BL長編snatch(完結)ヤクザと高校生 Snatch85Thank you for loving me all the time. ◇◇◇ 仕事の事で揉めに揉め、テツは花車で働く事を断固反対した上、話をしたその翌日にマネージャーにヤキを入れた。 そのせいで働きづらくなってしまい、1週間、悶々と悩んだ末に翔吾に相談した。 すると、翔吾はニューハーフパブでボーイをやったらどうかと言う。 それも親父さん絡みの店だ。 カマは苦手だし、気が乗らなかったが、ボーイと言っても売り専のボーイとは違い、ウエイターや雑用をするらしい。 それに、自分の紹介なら時給に色をつけてくれるとの事で、送迎も下っ端にやらせると言う。 色をつけてくれるのは有難いが、送迎までやって貰ったら申し訳ない。 悪いからいいと言って断ったら、恩人に恩を返すのは当然だと言い、是非そうさせてくれと言った。 そこまで言ってくれると、逆に断りづらくなる。 少し考えると言って、テツには話さずに保留していたら、ミノルから電話がかかってきた。 『おう、俺だ、三上だ』 けど、かけてきたのは三上だ。 『三上さん!ちょっと一体どこにいたんですか?マジで成仏したかと思いましたよ』 急にプッツリと現れなくなったから、俺が願いを聞き入れてあげた事で満足して、三途の川を渡ったんじゃないかと……、ガチでそう思い始めていた。 『あのな、おめぇと一緒に脱走するつもりだったんだが、ミノルの意思が強すぎて出られなかった』 『え、意思?』 『山本だ、ミノルはあいつと一緒にいたかった、だからよ、頭ん中はあいつの事でいっぱいだ、念が邪魔して表にでられなくなっちまった』 『そうだったんですか』 確かに、あの時ミノルはゴネて歩かなくなった。 『で、あの屋敷で暮らす事になったんだが、ま、ミノルは相変わらず可愛がられてる、俺も別になんて事ぁねーんだが、ミノルは花車でおめぇと一緒に働きてぇと思ってる』 三上は組長宅の暮らしを嫌がってはいないようだ。 『そうですか、あのーでも、花車はテツが駄目だって言うから、翔吾に内緒で相談したら……ニューハーフパブはどうかって』 『ニューハーフパブ?ああ、親父の店か、で、働くのか?』 『俺……、カマ嫌いなんで』 『あぁ"?そうなのか、どうしてだ』 『ちょっと嫌な奴がいて……』 他のカマは知らないが、堀江のせいでカマは見るのも嫌だ。 『嫌なら断れ、カマが嫌いなのにカマと一緒に働くのは無理だ、まだ他にもあるだろ、キャバクラやらデリヘルやら、そっちはどうなんだ?』 言われてみればそうだった。 親父さん絡みの風俗店は、花車だけじゃない。 『あ、そうですねー、ちょっと聞いてみます』 『おお、そうしろ、で、俺は一旦消えるからよ、その話をミノルに伝えてやれ』 『わかりました』 三上の言うように、もう一度翔吾に聞いてみる事にしたが、取り敢えず電話を切って再びミノルに電話した。 すると本来のミノルが出たので、現状を説明してどうするか聞いたら、ミノルは花車に拘ってるわけじゃなく、俺と一緒に働きたいと言う。 俺もミノルがいてくれた方が助かる。 ミノル伍長は忠実に命令を遂行し、惜しみなく俺を手助けしてくれるからだ。 ひとまず、ミノルの意向はわかったので、どうするか決まったらまた連絡すると言って電話を切った。 その後で翔吾に電話した。 早速他にめぼしい店がないか聞いてみたら、同じソープランドで1件と、キャバクラが1件あると言った。 『よし!』と期待したが、ソープは幹部候補として募集をかけてるらしく、キャバクラは接客しなきゃならないとの事だ。 正直ガッカリしたが、カマよりはマシな気がした。 もう一度テツに相談する事にして帰りを待ったが、ここに戻ってきてから、夕方出て行って朝まで帰らないというパターンになっている。 思った通り、テツは朝方になって帰って来た。 