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BL長編変態ヤクザな話snatch(完結)
9
◇◇◇

ドライイキ……。
前立腺を刺激したらああなるらしいが、テツが言うには俺は才能高いらしい。
全然嬉しくねーし、むしろ悲しいが、今回は腹を下さなかった事が救いだ。

それから、手首についた痣を姉貴に指摘されたが、イベントの準備を手伝っててついたって言ったら、姉貴は『両手首についてるのはおかしい』と言って疑った。
姉ちゃんはしつこい……。
面倒だから下手に言い訳せずに無視したら、諦めて立ち去った。




あれから2日経ったが、テツからの連絡はない。

週の真ん中辺りはいつも憂鬱だ。

就職組の俺には担任も興味がないらしい。
今どき高卒で就職する奴は、見くだされる。

休み時間、机に突っ伏して寝ていた。

「友也」

「んー」

寝ぼけ眼で顔を横に向けたら、おねぇ予備軍が現れた。
この学年には、陰でおねぇ予備軍と噂される奴らが生息している。
声をかけてきたのは2年の時に同じクラスだった堀江健太という奴だ。
今は別のクラスだし、元々挨拶を交わす程度で個人的な付き合いはない。

「なんか用?」

「あのー、俺もー就職組なんだ」

「ふーん」

「ね、就職先、もう決まった?」

無愛想に答えたのに、やけに親しげに話しかけてくる。

「いんやー、そんなに早く決まるわけねーし」

面倒になってもう1回机に突っ伏して答えた。

「あっ、そうだ、この前の祭日の時ー、町外れのコンビニに居たでしょ?」

だが、コンビニで見たと聞いてギクッとした。

「えっ……、いや、人違いだろ」

「黒いレクサス、無精髭のカッコイイお兄さん、黒服だったからー、あれってもしかしてヤクザ屋さん?」

やべぇ、しっかり見られてる。

「知らねー、記憶にねー」

姉ちゃんにも見られた事もあるが、よりによって……運が悪い。

兎に角、とぼけるしかねー。

「友也、沢山買ってたね、俺、少し離れた場所に居たんだけど、見間違いじゃないよ、パーカーに黒のパンツ、髪を括ってた、でしょ?」

細かいとこまで見てたようだが、なんかイラッときた。

「だからさ、何が言いたいわけ?」

「ね、俺さー、彼氏いるんだー、あの時デート中、で、車の中に居たんだけど、ひょっとして……、あれ、彼氏じゃないかなーって、ぴんときちゃった」

ぴんときたとか……さすがはおねぇ予備軍。

だがしかし、俺を一緒にするな。

「あのさー、もし俺がそういうのと一緒にいたとしても、彼氏とかそういう発想やめてくれる?」

「だけどー、俺の彼氏は言ってたよ、友也が一緒にいた人、あいつはバイだって」

テツの事をあいつ呼ばわりするって事は、ひょっとして同業者かもしれない。

「なにそれ?じゃあ、堀江、お前の彼氏って、そっち系なわけ?」

「うん、まぁね」

やっぱりそうらしい……。

こうなりゃ、最後までとぼけ倒してやる。

「兎に角、知らねーもんは知らねー、忘れろ」

「それならいいけどー、俺の彼氏が、あいつにはいずれ借りを返してやるとか、なんかヤバそうな事を言ってたんでー、ちょっと気になったんだ、知らないなら……別にいっか、それじゃ」

ところが、堀江は気になる事を言った。

「え……、あっ、ちょっと」

堀江を呼び止めてそいつの名前を聞こうと思ったが……。

「なに?」

「い、いや、なんでもない……」

そんな事を聞いたら、テツとコンビニに居た事がバレてしまう。
テツはバレても構わないと言ったが、俺はテツとの事を翔吾に知られたくない。

クラスは違うとは言っても、堀江は付き合いのない俺んとこにやって来て、いきなり名前を呼んで話しかけてきた位だ。
翔吾は今の所おねぇ予備軍と関わってないが、何かのきっかけで翔吾に余計な事を吹き込む可能性がある。

