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BL長編snatch(完結)ヤクザと高校生
Snatch90Thank you for loving me all the time.
◇◇◇

テツと布団を並べて寝たが、1分経過……3分経過……5分経過しても何もしてこない。

寝たのかと思って横を見たら、目を閉じて眠っている。
奇跡が2日も続くのは、信じ難い事だった。

何もない方が楽だ。
けど、昨日は腕枕をしてくっついて寝たのに、それすらないとなると……無性に気になる。

珍しく旅行なんかしたから、環境の変化で急に性欲が衰えたか。
それとも、俺があんな事になってやる気が失せたのか……。
色んな事が浮かんでは消え、段々イライラしてきた。

もう一度見たが、微動だにしない。

こうなれば……むしろチャンスだ。

そっと布団をはぐってテツの布団に潜り込んだが、目を覚ましそうにない。
寄り添って脇腹をなぞり、下腹部へ手を滑らせて……衝動的にチンコを握った。

「どこ触ってんだよゴルァ!」

「ひっ……!」

だが、突如怒鳴られ、ビックリしてるうちに上に乗られた。

ふざけてやってるのはわかるが、毎度ビビる。

「へへっ、なんだ、抱いて欲しいか」

「違う……逆だ」

「お前な、人のケツを狙うな」

「ケチだな」

「ラブドールを買ってやるから、それで練習しろ」

「えぇ、マジで買う気?」

「ふっ、あたりめぇだ」

テツは上から降りて言ったが、本気で欲しくない。

「いや、ほんといらねぇ、マジだから、な?頼む、2体並べて手入れしたくねー」

「ほら、いいから来な」

腕を差し出され、取り敢えず頭を乗っけたが、ラブドールは半端なく迷惑だ。

「うん……、人形は勘弁してください」

「ま、それは置いといてだな、それより……竜治がおめぇにやったネックレス、ありゃひょっとして誕生日プレゼントか?」

テツはラブドールを保留して、ネックレスの事を言い出した。

「そう……」

「ふーん、そうか、なにか欲しいもんはあるか?」

「え、いや……、別にない」

「そうだなー、おめぇにスーツを作ってやるよ」

誕生日プレゼントを考えてるらしいが、そんなのを貰ったら悪い。

「え、いや……」

「何かの時にいるだろ、若のお下がりもいいが、1着だけじゃ不便だからな」

「あの、だったら自分で買うからいい」

「お前な……、人が折角作ってやるって言ってるのによ、じゃ紋付袴はどうだ?」

「親父さんじゃねーんだから、着る機会ねーし……、なあ、テツ、俺はあんたに家賃とか全部出して貰ってる、だからこれ以上いい、ほんといいから」

「それは別だ、だいたいよ、家賃は親父の厚意で格安になってんだぜ、おい、スーツでいいだろ」

「いいって」


ああだこうだと言い合いになり、話がつかないまま真夜中になっていた。

「まあー、ひとまず持ち越しだ、ほら、くっつけ」

「うん……」

「眠い、もう寝るぞ」

「ああ……」

テツが言うように眠くなってきた。

本当に奇跡は2日続いたらしいが、こういうのも悪くない。

そう思ってるうちに……瞼が重くなって目を閉じた。






朝になって、朝食を食べて出立する事になり、宿の玄関で女将に見送られた。

「ありがとうございました、楽しい旅でありますようお祈り致します、是非またいらしてくださいね」

俺はテツの斜め後ろに立っていたが、女将が顔を上げた時にチラッと目が合ってしまった。
ギクッとしたが、女将は俺の顔を見てニッコリと微笑んだ。

「ああ、また来る、それじゃ行くぞ」

テツに言われてボストンバックを肩にかけ、慌てて後について行ったが、女将が俺の事を記憶していたかどうか、分からずじまいだった。



車に乗ったらセイコがいる……。

「なあ、セイコ、トランクに入れていい?」