俺は先に寝ていたが、眠気と戦いながら目を覚まし、テツがベッドに来るのを待って話をした。 「な、どう?」 「俺に内緒で、若に相談しやがって」 「ごめん、でもあんたに言っても駄目の一点張りじゃん、だから翔吾に言ったんだ、な、どう思う、幹部は責任重すぎるから、キャバクラなら……って思うんだけど」 「どっちも駄目だ」 「なんで?」 「カオリは俺の事を知ってるからセーフだったが……、当たり前に女はいくらでもいる、おめぇは知らねぇだろうが、ハッキリ言って花車はまだマシな方だ、マネージャーがバカなだけで嬢の質は悪くねー、ま、あの店は一応老舗だしな、けどよー、他の店はろくでもねー、頭スッカラカンな女はいくらでもいる、もうな、風俗はやめろ、だいたいおめぇはカタギなんだからな、カタギらしく普通のバイトを探せ、金がいいからって風俗なんかに関わったら、ろくな事はねー」 「じゃあ、女が駄目だって言うなら、ニューハーフパブはどうなんだ?」 「まあー、そうだな……、おめぇカマは嫌いだろ?」 「ああ」 「ふっ……、だったら、そこだけ認めてやる」 「えぇっ……、なんでだよ」 「嫌いなら、まず浮気はしねぇだろう」 「えー、そういう事言う?ちょっと酷くね?」 「さて、寝るか……、疲れた」 「ちょっと、なにわざとらしく無視してんだよ」 「もう寝たぞ、話はできねー」 「あのな、このっ……!」 「なっ、こらやめろ……、なっはっは!」 「へへー、なあ、カマ以外でもいいよな?」 「こいつー!」 「わあっ!」 やっぱりテツは意地悪だ。 堀江のせいで、俺が散々な目に合ったのを知ってる癖に、ニューハーフパブだけ許可するとか……ムカついた。 擽り攻撃をしてやったが、反撃されて擽り地獄に落とされた。 死ぬほど笑って降参したが、『勃っちまったからにゃヤルしかねぇ』と言い出した。 だけど、じきに夜があけそうだ。 肌寒い早朝にケツ洗浄とか……勘弁して欲しい。 「なあ、一旦寝よう、起きてからでいいだろ?」 「駄目だ、おさまりがつかねぇ」 ヤル方は楽でいいが、ヤラれる方は超面倒臭い。 とは言っても、テツは一旦ヤルと言い出したら絶対退かず、引きずっていかれ……無理矢理やられる羽目になる。 仕方なく承諾するしかないと思ったら、ピンポンが鳴った。 「あっ……」 こんな早朝からやって来るのは、火野さん位しか思いつかないが、あれから火野さんには会ってない。 いくらなんでもいきなりやって来るとは思えないが、また直ぐにピンポンが鳴った。 「火野だな、そういやあいつ、友也を鍛錬に誘っていいかって、聞いてきた」 やっぱり火野さんだったようだが、テツに話しをしていたらしい。 「いつ?」 「昨日だったかな」 「で、OKしたわけ?」 「ああ、別に構わねーと思ってな、けどよー、これからって時に……、俺が断ってくる」 テツは起き上がりかけたが、瞬時にどっちがマシか判断した。 「いや、俺、行ってくる」 ケツ洗浄よりは……鍛錬の方がマシだ。 「あぁ"?行くのか」 「うん、せっかくだし、ちょっと行ってくる」 「そりゃまあー、火野にOKしちまったしな、しょうがねぇ、ふて寝でもするか」 テツは不貞腐れた顔をしたが、ため息をついて寝転がった。 「そうそう、疲れてるなら、おとなしく寝るのがいいよ」 声をかけてベッドから降りた。 パジャマ代わりのスウェットに上着を羽織り、靴下を履いてそのまま行く事にした。 木刀はベッドの隅に立てかけてあるから、それを手にとって玄関へ向かった。 ドアを開けたら火野さんが待っていた。 「友也、へへっ、久しぶりに一緒にやろうぜ」 「うん」 火野さんが嬉しそうに笑うから、渋々だった気持ちがヤル気に満ちてきた。 どうのこうの言っても、今や火野さんは……俺にとって実兄と言っても過言じゃない。 鍛錬位、しれている。 だが……。 いざやり始めたら……キツイ。 久々にやったせいで、全然力が入らない。 