堀江が立ち去るのを黙って見送ったが、この事はテツに話した方がいいだろう。



学校が終わって電話したら、今出先だから帰りに寄ると言った。

テツと会う事になり、19時にあの場所で……って事になった。

母さんはまだ帰ってないから、姉貴に言わなきゃならない。
着替えを済ませて姉貴の部屋をノックした。

「姉ちゃん」

「んー、なに?」

姉貴は怠そうに返事をする。
顔を合わせると面倒なので、要件だけ手短に伝えようと思った。

「俺、ちょっと出かけてくるから、母さんに言っといて」

「え、今から……?ちょっと待ちなさい」

姉貴は甲高い声で言って、こっちに向かってくる足音が聞こえた。

あーあ、面倒だな……。

うんざりしていると、ドアが開いて姉貴が目の前に立っている。

「友達と話があるんだ、直ぐに戻る」

「友也、あんたまだ学生なのよ、母さんが甘いからって、羽伸ばしすぎじゃない?」

「いいだろ、義務教育は中学までなんだからな、18って言ったらもうガキじゃねーし、色々と込み入った話があるんだ」

「なに言ってるの、母さんは…本当はあんたを大学に行かせたいと思ってるんだから、実際、高卒じゃろくな仕事がないわよ、あたしですら短大出てるのに、男のあんたが高卒じゃ、将来が心配になるに決まってるでしょ」

「俺の人生だから別にいいじゃん」

「男は結婚して家族を養わなきゃならないんだから、安月給じゃ誰も結婚してくれないわよ」

「じゃ独身でいい、姉ちゃんみてぇな女に引っかかったら、それこそお先真っ暗だからな」

「なによ、生意気な」

「兎に角行くから、母さんに宜しく」

「あ、友也!もう……むかつくー」

姉貴のせいで19時をすぎてしまった。

走って待ち合わせ場所に行ったら、白いプリウスが止まっている。
見た事がない車に戸惑って、少し離れた所で様子をうかがっていた。

──と、窓が開き、テツが助手席側に身を乗り出して声をかけてきた。

「乗れ」

人違いだったら嫌だと思ってたから、顔を見てほっとした。

助手席に座ったら、車は滑るように走り出す。

「プリウスも乗るんだ」

「ああ、スズキの軽四もあるぞ」

「へえ、テツは愛車とかないの?」

「ねーな、車は親父んとこのやつを使わせて貰ってるが、足に過ぎねー」

「ふーん、で、どこに向かってるの?」

「このままラブホで決まりだな」

「えっ、ラブホ……マジで?」

「そりゃそうだ、嫌とは言わせねーぞ」

「分かってるよ……」

翔吾んちの車庫はちらっと見た事がある。
広いガレージに何台も車が止まってたが、入れ替わりが激しいし、いちいち気にしてなかった。
プリウスに乗るとは思わなかったから意外に感じたが、ラブホに直行すると聞いて……車の事など吹き飛んだ。

