BL長編変態ヤクザな話snatch(完結)
Snatch31tempted
◇◇◇
テツがこっちを見ているかもしれないが、やるしかない。
「ね、テツー、ちゃんと見てるんだよ」
腹を決めてキスしようとしたら、翔吾は不意にテツの方へ向いて言った。
「はい」
テツは抑揚のない声で返事を返したが、俺はテツを見る事ができなかった。
「うん、だったらいい」
翔吾は急に活気づいて俺の体を押してきた。
「あ……」
「友也、僕の事好き?」
ソファーに押し倒されて翔吾を見たら、嬉しそうに問いかけてきた。
「……ああ」
好きだという気持ちに偽りはない……。
だから返事を返した。
翔吾は笑みを浮かべた後で唇を重ねてきた。
華奢な体は悲しいくらい軽く感じたが、翔吾は俺の頭を片腕で抱き込んで貪る。
こんな事をして……もし本当に満たされるのだとしたら、俺には到底理解できないが、ひょっとしたら……それは悲しみの裏返しなんじゃないかと思う。
いつだったか、翔吾は自分の生い立ちについてぼやいた事がある。
物心ついた時から母親はいなかった。
兄弟もいない。
親父さんの子分に囲まれ、乳母役の子分が母親代わり。
俺はそれを聞いて、翔吾はずっと寂しさや孤独を抱えてきたんだろうって、そう思った。
こんな事をするのは間違ってると思うが、翔吾がこんな暴挙に出たのは俺とテツの事が原因で、俺にも責任がある。
翔吾は親父さんと同じ香水を使っているらしく、鼻腔を通り抜けた甘い香りが肺を満たし、体中に染み渡るように感じた。
唇は枯渇したように肌を貪り、掠めるようなキスを落として耳へと向かい、細い指先が胸の突起を摘み上げてきたが……俺はテツの事が気になって仕方がなかった。
「友也……、テツの事を気にしてるでしょ」
翔吾は不貞腐れた顔で言ったが、なにも言えない。
「なにも言えないんだ、いいよ、じゃあ、もう脱いじゃって」
命じられるままに起き上がったら、テツと目が合ってしまった。
狼狽えて直ぐに目を逸らしたが、テツは無表情に俺を見ていた。
───意外だった。
もっと辛そうな顔をしているかと思ったのに、動揺しているようには見えない。
「僕も脱ぐよ」
翔吾も服を脱いでいったが、気もそぞろに黙り込んでいた。
鬱々とした嫌な気分の中で、再び体を横たえて翔吾に抱かれた。
色白な肌は滑らかな心地よい感触がしたが、翔吾の背中を抱く気持ちにはなれなかった。
また文句を言われるんじゃないかと思っていたが、翔吾はなにも言わずに行為に没頭している。
今はなにも考えちゃ駄目だと、自分に言い聞かせて目を閉じたら、勃起したナニが俺の竿を擦り上げてきた。
「う……」
生々しい感触に、萎えていた竿がビクリと反応した。
「ふふっ、これは感じるんだね」
翔吾は腰をグラインドさせてわざと擦り付け、太い竿が俺の竿を左右に転がすようにグリグリ擦る。
翔吾のナニは色こそ淡いピンク色をしているが、華奢な体に不釣り合いな大きさだ。
それでグリグリやられたら……たまらない。
「っ、ぁ……」
擦れ合う度にびくつき、勃ち上がって先走りを零した。
「うぅ……っ」
眠っていた淫らな疼きが刺激され、さっきまでなにも感じなかった体が、嘘みたいに感じ始め、指先が胸の突起を摘み上げただけで体中に淫猥な刺激が走る。
「ハァハァ、あ……っ」
「その気になった?じゃあ、もうやっちゃおっかなー」
翔吾は明るく言い放ち、俺の足を抱えあげてローションを塗っていった。
逃げ出せるなら、逃げ出したかったが、快楽を刻まれた体は、気持ちとは逆に期待している。
なるようになるしかない……。
「テツ見て、ほら……入れるよ」
熱い塊がアナルに触れ、翔吾はテツに声をかけて中に押し入ってきた。
「う"っ……!」
洒落にならない強烈な圧迫感が襲いかかり、背中がこわばって首を反らしたが、先端が前立腺を突いてきて目が眩んだ。
「ん"あ"ーっ!はっ……ハァハァ」
「うん、気持ちいい、最高だよ友也……やっとひとつになれた」
翔吾は気持ち良さそうに息を吐き出して呟き、俺にかぶさってきたが、首筋にキスをしながら腰を動かしている。
張り出したカリ首が前立腺を引っ掛けるように擦り上げ、意識が掻き乱されて制御不能に陥っていった。
「っ、ハアハア、ああっ、あっ…!」
腰が抜けそうな快感が湧き出し、堪らず声を上げたら翔吾は不意に動くのをやめた。
「こんなに感じるのは……テツのお陰だね、テツどう?今の気持ちを言ってみて」
テツに向かって酷い事を言って問いかけたが、俺は緊張の糸が途切れて体が楽になり、ソファーにぐったりと体を預けていた。
「特には…」
「なにも感じないって事はないだろ、友也を屋敷に連れて来た時から、気に入って目をつけてたくらいだ、僕に取られて悔しい?」
「いえ」
「なにも思わないの?そんな筈ないよね、内緒で会ってた癖に、あのアパートに連れてったんでしょ?あそこはよほど気に入らなきゃ連れてかない、ふふっ、知ってるよ、2階はプレイルームになってるしね」
「俺はあくまでも補佐だ、若の面倒をみるのが俺の役目、それだけです」
「ふーん、夢中になってたわりにはやけに冷たいね、親父にびびった?パパには対抗できないもんね」
「おやっさんには拾って貰った恩がある」
「ふふっ、で、親父に掘られた、だからなにも言えない」
「なんとでも仰ってください、俺は与えられた罰を受けるだけっす」
俺は翔吾に貫かれたまま、2人の様子を窺っていたが、テツは一貫して淡々と答えている。
中でも、翔吾に『悔しくないか』と聞かれ、テツが『いえ』と答えた時……胸がギュッと締め付けられるような痛みをおぼえた。
居た堪れなくなってテツを見たら、また目が合ったが……さっきとおんなじ表情だった。
何故そんなに落ち着いていられるのか、心が激しく揺らいだ。
「友也……やっぱりテツは遊びだったんだよ、可哀想に、僕が癒してあげるから」
翔吾は鬼の首を取ったように言ったが、テツがどうだろうが、翔吾に対する気持ちはそれとは別で……なにも変わらない。
「俺は……翔吾の事、大切な……友達だと、っ…ハァハァ、お、思ってる…」
「意地っ張りだなー、いいよ、そういう事なら、僕も……意地でも振り向かせてみせる、これ、こないだの薬、ふふっ」
だけど、俺の言葉は届きそうになかった。
翔吾はアナルから竿を引いて、露出した部分に媚薬を塗り込め、媚薬付きの竿を深く突き込んできた。
腹の奥にズンっ!と重い振動が響き、それだけでもキツかったが、翔吾は俺の両足を肩にかけて被さった。
張り詰めた亀頭が奥を突き上げ、ハラワタが捩れるような感覚をおぼえるが、それだけには終わらず……カリ首が前立腺とその奥の精嚢を抉りあげる。
ビリビリとした強い刺激が継続してわきおこり、体中に淫靡な痺れが広がっていく。
「っ……!はああっ!……あう"っ、ああっ!」
怒張した竿はただでさえ強烈な快感を与えてくるのに、媚薬が効いてきて……気持ち良すぎてわけがわからなくなってきた。
「ふああっ…!も…もう……っ!もう……駄目だっ、はあぁっ!」
股間に集まった熱がダラダラと溢れ出していた。
「トコロテンだ、ふふふっ、いいよ、堪らない、テツ、ほら見て、トコロテンしたよ」
翔吾は俺の足を肩から降ろして得意げに言ったが、テツは無言のままだ。
「う………、テ、テツ……」
やるせなくなり、テツへ向かって手を伸ばした。
「いい加減にしろ!駄目だからな!僕を見ろ!」
翔吾は激昂して俺を怒鳴りつけ、荒々しく突き上げてきた。
「う……うぁっ……!し、翔吾……!やめっ、あっ、ああっ!」
竿が体の中を乱暴に往復し、内蔵を打たれるような衝撃に体中が強ばり、意識が飛びそうな感覚に襲われる。
華奢な体が身軽に揺れ動く度に、強靭なイチモツが淫猥な刺激を叩き込み、許容範囲を超える快感に涙が滲み出してきた。
「くっ、ああっ!やめっ、壊れる、っああ!」
「友也、僕のものになれ!なるんだ!」
翔吾は無慈悲に快楽を貪り、繰り返し俺に言い聞かせていたが、俺は意識が飛びそうになって声すら出なくなっていった。
気絶する寸前、奥深く突き上げた竿が俺の中で弾け、放たれる熱が体内に染み渡って体中を蕩けさせた。
朦朧とする中で淫蕩に浸るしかない。
静かな部屋に荒らげた息遣いだけが響いていたが、やがて体の熱が冷めて呼吸が穏やかになると、翔吾はゆっくりと起き上がって体を離した。
「ふふっ……、あははっ!これで僕のものだ、だよな?友也」