すっかり忘れていたので、見た瞬間ギョッとした。

「おめぇな、ひでぇ事を言ってやるな、あんだけ手入れしてる癖によー、トランクにぶち込むのか?」

テツはハンドルを握りながら、わざとらしく言う。

「うん、別にいい、人形だし」

正直、そこまでの情はない。

「馬鹿野郎、見てみな、セイコが嘆いてるじゃねーか」

するとルームミラーを見て言った。

「ん……」

振り返ってみたら、セイコがぐったりとシートに倒れている。

「あっ、ほんとだ、ちょっ……、ぷっ、アハハッ!」

横向きのまんまぐにゃっと折れ曲がってるのを見たら、吹いた。

「ふっ……、あのまま寝かせとけ」

「うん、わかった……」

面白いからトランクは無しにしたが、これから行く所を考えたら……憂鬱になってくる。

「あのー、今から行く所は山奥なんだよな?」

「ああ」

「マタギってやつだよな?」

「そうだ」

「あの、俺は……味見役って事で……、テツは好きなだけぶっ刺してください」

「ダメだ、殺るんだよ」

「無理だから、可哀想じゃん、そんな事したくねー」

動物を殺るのは、冗談抜きで無理だ。

「あのな、牛も豚も、ほんといや自分で殺らなきゃいけねーんだぜ、肉を食ってて可哀想もクソもあるか」

けど、テツは意地でもやらせるつもりだ。

「そうだけど、そりゃ原住民に生まれたらやってたかもしんねーけど、ゴキブリ殺すのもキモイのに、哺乳類とか……できるわけねーし」

「そんなんじゃダメだ、ちなみにな、狸や兎も狩る、おめぇはそっちをシメろ」

「えぇっ!兎って……尚更無理だ、あれはペットだろ?」

ずっと前に姉貴のペットショップに行った時に居たが、兎をシメるとか、そんな事をしたらきっと地獄に落ちる。

「馬鹿だな、立派な食糧だ」

だけど……テツはワイルドだ。

「うぅ……」

気分が最高に凹んだ。



1時間位走って山奥に着いた。
途中道が狭くて、崖みたいな山肌を滑り落ちるんじゃないかと、ヒヤヒヤした。

山の中に開けた場所があり、そこに2階建ての古い民家が建っている。
母屋と離れがあるが、小屋みたいな小さめな建物が山の斜面、家の後ろと横にバラバラに4つある。

広い庭には雑木が植わっているが、テツは家の左側にある離れの前に車をとめた。
俺は珍しい景色に目を奪われていたが、よく見たら、小屋の前に鴨かなにか、鳥が何羽も吊るしてあった。

鳥は逆さまにされて物干し竿に吊るされているが、皆……首がない。

「ひえっ……」

「行くぞ、降りろ」

「ああ、うん……」

テツに言われて車を降りたら、右側の小屋から犬の吠える声が聞こえてきた。
けたたましい吠え声は、寺島んちの豆太郎みたいなキャンキャンという甲高い声じゃなく、野太く迫力のある声だ。
トランクからバックを出して肩にかけ、小屋を見ながらテツについて歩いて行ったが、近くに行ったら格子付きの窓があり、猟犬みたいな大きな犬が数頭、柵の間から鼻先を出して吠えていた。

「うわ、なんか怖え……噛まれそう」

牙を剥いて吠えたてるのを見たら、恐怖を覚える。

「あいつらは猟にゃかかせねぇ、ある意味パートナーだ」

テツは平然と言ったが、猟云々よりも……まず猟犬が怖い。

「おい、辰さん!俺だ矢吹だ、いるか!」

引き戸の玄関前に来たら、テツは無遠慮に戸を叩いて辰さんを呼んだ。

しばらくすると、扉越しに人影が見えてきた。

「おお、今開ける、ちょっと待て」

どんな人なのかちょっとドキドキしたが、ガラガラっと扉が開き、白髪頭の爺さんが現れた。

「久しぶりだな」

「おう、ははっ、元気にやってたか?」

テツも辰さんも顔を合わせた途端、笑顔で声をかけあっている。
辰さんはテツが言ったように、いかにも親父さんと同い年といった感じだが、角刈り風な髪型に鋭い眼光をしていた。
身長はさほど高くはないが、年の割にはガッチリとした体格をしていて、猟師らしく毛皮のベストを着ている。