へなちょこに振り下ろしていると、火野さんが背後に立って両側から腕を掴んできた。 「まっすぐに、こう上げて振り下ろす」 「あ、はい……」 背中に体が密着してドキッとした。 「回数はやらなくていい、1振りずつ正確にやれ、いいか?こうやって……こうだ」 火野さん相手に何を考えてるのか……バカじゃねぇかって思ったが、腕に包まれたような状態になったら、田上組長宅でハグされた事が蘇り、変に意識してしまう。 多分、テツがエロい事をしたせいだ。 「は、はい……」 上の空でアドバイスを聞いて頷いたら、火野さんは隣に戻った。 木刀を構えて振り下ろしてみたが、まったく腕に力が入らず、1振り1振り、へなちょこな素振りをした。 「駄目だなー、ほら、こうやるんだ、俺が支えてるからやってみな」 火野さんはまた後ろに回り込んできて、さっきより大胆に両側から腕を掴んでくる。 まるで……後ろから抱き締められているようだ。 「全然力が入ってないな、ほら、頑張れ」 「あ、はい……」 「支える方に力を入れるんだ、左手だ」 そんな事を言われても、ベッタリくっつかれちゃ……集中出来ない。 「あ、あの……、俺、ちょっとまだ勘がアレなので……力入らなくて……すみません」 「ふうー、そうか……」 火野さんは大きく息をついて肩を抱いてきた。 「あ……、あの」 あくまでも弟だから親密に接しているんだろうが、耳元に息がかかると、嫌でもムラムラして……チンコが勃ってくる。 「ははっ、なんだか気が急いてな、まあーゆっくりやろうか、俺はな、おめぇが戻ってこねぇんじゃねーかって心配してたんだ、なんせ相手は木下の兄貴だ、散々おめぇに固執してようやく手に入れたとなりゃ、そう簡単にゃ手離さねぇと、そう思ってよ……、どうにかならねぇもんかと考えたが、俺ひとりがカチコミかけたとこで殺られてしまいだ、そもそもおめぇが犠牲になってやった事を台無しにしかねない、おまけに舞さんを路頭に迷わせるとくりゃ……、手も足も出ねーとはまさにこの事だ、だけどよ、こうやってまた一緒に鍛錬できる、おめぇが兄貴の元に戻って来て……本当に良かった」 火野さんは、ひとことづつ噛み締めるように思いを口にしたが、俺は感動と興奮の坩堝にはまり込んでいた。 「あ、あの、俺も帰って来れて嬉しいです、ただ、すみません……、取り敢えず……離れてください」 抱き締められた状態で低くドスのきいた声で言われ、最早、股間がにっちもさっちもいかない状況になっている。 「ん?あ……、そうか、こりゃ……わりぃ」 火野さんは前を覗き込んで気づいたらしく、バツが悪そうに体を離した。 「俺みたいなオッサンでも、そんな風に見てくれるのか……、ハハハッ、俺も捨てたもんじゃねーな」 謙遜して言ったが、苦笑いを浮かべている。 俺は自分が情けなくなった。 「すみません……、キモイっすよね?俺も自分でそう思います、男相手に勃起するとか……変態だ」 「いや、キモイとか、そんな事は思わねぇ、俺はおめぇの事を可愛い弟だと思ってる、俺は天涯孤独の身だ、だからよ、家族が出来て嬉しくってしょうがねぇ、むしろ……悪かった」 弟として……と言われ、逆に謝られたりしたら、自己嫌悪に陥る。 「いえ、そんな……」 「あのよー、前にも言ったが、俺は性的指向についてどうのこうの思わねー、ただ、おめぇが可愛いから、つい余計な事をしてしまう、おめぇが気にする事ぁ何もねーんだよ、別によ、勃ったとしても俺は気にしねぇ、だからおめぇも気にするな」 火野さんは諭すように言ったが、本心でそう言ってるのは、俺もよくわかっている。 今度はやたら恥ずかしくなってきた。 「はい……、ほんとすみません」 「はははっ、まだわけぇんだ、勃って当たり前だろ」 すると、火野さんは笑い飛ばして素振りを再開する。 「あの……、はい」 無性に照れ臭くなり、誤魔化すように木刀を構えて振り下ろした。 