夜だし、俺は髪が長いから、多分男だという事はバレないだろう。
そう思って腹を括ったが、いざラブホのゲートを潜ったらビビってしまい、咄嗟に前にかがみ込んでいた。

──ラブホ初体験だ。

なのに……相手はテツ……。

頭を抱え込んで背中を丸めていた。

「おい、なにしてる」

どうやら駐車場に止まったようだ。

恐る恐る体を起こして周りを見回した。

ガレージみたいになっていて、テツはバックで車を止めていたが、車の前以外は壁に囲まれている。

「ふーん、こんな風になってるんだ」

「おお、そういや初めてだよな?珍しいか?」

「うん……」

「ま、兎に角降りろ」

周りが見えないので安心して車を降りたら、テツは車をロックして車の前に何か看板のような物を置く。

「それなに?」

「ナンバーを隠す為だ」

「ふーん……」

看板の意味を知って疑問が生じた。
こういう所を利用するのは訳ありとか、不倫だったりするんだろうか……。

「ほら、来い」

「ん、ああ……」

促されてテツの方へ行ったらドアがあり、ドアの横に部屋の写真が貼ってある。

「ふーん、写真があるんだ」

何もかもが新鮮でつい写真に見入っていた。

「早く来い」

「わ、わかった」

腕を掴まれてドアの中に放り込まれたが、入ったら目の前に狭い階段がある。

「狭い階段だな、ひとりしか通れねー、ここ上がるの?」

「そうだ」

テツの後から階段を上がったら、またドアがあった。

「ん、またドアだ、へえー、ドアが2つあって、で、ここが部屋……?」

「お前……、そんなにおもしれーか?」

テツは振り返って呆れ顔で言ったが、どうやらそこが部屋らしい。

部屋の中を早く見てみたかったが……あくまでも相手はテツだ。
諸手を挙げてはしゃぐ気持ちにはなれない。

テツの後に続いて大人しく中に入った。

靴を脱いで部屋に上がったら、手前にソファーとテーブルがある。
テーブルの上にはメニューらしき物が置いてあるが、左側にはデカいベッドがどーんと陣取っている。

「へえ、意外と普通?けど、ベッドメインってとこはやっぱ普通じゃねーな」

壁の色は白だし、全体的に色は普通に見えたが、ベッドを見たら如何にもラブホって感じがした。
ベッドの足元へ目をやれば、デカいテレビが置いてある。
テレビを置いてある棚はベッドよりやや背が高く、やたら横に長いが、テレビ以外にも何かありそうだ。
確かめなきゃ気が済まない。
テレビの方に歩いて行ったら、ボードの右端に小さな冷蔵庫が置いてあった。

「ん?冷蔵庫」

その上にはレンジまである。

「へえ、レンジまであるんだ、これって泊まる為かな?」

独り言を言いながら夢中で見ていたら、いきなり背中から抱きつかれた。

「うわっ!ビックリしたー、急にくるからビビるじゃん」

「友也」

「ん?どうかした……?」

なんだかいつもと雰囲気が違う。

「たまにはよー、気を抜きてぇ時もある、お前とこうしてると……気が楽になる」

肩越しに真面目な顔で言われたら、なんだか妙にドキドキしてきた。

──有り得ない。

テツ相手にときめくとか、そんな事になったら……やばい。

きっとラブホマジックだ。
薄暗い部屋にムードたっぷりなスポットライト。
ここはただ一つの目的の為に存在する空間だから、このいかがわしい雰囲気に当てられたんだ。

「へえ……、俺、なんにもしてねーのに、こんなんで役に立ってるんだ」

「こっち向け」

笑って誤魔化そうとしたが、強制的に後ろに向かされた。

「あ……の……」

テツは片手で俺の腕を掴み、反対側で背中を抱き締めてくる。
いつもなら意地悪な事を言う筈だが、相変わらず真面目腐った顔で見つめている。
ネクタイ無しなはだけた胸元に、伸びてウルフヘアになった頭。
堀江は無精髭のカッコイイお兄さんと言ったが、確かに無精髭がよく似合ってる。
その上で黒服に鋭い眼光……。
和風なヤクザというより、イタリアンなマフィアの方がしっくりくる。

