれないから、付き合うわけ?」
『……』
イライラした口調になるがどーもおさえられない。
黙った名前をどうぞに余計に腹が立った。
「いつもそーだよな。断りきれなかったからって…たいして好きでもないヤツと付き合ってたしな」
『それは…基くんには関係ないじゃない。それに少しは好きだったよ』
「初めて彼氏つくった時なんてそうだろ。告白されてなんとなくオーケーしたって聞いたぜ」
『ちがっ!?それは基くんが、………』
途中で黙ってしまった名前をどうぞ。
続く言葉が気になった。俺が関係してるのなら尚更。
「俺が、何?」
『……なんでもない』
「なんか言いかけただろ」
『なんでもないよ。そんな昔の事、今更言わないでよ!基くんにとやかく言われたくない!』
初めてに近いこんな彼女の張り上げた声に正直びっくりした。
泣きそうな顔で睨まれ言葉がつまる。
「ちょっと!?どーしたんだよ」
『…なんでもない』
心配したチャマが間に入ってきて俺らを見比べた。
「藤くん…?」
「悪いチャマ、コイツ借りるわ」
「え?」
『ちょ、』
名前をどうぞの腕を掴むなり、玄関へ向かう。
いきなりの行動に、名前をどうぞもメンバーも困惑しているのがわかった。
でも、ちゃんと話をしたいしちゃんと話を聞きたかった。
渡したくないから
「え、…なに?どーゆう事?」
「わかんね」
「今の短い時間に喧嘩する要素あった?」
「あの二人にはあったらしい」
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