「ああ、いっぺん死にかけたが、なんとか生きてる」

「そうなのか?なにがあった」

「まあー、あとで話すわ」

「おお、そうだな、で、そっちが連れか?」

辰さんは俺に目を向けてきたので、慌てて頭を下げた。

「あの、お世話になります……」

「こいつは息子で……名前は友也だ、猟の役にゃたたねぇだろうが、狩りというやつを教えてやりてー、よろしく頼むぜ」

テツは俺の事を説明して頼んだ。

「息子か……、養子にしたのか?」

辰さんは驚いた顔をして聞き返した。
テツが前回いつここへ来たのか知らないが、突然息子が出来たら驚くのは普通だろう。

「そうだ」

でも、テツはなんでもない事のように答える。

「へえ、そうかい……、ま、兎に角あがってくれ、散らかってるぞ」

「おう、邪魔するぜ」

促されてテツに続いて家の中に入ったら、玄関は土間になっていて、高さのある上がり框の向こう側が部屋になっていたが、確かに……足の踏み場もない位散らかっていた。

物を避けながら真ん中のテーブルへ辿り着いたが、見回せば部屋の奥がキッチンになっている。
そこから廊下が奥に続いているが、奥にも部屋があるんじゃないかと思った。

長押には、煤けた額がいくつもかけてあったが、辰さんが笑顔でデカい熊と一緒に写っている。
まだ若い頃だと思われる写真から、今に近い風貌まで様々だが、一緒に写ってる熊はどれもみな大きい。

「しょーがねぇな、友也、手伝え」

突っ立ったまま写真を眺めていると、テツはセカンドバックをテーブルの上に置いて、部屋を片付け始めた。

「あっ、うん……」

ボストンバックを肩から降ろし、テツと一緒に散らかった部屋を片付けていった。

「おお、すまんのー、ほっといてくれたらいいんだぞ」

辰さんは俺達が部屋に上がった後、キッチンで湯を沸かしていたが、どうやらお茶をいれてくれるつもりらしい。

「そう言ってもよ、これじゃ座るとこもねー」

「はははっ、ひとりだからついな」


床には猟の事が書いてある雑誌や銃のカタログ、空になったタバコのパッケージ、紙屑、脱ぎっぱなしの服……様々な物が散らかっていた。

色んな物をあるべき場所に戻し、ゴミを捨てて大雑把に片付けを終了した。

「おお、キレイになった、見違えるな」

「辰さん、いくらひとりでも、脱いだ物位片付けろ、あと、ゴミもちゃんとゴミ箱に捨てろ」

テツはテーブルの前に座りながら愚痴を零す。

「ははっ、お前さんも独り身だろ、それにしちゃキレイ好きだな」

「そりゃよー、限度ってもんがあるだろう、それによ、今はこいつが一緒だ」

「おお、そうだったな、あ、茶をいれる、友也君、遠慮せずに座って」

「あ、はい……」

俺はボストンバックを隅へ置いてテツの傍に立っていたが、辰さんは俺に言ってキッチンへ歩いて行った。
ガス台にかけられたアルミ製のやかんは、さっきから激しく蒸気を噴き出している。

「ふう、で、最近はどうなんだ?大きいやつを仕留めたか?」

テツはタバコを吹かしながら、辰さんの背中に向かって話しかけた。

「イノシシなら何頭か捕まえた」

「銃か、罠か」

「罠だ、銃は鳥だな、鴨を何羽か、血抜きで外に吊るしてある」

「おお、チラッと見た」

「今夜はあれを捌いてやる、もう昼過ぎだが、飯は食ったか?」

「いや、まだだ、あてにして来た」

「はははっ、あてにされてたか、ああ、かまわん、イノシシでも焼くか、焼肉だ」

「おお、いいな、へへっ」


2人は猟の話をしていたが、俺は最早猟ではなく、あの猟犬が嫌で堪らなかった。
寺島んちの豆太郎が、やたら盛って足にしがみつくから、ウザイと思って避けていたが、今は豆太郎が無性に可愛く思えた。


それから辰さんはお茶をいれてくれたが、お茶を飲んだ後で焼肉をご馳走になる事になり、辰さんはカセットコンロや食器類など、必要な物を用意し始めた。
テツは立ち上がって辰さんを手伝おうとしたが、息子の俺がぼーっとしてちゃダメだから、テツには座ってて貰って、俺が代わりに辰さんの手伝いをした。

一通り準備が整って、テーブルを前にテツの横に座ると、辰さんは冷蔵庫から大きな皿を出して運んできた。

「ほら、牡丹肉だ」

皿には切りそろえられた肉が綺麗に盛られている。

「へえ、これがイノシシ?」

「そうだ、初めてか?」

「はい」

肉は鳥、豚、牛、あとはせいぜい羊か鴨位しか食べた事がない。

「そうか、遠慮せずに食べろ、じゃ焼くからな」

イノシシの肉はぱっと見豚や牛と同じに見えたが、若干赤みが強いような気がした。

「なあ、辰さん、小物でいいからよ、こいつに殺らせてくれないか?」

辰さんが肉を焼くのを見ていたら、テツはまた猟の話を持ち出した。

「そりゃかまわんが、どうしてまた?友也君、やりたいのか?」

嫌に決まっている。

「い、いえ……」

「嫌がってるぞ」

俺は辰さんが断ってくれるのを期待した。

「物を食うって事ぁ、命を食ってるのも同じ事だ、それを体験させてやりてぇんだ」

なのに、テツはもっともらしい事を言う。

「ほお……、ま、言ってる事はわからんでもないが、大丈夫か」

「だからよ、ちいせぇ獲物で構わねー」

「そうだな……、わかった、罠を仕掛けてるから、明日行ってみよう」

辰さんはテツに賛同し……ガックリきた。

「おお、うっかりしてた、ビールでも飲むか?日本酒もあるぞ」

その上、辰さんはテツに酒を勧めた。

「そうか?そりゃ、日本酒がいいに決まってる」

「ああ、ほら、友也君、肉、焼けたら取って食べなさい」

「はい……」

旅館ではビールで我慢させたが、あれは旅館だから阻止できたわけで、この状況じゃとめようがない。
諦めて、焼けた肉を小皿に取って食べてみた。
肉はさほど硬くはないが、独特な香りがある。
獣臭じゃなく、香草の類だ。
思ったよりも脂が乗っていて美味しい。

「どうだ?うめぇか」

モグモグ噛んで味わっていると、テツが聞いてきた。

「あ、うん……、初めて食べたけど、美味しい」

「そうか、辰さんは処理も上手いからな、臭みはねーだろ」

「うん……」

処理とかは、さっきの鳥みたいに逆さ吊りにするのか、ちょっと気になったが、肉を美味しく食べてる最中だし……聞かない方がよさそうだ。


2人は酒盛りをして盛り上がっていたが、テツが段々怪しげな雰囲気になり始めた。

「コラ友也、おめぇ、明日ぁぶっ刺すぜ、いいな!」

俺の肩を抱いて威勢よく言い放つ。

「矢吹さん、今、槍は使ってない」

「なんだぁ?槍で頭を突き刺すんじゃねーのか?」

「いや、頭じゃなくて首だ、頭は銃でシメる時だよ」

「おお、そうだったか〜、はははっ、忘れちまった」

うんちくを垂れるわりには、記憶はいい加減だ。

「どのみち今は感電だ、銃でもいいが、弾が勿体ねー」

「なんだぁ弾ぁケチってんのか?」

「まあな、それと、電気が楽だ」

「そうか、けどよ〜、ちいせぇ獲物はどうすんだ?やっぱり槍か?」

「あんたは槍が好きだな、そんなにやりたきゃ構わないよ、やったらいい」

「おっ、そうか、良かったな〜友也」

自分がやる気満々で聞いたのに、肝心なところで俺に振る。

「なんで俺なんだよ……」

「おお、そうだ、それはそうと……そのー、友也君を何故また養子に?」

だけど、辰さんは猟の話をやめて、聞きづらそうな感じで俺の事を聞いてきた。

「こいつはな、身を粉にして俺に尽くすんだ、だからよ〜、家族にした」

「ほお、尽くすのか、なんだ、家事やら身の回りの世話とか、そういう事か?」

テツは酔っ払っているが、辰さんは殆ど飲んでない。
シラフで突っ込んだ事を聞いてくる。

「それもあるが、そんなちっぽけな事じゃね〜!俺の為にひでぇ目にあった、こいつにしてみりゃとばっちりだ、それに俺の女だった女を助けた!それから〜極めつけは、俺や組の為に犠牲になった、こんな奴ぁそうはいねぇ!なあ、そうだろこの野郎〜」