俺は……真っ白になった頭で高笑いする翔吾を見ていた。
その後、翔吾に促されてシャワーを浴び、何事も無かったかのように3人で過ごしたが、テツは前みたいにふざけて絡んでこない。
楽しそうにしているのは翔吾だけだ。
「若ー、いいっすかー?」
俺は翔吾の話に合わせて相槌を打っていたが、ノック無しでドアの向こう側からイブキの声がした。
「ああ、どうぞ」
「失礼しまーす」
「何か用?」
「あのー、黒木の兄貴が、若に話があるらしいんですがー」
「また?もー、しょうがないなー、連れて来て」
「はーい、ただいま!」
翔吾が呆れ顔でイブキに言うと、イブキは部屋から出て行ったが、黒木が何故ここに来るのか……不思議に思った。
「失礼します」
「黒木、なに」
「あ、矢吹……に、友也も一緒なんっすね、じゃまたでいいっす」
黒木には1度会ったきりだが、あんなのを見てしまったせいで……印象深い。
黒木も俺の事を名前で呼んだが、俺とテツを見てバツが悪そうに部屋を出て行った。
「ったく……しょうがないなー、ちょっと行ってくる」
翔吾は渋々立ち上がり、黒木の後を追って部屋から出た。
「黒木さんが……何故ここに……」
意識して聞いたわけじゃなく、つい呟いていた。
「ふっ、あいつ……、あん時若にやられちまって、若に懐いちまったんだよ、クックック……」
「えっ、なにそれ、懐くって……マジで?」
黒木は翔吾に無理矢理相手をさせられ、嫌々だった筈。
「あいつもバイだが、ウケに回ったのは若が初めてだ……、でー、惚れちまったんだよ、どうやら目覚めたらしい……、っははっ!」
テツは面白がっているが、俺は自分の事があるから、黒木を笑う気持ちにはなれない。
「テツ、笑い事じゃねーし、これから俺……」
「悪いが、俺の事は忘れてくれ、おめぇは女でも作れ」
「そんな……テツ、俺」
あてにしていたわけじゃなく、縋るつもりもなかったが、ただ……慰めて欲しかった。
「俺はクズだ、朱莉を見りゃ分かる」
「嘘だよな?わざと言ってるんだろ?」
確かに、個人的な付き合いは断たれた。
「ま、女が無理なら、若と上手くやりな、もういいだろう」
だけど、まさかそんな事を言うとは思わなかった。
「待って!」
テツは立ち上がってドアの前に歩いて行き、慌てて追いかけたら、代わりに翔吾が戻ってきた。
「ん、テツ…」
「俺はこの辺りで失礼します」
素っ気なく立ち去る背中を見送り、茫然と立ち尽くしていた。
それから翔吾と2人で過ごし、帰りはイブキに送って貰ったが、心が死んだように感情を無くし、イブキのウザイお喋りも気にならなかった。
テツとは、本当にこれで終わりなんだろうか……。
翔吾に抱かれるのは、割り切ればなんとかなる。
けれど……テツが居なくなるって、そう考えたら……何もかもどうでもいいような、酷く投げやりな気持ちに駆られてくる。
日が暮れてしばらく経ったが、姉貴は帰って来ない。
火野さんとデートでもしてるんだろう。
姉貴が羨ましくなってきた。
ベッドに寝転がって天井を見ていたら、電話がかかってきた。
───竜治だ。
『……はい』
『おお、俺だ、今家か?』
『はい』
『今日はどうだった?』
『最悪です……』
『ははっ、だろうな、矢吹はおめぇに何か言ったか?』
『忘れろと、女と付き合えって……』
『そうなのか?ネックレスまで渡したわりにゃ、いきなりバッサリ切ってきたな』
『俺は、別に……あてになんかしてなかった、三上の時だってそうだった、だから、頼ろうとは思ってない、なのに……』
竜治に話すつもりはなかったが、溜まった鬱憤が口をついて出ていた。
『ふーん、何を考えてるのか分からねーが、矢吹が相当遊んでたのは確かだからな』
『すみません、ちょっと話をする気分じゃないんで……』
『待ちな、今から行ってやる』
『えっ……、けど、もう8時だし』
『かまやしねぇ、こないだ姉ちゃんを助けた場所で待ってろ、そうだな、今出先なんだが……30分後だ、いいな?』
『あ、はい……』
強引に押されて断れなかった事もあるが、ほんと言うと……寂しかったのもある。
だから……竜治の誘いに頷いた。
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