ごく自然にカッコイイと思った。

顔が近づいてきても、魅入られたように動けなくなっていたが、俺は──まだ正気を失ってはいない。

ハッと我に返り、肝心な事を思い出した。

「あっ!あのさー!今日電話したのはちょっと気になる事があって、その事で話がしたかったんだ」

「ちっ、あとちょっとだったのに……」

すると、テツは舌打ちしてボソッと呟いた。

「それって……どういう事?」

「今、俺にクラっときただろ」

今の神妙な雰囲気……狙ってやったとしたら、怖すぎる。

絶対年下だと思ってなめてる。

──負けてたまるか。

「き、きてねー!俺はノーマルだ、そんなのあるわけねーし」

「まぁいい、で、話ってなんだ」

意地になって言ったが、テツはそれ以上突っ込んでくる事はなかった。

話について聞かれ、慌ててそっちへ頭を切り替えた。

「ああ、うん……、それなんだけど、こないだテツの家に行った時、コンビニ寄ったじゃん、そん時に同級の奴に見られてたんだ」

「別に構わねーだろ」

「いや、そいつ、そん時彼氏といたらしい、車ん中から見てたようだ」

「同級って、女だろ?」

「いや、男だ、それがその彼氏というのが、どうやらテツと同業みたいなんだ、テツに対して借りを返してやるとか、そんな事を言ったって言うから、ちょっと気になって……」

一通り話をしたが、1番引っかかってる事は1番最後に話した。

「そいつの名前は?」

テツもやっぱり気になるのか、名前を聞いてきた。

「悪い、そこまでは聞けなかった、俺、あんたとの事を翔吾に知られたくねー、翔吾には……そういう付き合いはできねーって断った、それであんたとこんな風に会ってるとか、もし翔吾が知ったら……いい顔するわけがねー、あんただって翔吾にずっとついてるわけだし、やっぱバレたら嫌だろ?」

俺は申し訳なく思いながら名前を聞けなかった理由を明かしたが、そのついでに、ふとテツは翔吾の事をどう思ってるのか気になった。

「そりゃ、まあな……」

テツは曖昧な返事を返してベッドに座ったが、俺は翔吾がその後どうなったか、それも気になってきた。

「翔吾はまだ若い奴と付き合ってるのか?」

自分勝手な話だとは思ったが、テツとこうなってしまった以上、翔吾がこないだデートした相手と続いている事を期待した。

「ああ、ありゃ別れた、今は別の奴だ」

「そっか……」

だが、期待はあっさり裏切られた。

「若は俺には言わなくなったが……、未だにお前との事を引きずってる、組の連中は腹ん中で何を思ってようが、表向き若には諂うからな、だがお前は違った、自分の考えを伝えた上で若と向き合おうとした、俺はお前をあのマンションに連れ込んだ時に、おめぇが若に同情した事を責めたが、あの時はちょいと昂ってたからな、実際若がどう思ってるか、そこまでは分からねー」

するとテツは翔吾について語ったが、それは翔吾の世話をしてきた人間だからこそ言える事だ。

そこまで翔吾の事を理解しているなら、こんな真似をして心が痛まないのか……。

「そういうのを分かってて……罪悪感とかないわけ?」

「うるせぇ、ガキは黙ってな」

ストレートに聞いたら、テツは急に態度を変えて突っぱねるように言う。

なんだか分からないが怒ってるようだし、これ以上つつくのはやめにした。

それよりも、堀江が言った事が引っかかる。

「ったく、すぐガキ扱いする……、というか、さっきの話に戻すけど、テツ大丈夫なのか?ひょっとして……命を狙われてるとか、そんなんじゃねーよな?」

「映画じゃあるまいし、な事あるかよ」

「じゃあ、大丈夫なのか?」

「へへー、そんなに俺の事が心配か?」

何かヤバい事になるんじゃないかって、本気で心配してるのに……テツはニヤついた顔をする。

「いや、そういう意味じゃなくて、前に言っただろ?人として嫌いじゃないって、知人を心配するのは普通じゃん」

「嫌いじゃねーって事は、好きって事だよな?」

「ラブじゃねーからな、ライクだ、ライク!」

「わかったわかった、そうやってむきになるとこが、ガキなんだよ、ちょっとおちょくっただけだ、お前はどのみち抗えねーからな、くっくっ」

「う、なんだよそれ、やっぱ……最低」

やっぱり軽く見られてる。

そりゃどう足掻いたってテツに及ぶわけがないが、やたらガキ扱いされるのは腹が立つ。

「来い」

なのに、テツは平然と俺を呼ぶ。

「くっ……」

行きたくない。

「おお、そういや……親父にゃ上手く言っといたぜ、親父、随分残念そうにしてたな」

けど……行かなきゃマズい事になる。

「わ、分かった!行く、行けばいいんだろ」

「心配いらねぇ、親父の事は俺に任せろ、お前はただ俺に従ってりゃいいだけだ、おとなしくしてりゃ手荒な真似はしねぇ」

ヤケクソでテツの横に座ったら、テツは俺の肩を抱いて言い聞かせるように言った。

確かに親父さんの事は心配ないと思うが、テツとやってまたあんな風になったら……。

「そりゃあ……分かってる、けど、俺……」

あの時頭を撫でられ、つい流されてテツの背中を抱いたが、ドライイキとか……あんな状態になる自分が怖い。

「こないだの事か?」

「2回目であんなに感じるとか……、俺はおかしいのかな?」

「アナルで感じるかどうか、そりゃ個人差だ、だめな奴はいくら頑張ったとこで駄目で、その反対に初めから感じる奴もいる」

「じゃあ、俺は生まれつきアナルがいけるって事?じゃあ、生まれつきゲイって事なのか?」

「違う、そうじゃねー、あのな、人間ってやつぁ顔も容姿もみな違う、それと同じ事だ、個性だよ、それにな、アナルでやるのは何もゲイだけとは限らねー、女でもアナルでいけるのがいる」

「えっ、そうなのか?」

「ああ、男女間でもアナルSEXが好きな奴もいるからな、まぁアナルは面倒といや面倒だが、女の場合、孕む心配がねーからな、そっちで感じる奴は好んでやる」

「へえ、テツ詳しいんだな」

「お前……、そんな事で感心されてもなー、ま、俺はバイだから嫌でも詳しくなるんだがな」

「じゃあ、俺は異常じゃないんだな?」

「お前はたまたまそういう体質だっただけだ、アナルじゃなくてもどこが感じるとか、ひとりひとり皆違うだろ?そんな事気にするな」

「そっか……、わかった」

「まぁ、で、そのアナルだが、今日は時間がねーから無しだ」

話を聞いて安心したが、テツは肩を叩いて意外な事を言い出した。
アナル無しと言われてほっとしたが、それだとラブホに来た意味がわからない。

「じゃ、なにしにこんな所に入ったわけ?」

「フェラを教えてやる」

「えっ、フェラ……」

テツはさらっと言ったが、焦った。
急いでアバウトなイメージを思い浮かべて見たが……。

──いきなり難易度が高すぎる。

「おおそうだ、ちょっと待て」

そんな事できる筈がないと思っていると、テツは立ち上がってテレビの前にあるリモコンを手に取った。

「ん?テレビ……?」

俺の横に座ってテレビをONにしたが、デカい画面いっぱいに卑猥な映像が映り、女の喘ぎ声が部屋中に響いた。

「うわっ……、ちょっと……なにそれ」

静かだった部屋が、突如いかがわしい空気に毒された。

「ラブホにゃつきもんだ、じきにおっぱじめるだろ、これをみて参考にしろ」

「参考……って」

たまにこっそり動画を見たりするが、家ではいつなん時姉貴の襲撃を受けるかわからない。
こんなに大きな画面で堂々とみるのは初めてだ。
テツが隣にいるが、つい画面に目がクギ付けになっていた。

「へっ、おもしれーか?」

──と、いきなり股間を握られた。

「わっ、なにすんだ!」

びっくりして咄嗟にテツの手を退かしたが、テツはニヤついた顔をしている。

「へへっ、さすがに反応がはえーな、お前の年位が1番やりてー時だからな」

「いきなり触るなよ……」

テツに対して今更……っていう気持ちもあったが、AVみて勃ってるのを知られるのは恥ずかしい。

「ほら、始まったぜ」

俯いて股間を隠すように手を置いてると、テツは促すように声をかけてきた。

「ん?」

「ああやるんだ、わかるか?」

画面には女がフェラする様子がどーんと派手に映っている。
ナニにはぼかしが入っているが、女は片手で竿を握り、大胆に竿を頬張って頭を上下させる。

「い、いや、何となくわかるけど……、あれを……俺がテツに?」

同じようにやれと言われても、目の前の映像と自分は別世界に思える。

「よし、シャワー浴びるぞ」

やれる気がしなかったが……やるしかないようだ。

指図に従って浴室へ向かった。

互いに裸になって中に入ったら、テツはシャワーヘッドを握って湯を出し、シャワーを浴び始めた。

フェラするのは嫌だったが、好奇心が先に立って浴室内を見回した。
シャワーのカランの下にシャンプー、リンス、ボディソープが置いてあり、特に変わった物は見られないが、浴槽はジャグジーが付いてるらしい。
壁にはバスマットのような物が立てかけてあるが、風呂にバスマットがあるのは普通に思える。
しかし、何気なく椅子に目を向けたら、真ん中が凹んだ変わった形をしている。

早速しゃがみこんで観察をした。

「なんだこりゃ?変な形」

「そりゃ、スケベ椅子だ」

「え、なにそれ?」

「そこに座って、その窪みから手を入れるんだよ」

「ふーん、そっか……、椅子はラブホ仕様なんだな」

「そこのマットも、ありゃただ敷くためじゃねぇ、布団代わりだ」

「そうなんだ、俺、普通に敷くのかと思った、へえー、色々工夫してあるんだな」

テツは淡々と説明してくれたが、そうこうするうちに体を流し終えたようだ。
片手にシャワーヘッドを持ったまま俺の方に向き直った。

「お前、風呂はまだだろ?」

「ああ、まだだけど……」

「じゃここで済ませろ、俺が洗ってやる」

いよいよフェラさせられるかと思って気が気じゃなかったが、テツは意表を突いて予想外な事を言い出した。

「え……、いいよ、自分でやるから」

「先にシャンプーしてやる、椅子に座れ」

「えっ、シャンプー?いや、そんな事して貰ったら悪いし、いいって」

誰かに洗って貰うとか、当たり前にそんな年じゃないし、テツは組の中では幹部クラスだ。
いくら慣れ親しんだ間柄とは言っても、そんな事をして貰うのはさすがに気が引ける。

「いいから、やらせろ」

だが、強制的に椅子に座らされてしまった。

「頭ぁ下げろ」

なんだか変な気持ちだったが、言われるままに頭を下げた。

テツはシャワーの湯を頭に浴びせ、髪を濡らした後でシャンプーを頭に塗りたくり、両手で頭をゴシゴシ洗い始める。

目にシャンプーが入りそうだったので目を閉じていたが、テツは慣れた手つきで髪を洗っていった。
終わったら、床に置いたシャワーヘッドを握って泡を流していく。

俺は床に流れ落ちる泡を見ながら、翔吾の家で初めてテツに会った日の事を思い出していた。
テツは翔吾に部屋から出て行くように言われ、翔吾に向かって、一緒に風呂に入ったとか……さも世話を焼いてきたような事を言っていたが、今俺の頭を洗うように、翔吾の頭を洗っていたに違いない。

すすぎ終えたら浴室の外に出て行き、タオルを持ってきて俺の頭をゴシゴシ拭いてくれた。

拉致られた時は、やっぱりヤクザだと思ってビビったが、今はこんな風に世話を焼いてくる。

なんだかよく分からないが、兎に角、こんな事をして貰ったら申し訳ない気持ちになる。

妙に照れくさかったが、立ち上がって振り返り、礼を言った。

「ありがとう、もういい、後はほっときゃ乾くし」

するとテツは片手にタオルを握ったまま、マジな顔をして俺を見る。

「ん、どうかした……?」

じっと見つめられ、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。
抱き締められて濡れた肌が密着しても、何故か抗う気持ちになれない。
テツはタオルを床に放り投げて顔を近づけてきたが、目を閉じてキスを受け入れていた。

シャワーヘッドは足元に置きっぱなしにされ、軽快な音を立てて湯気を立ち上らせている。
足元に感じる熱気が気分を昂らせ、脈が早くなるのがわかる。
背中を強く抱かれて、麻痺したように思考が停止していた。

「友也……やってくれるか?」

耳元で低くドスの利いた声が響き、手を掴まれて熱い塊を握らされた。

反り立つ竿が待ち侘びたようにビクリと跳ね、自らテツの前に跪いていた。
じっくり見るのはこれが初めてだったが、槍の切っ先のように形良く張り出したカリ首に、太刀のように反り返った竿。

羨望の眼差しを向けて竿を握り、舌を出して先端を舐めてみた。

舌をあてたら竿がビクッと震え、テツの手が頭に触れてきた。
何か指図されると思って上目遣いで見上げたが、テツは何も言わずに頭を撫でてくる。

怖い顔ではなく、穏やかな表情をしていた。
それを見たら緊張感が薄らぎ、亀頭を舐め回していった。

舐める度に竿はビクつき、段々硬くなっていくのがわかる。
我慢汁が溢れ出し、口の中はヌルヌルになっていったが、さっきみたAVを思い浮かべながら、口に頬張って頭を揺らした。
歯が当たらないように気を使いながらやっていると、我慢汁と唾液が一緒くたになって口の中に溜まってきたが、チンコは硬さを増してビクついている。

もうちょっと頑張れば……イカせる事が出来る。
口に溜まった唾液を思い切って飲み込み、ひたすら頭を揺らしていると、テツが俺の頭をぎゅっと押さえつけてきた。

「おい出るぞ……、口から出せ」

テツの言葉を聞いて慌てて口から出したが、出した途端に白い液体が飛び散って顔にかかった。

「わっ……!」

「ぷっ……、顔射……くっくっ……」

驚いて後ろに倒れそうになったが、テツは謝りながらボソッと何か呟き、必死に笑いを堪えている。

気になったが、精液の匂いが鼻についてそれどころじゃなかった。

「う……、シャワー!」

焦るようにシャワーヘッドを拾い上げて顔を洗い流した。

「はあ、はあ……」

顔を流してすっきりしたら、やり遂げた達成感を感じたが……ふと我に返った。

──俺は、たった今フェラをした。

床に両手をついて突っ伏し、現実を思い知った。

「ヤバい……、深みに……ハマっていく……」

「おい、なに打ち拉がれてんだ?」

テツが能天気に声をかけてきて、イラッときた。

「テツ、あんたのせいだ……!」

「ああ"?なにがだ」

つい怒鳴ったが……。
テツを頼るしかないし、そもそも俺は……自分からフェラをした。

「い、いや……いい、なんでもない」

「ほら、体を洗ってやる」

鬱々と沈んでいると、腕を掴まれて立たされた。

「あ、い、いいって、フェラでイかせる事が出来たんだし、もうそろそろ……」

あまり遅くなると姉貴が煩い。
テツを満足させる事が出来たんだし、それで良かったのだが、テツはボディソープを手のひらに出した。

「いや、あの、ホントいいから……」

「遠慮するな、へへー」

断わろうとしたら強引にテツの方に向かされ、股間に手が伸びてきた。

「あっ、そこはいい……」

「パイパンにしてやる」

てっきりチンコを触るかと思ったら、テツは怪しげな事を言って陰毛を泡立てる。

「ん?パイパン……?なにそれ」

意味が分からず聞き返したら、テツはティ字のカミソリを握って俺の目の前に翳した。

「これで剃るんだ」

ティ字カミソリは、浴室の外にある洗面台に置いてあるのをチラッと見ていたが、タオルを持って入った時に持ってきていたらしい。
また新たな知識を得たが、毛を剃るって……意味がわからない。