照れ隠しで無心に素振りをしたら、妙に力が出て、刀筋とやらを上手く捉える事が出来た。 「大分よくなった、今日はここまでにしよう、次はまだ未定だが、また付き合ってくれるか?」 20分もやらないうちに、火野さんは終了すると言った。 「うん……、あ、いえ……、はい」 「敬語じゃなくていいんだぞ、兄貴と同じようにタメ口で構わねー」 うっかり普通に返事をしたら、タメ口でいいと言ったが、やっぱり年が年だけにいきなりタメ口は抵抗がある。 「あ、はい、そのー、努力します」 「はははっ、ああ、分かった、それじゃ上がろうか」 促されて一緒にエレベーターに乗り、火野さんと別れて部屋に戻ってきた。 そっとベッドの脇に歩いていき、木刀を隅に立てかけたが、テツはぐっすり眠っている。 万一目を覚ましたら、またヤルと言い出しかねない。 起こさない方が身のためだ。 ちょっと汗をかいたのでシャワーを浴びた。 浴室から出たら普段着に着替えてソファーに寝転んだ。 寝転んでニューハーフパブの事をどうするか考えたが、考えてるうちに眠くなり、目を閉じていた。 「おいコラ、おい……」 頬をペチペチ叩かれた。 「うー、痛てぇ……」 痛い……けど、テツだから許す。 「何故ソファーで寝てる」 目を開けたら、真上から睨みつけている。 「うーん……、何となく……」 「嘘つけ、俺に抱かれるのが嫌で避けたな」 やっぱりそう来た。 「違う……、もう……いいじゃんそのくらい」 当たっているが、たかがそんな事で責められたくない。 「ふんっ、あーそうか、そんなに嫌か」 なのに、ガキみたいに膨れっ面をする。 「拗ねるなよ……、つーか、ちょっと考え事をしたかったから……」 仕方ないから白状する事にした。 「なにをだ?」 テツは不貞腐れるのをやめてソファーに座ったので、俺も起き上がってテツと並んで座った。 「ニューハーフパブ……」 けど、口にするだけで気が重い。 「おお、へへー、カマはうぜーぞ、あいつら毒舌がウリだからな、やたら体ぁ触るしよ、ま、親父の店は美形を揃えちゃいるが、中身はどれも似たり寄ったりだ、酒は奴らが客にじかに振る舞う、だからよ、おめぇはカマに何か持ってこいと言われた時に持っていきゃあいい、あとは裏方だ、カマの着替えを手伝ったり、楽屋裏の片付けだな」 テツは鬼の首を取ったように饒舌に語ったが、言った事は嘘じゃなく、真実だろう。 聞くだけで……やる気が失せていった。 「うぅっ……着替えとか、嫌だー」 「な、だからよ、おとなしくコンビニか、ラーメン屋にでも行け」 「ラーメン屋?なに言ってんだよ、それこそ嫌だ」 「我儘だなー、じゃ、おとなしく俺に飼われてろ、ふっふっふっ……性奴だ、元はと言えばそうだったんだ、おめぇは奴隷だからな」 「あのさー、これ以上やる事ねーだろ?だいたい……隣に姉貴と火野さんいるのに、何考えてんだよ」 「バカだな、おめぇが女装して待つんだ、裸エプロンもな、くっくっ……」 「またそれ?頭、どうかしてる」 「おい、なに言ってんだ?おめぇは喜んでたじゃねーか、誤魔化そうったって駄目だぞ、俺はこの目でしっかり見てるからな」 「いっつも無理矢理じゃん」 「でー、まんまと無限地獄に落とされたのは誰だ?」 「知らねー、俺さ、最近物忘れが酷いんだ、もうなにも覚えてねぇ」 「ほおー、だったらやり直しだ、あのな、新しいグッズを買ったんだ」 「ちょっと、俺が向こうへ行ってる間に……なにやってんだよ、危機感ゼロじゃねーの」 「ちげーよ、馬鹿だな、おめぇの事を思う余り、ついポチったんだ、そのくらいわかれ」 「あのさー……」 テツは俺の肩を抱き、喜々として様々な変態的シチュの提案をしてきたが、そのお陰で……ちっとも真面目に考えられなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |