蒔田さんの恋の行方
2
え、え、…なんで俺だけこんな空気なのかな…
周りを横目で見渡すと、握手を交わしていたり、笑いあったり、色んなコミュニケーションを取り始めていた。
目の前の現状が変わっている事を願いつつ、
目線を前に戻すと、1ミリも変わっていなかった。
そこには、ずっと俺の事を上から鬼の様な形相で凝視する、人物がいた。
どういう人が指導者になってくれるのか、上手くやっていけるのか、優しい人だったらいいななんて、少し緊張しながら考えていたのに、その緊張を超えて、よく分からない感情が押し寄せていた。
取り敢えず、挨拶は、しないと…だよな。
泳いでいた目線をバッと上げて、
先輩の後ろの壁を見ることにした。直視は…出来ないです。
これで少しは、目を合わせてると誤魔化せるだろ。
「初めまして。
私、真木田 眞御(マキタ マオ)と言います。
初めてで不慣れな事は多いと思いますが、手厚いご指導よろしくお願い致します。」
言い終えた後、最敬礼で締めた。
数秒のはずなのに、時が長く感じる。
相変わらずの、視線も感じるし…。
俺、やってけるかな…。
「真木田くん。」
……
俺、何かしたかな。
「真木田くん。」
……
でも、そういえばこの人って…
「真、木、田、くん」
「…へ?、え、あ、はい!!」
気が付くと、いつの間にか、耳の横に顔があり、耳元で名前を呼ばれている状況になっていた。
「少し、場所を変えて、話そうか。」
その人は、元の位置に戻ると
付いてこいとばかりに先に歩いていってしまった。
ほんとに、なんなんだ、あの人…
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