テツは熱く語ったが、完全に目がすわっている。
グイッと引き寄せて頬ずりしてくるから……参った。

「ちょっと……やめろって……」

辰さんはノーマルな人だと思うし、目の前でイチャイチャしたら、いくら旧知の仲でも気分を害すると思う。

「そうかい、じゃあ、死にかけたって言ったのも、その中に含まれるのか?」

でも辰さんは至って冷静で、引き続き質問をしてくる。

「おう、とばっちりだ、薬で頭のイカレた奴がよ〜、俺につきまとってたんだが、俺ぁ相手にしてなかった、気にもとめなかった……、それがよ〜、あのバカ、勝手に恨みを募らせやがって!友也を攫ったんだ、俺に来りゃいいのに、ヘタレたチンピラだもんで、友也を狙った、で〜、ギリギリ間に合った」

「助けに行ったのか?」

「ああ〜、まずナイフで刺した、それで殺ったと思って油断したら……背中から撃ちやがったんだ!ムカついた、カスの癖にいっちょまえに銃を持ってやがった!はははっ、で〜意識が飛ぶ前に振り返って頭ぁ撃ち抜いてやった、バカが、あはははっ」

「はあー、そうか、そんな事が……なるほどな……、因果な稼業だな」

「おう、へへっ、けどよ〜、良かった、こいつが無事でほんとーに、良かった!なはははっ」

テツはヘラヘラ笑って言ったが、辰さんは深い溜息をつき、俺は神妙な気持ちになった。

「友也君、矢吹さんは上機嫌だが、辛くはねーか?」

辰さんはふと俺に聞いてきた。

「あ、いいえ……、それはないです」

ほんと言うと……辛いと思った事もあるが、テツと離れようとは思わなかった。

「そうか、盃を交わすつもりなのか?」

「いいえ…」

「じゃあ、純粋に養子に?」

「はい」

「御両親は……健在なんだろ?」

辰さんは俺の事が心配になったらしい。
ヤクザなんかと一緒にいたら、そう思われても仕方がないんだろう。

「ええ、はい……」

「なにも言わないのか?」

「母と姉は理解してくれてます、父さんはちょっと別ですが……」

「おい、なに勝手な事を言ってる、こいつの親父はな〜こいつとは縁を切ると言った、俺を殴ったんだ、だからよ〜俺が貰ってやった、あははっ」

質問に答えているとテツが乱入してきたが、肩を抱いたまま体重をかけてくるから……重い。

「ちょっ……」

「そりゃまた……、既にカタがついてるのか、しかしお前さん、まさか……親父さんを殴り返したんじゃねーだろうな?」

「冗談言うな、誰がそんな真似をするか、喧嘩じゃね〜んだからな、息子をとられてムカつくのは当然だ、俺ぁこいつを返す気はね〜、だからよ、それを受け止めたまでだ」

テツは酔っ払いと化して、一身上の事をペラペラと喋ってしまったが、あの時父さんを殴ろうとしたのは、テツじゃなく俺だ。

「そうか、あんたは自分なりに筋を通したってわけか、ま、友也君がそれでいいなら、問題ねーが、友也君、どうなんだ?矢吹さんの息子で満足してるのか?」

辰さんは確かめるように聞いてきたが、俺は迷いはなかった。

「もし嫌なら……とっくに逃げてます、俺は……テツがヤクザだとか、そんな事は気にしてません」

こんな事を会ったばかりの人に言うのは、自分でも滑稽に感じたが、内心苦笑いしつつ……ありのままの気持ちを口にした。

「ほお、そうなのか……、そこまで、いや、まあー、それなら安心なんだがな、余計なお節介だったか、はははっ!」

辰さんは少しの間唖然としていたが、バツが悪そうに頭を掻いて言うと、豪快に笑い飛ばした。




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あきゅろす。
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