「いつの間にそんなものを……、というか、なんで毛を剃るわけ?」

「俺のものになった証だ」

「証?なんだよそれ、いや、ちょっと待って……、ツルツルになったら恥ずかしいじゃん」

「誰に見せるんだ?」

「それは……」

「俺だけじゃねぇか、へっへっへっ」

「あ"ー、もう……嘘だろ……」

嫌だったが、強引に毛を剃られた。

子供みたいにツルツルになった股間は……物凄く情けなかった。

「うう……、チンコ丸見えじゃん」

テツは上機嫌で俺の体を流していく。

「こりゃほんの手始めだ、いずれ尻にタトゥーを入れてやる」

だが、また変な事を言い出した。

「タトゥー?そんなの入れたら、サウナとか入れなくなるんじゃね?」

「心配するな、ちいせぇやつを尻に入れてやる、俺の名前を刻んでやるからな」

「えー、ちょっと待ってくれ、矢吹テツって彫るの?やだよかっこわりぃ」

「フルネームじゃねぇ、英語でTetsuって入れんだよ」

「いや、そういう問題じゃ、もし誰かに見られたら、絶対おかしいって思われるだろ、完璧に男の名前だし」

「いいじゃねーか、この先俺と別れたとしても、おめぇは死ぬまで俺の名を尻に背負って生きるんだ、忘れようにも忘れられねー、へへー」

タトゥーなんか彫りたくはなかったが、時間がどんどん過ぎていく。

「も、知らね……、どうでもいいけど、そろそろ帰らなきゃマズい」

「おお、そうだな、俺も若を他の奴に任せてるが、あんまり遅くなるとマズいな」

テツも翔吾の事が気になるようだ。


それから直ぐに浴室を出て──服を着て──ラブホを出た。

待ち合わせをした場所まで送って貰い、車の時計を見たら23時を過ぎていた。

「うわ、また姉ちゃんになんか言われる、じゃ俺、行くから……」

母さんや父さんはいいとして、姉貴は絶対何か言ってくる。
テツに声をかけて車を降りようとしたら、いきなり腕を掴まれて引っ張られた。

「うわっ!」

テツの方に倒れ込んでしまったが、顔を掴まれて無理矢理テツの方へ向かされ、唇が重なってきた。

「ん…!」

元から人通りのない場所だが、大胆な行動に驚いて動揺し、鼓動が高鳴っていた。

「また連絡する、必ず出て来い、いいな?」

解放されて、茫然となった状態で返事を返した。

「分かった……」

地面から足が浮いたような、おかしな気分で車を降りた。
テツは小さくクラクションを鳴らし、珍しく俺が歩き出す前に車を出して走り去った。
やっぱり翔吾の事が気になるんだろう。

俺は暗い夜道を歩いて家に戻ったが、家に帰ったら真っ直ぐにキッチンへ向かった。
母さんは忙しそうに洗い物をしていた。
手を動かしながら何処に行ってたか聞いてきたが、いつもと同じ嘘の言い訳をしたら、それ以上何も言わなかった。
姉貴は……母さんは俺に甘いと言ったが、俺は違うと思う。
毎日あくせく働いて疲れているからだ。

兎に角椅子に座り、食卓に並べられたおかずをつまみ食いしたら、母さんはまるで見ていたかのように、ご飯をよそった茶碗を渡してくれる。

頼りない息子でごめんって……そう言いたかったが、余計な事を言って薮蛇になるのはゴメンだ。
黙々と箸を口に運び、遅い夕食を済ませた。

腹が満たされたら、何だか急に眠くなってきた。
母さんにひと声をかけて、歯を磨きに洗面所へ向かった。

壁に寄りかかって歯を磨いていると……姉貴がやって来た。

「友也……もう12時になるわよ、日付変わっちゃうじゃない、こんな時間まで何してたの、ね、友達って、前に話してた新しく出来た友達?」

姉貴は早速質問してくる。

「うーん、そう……」

──しかし、眠い。

「んん?あんた……髪、濡れてんじゃない?」

半分寝ながら答えたら、目ざとく髪の変化に気づいたが、眠気で頭がボーッとしていた事が幸いした。

「ああー、友達んとこで風呂を借りた」

ごく自然に嘘が口から出た。

「ふーん、お風呂まで借りるって、そんなに仲いいんだ」

「まぁ……」

「明日も学校あるのに、その友達も随分呑気なんだね」

「そ、呑気なんだ、姉ちゃんは明日デート?」

姉貴はまだ疑ってたが、余計な事を言う気力はなかった。

「うん、まあね」

「ま、頑張って……、悪いけど、俺……眠いから寝る」

姉貴は明日仕事が休みで彼氏とデートだ。
今夜は機嫌がいいらしく、しつこく絡んでくる事はなかった。

歯を磨き終え、2階の自分の部屋に上がったが、部屋に入ったら真っ直ぐにベッドへ行き、そのまま布団の上に倒れ込んだ。

テツと会うと、肉体的にも精神的にも両方疲れるが、目新しい事を知るのは楽しい。

今夜毛を剃られたのはちょっと嫌だったが、それでも……去り際のキスはやけに印象に残った。







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あきゅろす。
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