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『基くんありがとねー』
「いえいえ」
少しばかり小走りに、マンションの玄関口まで降りてきてくれた名前をどうぞが笑顔で出迎えてくれた。
何度か訪れた事のあるヒロの住むマンションの向かい側に建つ、新しめなこのマンションが名前をどうぞの新居。
今日は、まだ終わってないらしい引っ越しの片付けを皆で手伝い、ついでに引っ越し祝いをしようという事になっている。
とゆーか引っ越し祝いと称して遊びたいだけなんだけどな。
「チャマは?」
『ヨシは秀ちゃんと一緒にお昼ご飯買いに行ったよ、今はヒロだけ』
「そっか」
エレベーターに乗り、2人だけの空間が少しばかりくすぐったい。
別に今まで散々2人だけの空間なんてあったから、珍しいわけじゃないんだけど。
意識すると、な。
『ここですー』
「おー」
「あ、おかえりー」
家に入り、名前をどうぞがドアを開ければ普通にそこに居るヒロ。
「っ何してんだよ」
ナチュラルすぎて、笑っちまった。
「まあ、何もない所だけどどーぞどーぞ」
「お前が言うなよ」
『はははっ』
なんか知らない部屋に少し緊張っつーか…改めてここが名前をどうぞの家なんだなと思うと変な感じだ。
『あ、ヒロここに出てた食器片してくれたんだ?』
「うん、適当にしまっちゃったけど」
『いいよいいよ、ありがとう』
隣の部屋にはまだ片付け途中の段ボールがチラホラあるが、リビングは比較的片付けてある為綺麗だ。
…あ、棚にトランスフォーマー。絶対あれチャマからもらったやつだろ。
「そーいやこっからヒロの部屋見えんの?」
『えー?どーだろう』
「俺ん家ねぇ、んー…あ!見える見える」
「マジで?」
二人でベランダに出て隣のマンションを見ればヒロが指をさす。
あ、本当だ。
『見えたー?』
「うん、ほら右から二番目のあそこ」
『おー、なんか変な感じ』
「な」
『暇な時懐中電灯でモールス信号送るね』
「はは、オッケオッケ」
笑い合う二人が少し羨ましい。
「なんか楽しそうでいいなーお前ら」
「藤くんも近くに引っ越しちゃう?」
「おー、…いや、色々面倒だからいいや」
『確かに面倒だね』
ふふっと笑う名前をどうぞを見ながら、やっぱり近くに引っ越しちまうか?と少しばかり思ったのは内緒。
「ただいまー」
少しして、玄関からチャマの声がした。ただいまってのはよく考えたらおかしいが、名前をどうぞは普通におかえりーと出迎える。
「はい、鍵。…あれ、藤くんいつ来たの?」
『さっき来たよ』
「おかえりー」
「藤くん電話したのに出なかったからまだ寝てるのかと思ったよ」
「え?…あれ、本当だ。わりィ全然気付かなかった」
ポケットから携帯をとりだし見れば、チャマからの不在着信二件。
時間的に…ここに到着した頃か?
名前をどうぞと一緒にいるからか他の事に意識がまわらなかったのかも、…あ、なんか俺今気持ち悪い人じゃね。
『何買ってきたのー?』
「あんまりなかったんだけどー、そばとーオムライスとー…」
『「オムライスー」』
すぐさま俺と名前をどうぞの声が揃いチャマ達が笑う。
「な、やっぱり二人はオムライス選んだだろ」
「お前らちょーウケる」
選びながら秀ちゃんがチャマに言ったらしい。俺と名前をどうぞは多分オムライスを選択すると。
まさにその通りだったな。
「オムライスうめーじゃん。な」
『ねー』
あ、同意する姿になんかキュンとした。
やべーな俺、相当重症じゃねーか。
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