BL長編変態ヤクザな話snatch(完結)
Snatch13tangle
◇◇◇
あれから色んな事が頭の中をぐるぐる回ったが、ダラダラと金曜日を迎えた。
この日、テツに言われたように仮病を使って学校を休んだ。
母さんはすんなり信じてくれたが、姉ちゃんは疑っていた。
とは言っても、姉貴も仕事があるから俺にかまってる余裕はない。
みんな居なくなった後で起き上がり、顔を洗いに下へ降りた。
顔を洗ったらキッチンへ行き、冷蔵庫を漁って食い物を物色した。
適当な物を出してレンジでチンして食ってると、テーブルに置いたスマホから着信音が鳴った。
テツだ……。
夕べ電話してきて、早めに迎えに行くと言っていた。
口にパンを頬張っていたが、構わず電話に出たら今から迎えに行くと言う。
まだ9時だ。
言いづらかったが、タトゥーを入れるのは断ると言ったら、テツは急に不機嫌になって怒り出した。
『おい、どういう事か言ってみろ、何故急にそんな事を言う』
約束を破る事は悪いとは思ったが、朱莉と会ったあとから、やっぱりタトゥーは断るべきじゃないかと思っていた。
「ごめん、でも名前とか…一生残ると困るし」
『そんな事は端から分かってる筈だ、いざとなってびびったとでも言うのか』
「ああ、そうだ……」
『そんな勝手が通用すると思うな、いっぺん約束したこたぁ守って貰う、おい、今から行くからな、待ってろ』
「えっ、行くって……まさか家に来るつもりじゃねーよな?」
『誰もいねぇ筈だ、家の真ん前に車をつけてやる、今日はレクサスだ』
「ちょっと待って……!もし誰かに見られたらマズい」
『うるせー!逃げたら承知しねぇぞ、おとなしく待ってろ!』
テツは恫喝して電話を切ってしまった。
ここ最近は怒鳴られる事がなくなっていたが、久々に怒鳴られた。
たかがタトゥーくらいでそんなに怒らなくても……。
逆に腹が立ってきたが、ぼさっとしてたらマズい。
人気のない閑散とした住宅地だが、車を家の真ん前につけられては困る。
しかし、止めようがない……。
だとしたら、素早く車に乗ってさっさと家から離れる。
そうするしかないだろう。
ゆっくりと出かける用意をするつもりだったが、テツのせいで急に忙しくなった。
急いで食事を済ませ、2階に駆け上がってボサボサの髪を直し、クローゼットから適当な服を引っ張り出して着た。
「はあ、はあ……」
休まずに動き続けたせいで……息が上がった。
電話を切って20分しか経ってない。
まだ来ないだろうと思ってベッドに寝転がったら、微かに車が走る音が聞こえてきた。
平日のこの時間帯は車も疎らにしか通らないが、翔吾の屋敷から出てくるとなれば、20分でここに来るのは不可能だ。
気にせずに寝転んでいると、家の前に車が止まった気配がした。
「え、まさか……」
飛び起きて窓から下を眺めたら……黒いレクサスが止まっている。
「もう来たのか?ほんとに真ん前に止めてるし……」
窓から離れようとした時、車からテツが降りて来るのが見えた。
「ちょっ…なにして、なんで降りるわけ?ああもう!」
冷や汗をかきながらベッドから飛び降りると、部屋から飛び出して真っ直ぐに階段を降りていったが、階段を降りる途中でピンポンが鳴った。
車だけでも気を使っているというのに、黒服を着た怪しげな男が玄関先に立ってピンポンを押すのは……とんでもなくマズい。
玄関にダッシュして扉を開けた。
「テツ、マズいだろ」
車に戻って欲しかったが、テツはいきなり家の中に入ろうとする。
「うるせー、あがらせて貰うぜ」
「え、ちょっと待った、俺、すぐに出るから車に乗ってて」
姉貴の事も含め、俺は家族の事をこれ以上テツに知られたくなかった。
「別にいいじゃねーか、姉ちゃんの部屋ぁ見せろ」
テツを止めたが、訳の分からない事を言って家に上がろうとする。
「なに言ってるんだよ、駄目に決まってるだろ!」
「俺がうろつくと困るか」
「え、いや、俺は…」
「なんだ、言ってみろ」
「俺は翔吾やあんたの事をそういう目で見てるつもりはない、けど…家族は別だ、俺の事で家族に迷惑かけたくねー」
「ふっ、それでムキになってるのか」
「悪い……、兎に角車で待っててくれ、直ぐに行く」
「分かったよ、それじゃおとなしく待っててやる」
一体何がしたかったのかわからないが、思ってる事を正直に話したら車に戻っていった。
用意はほぼ終わっていたので、財布とか必要な物をショルダーバッグに詰めて家を出た。
車に乗ったら、テツは直ぐにアクセルを踏んで家の前から離れたが、このまま黙っていたらタトゥーを入れる羽目になる。
「テツ、さっきも言ったけど、タトゥーは無理だから」
「俺は惚れた相手にゃ必ず印を入れる事にしてる、名前が嫌なら記号にしてやる、おお、ハートなんかいいぞ、お前の尻にゃピッタリだ、あははっ」
もう一度訴えたら、ふざけるように言って笑い飛ばしたが、必ず印を入れると聞いて……三上が話してた事が頭に浮かんできた。
あの時俺は『コレクションみたいなものなのか?』って……そう思った。
「テツ、俺、あんたのコレクションにはなりたくねーから」
「ん、コレクションだと?おめぇなに言ってるんだ」
それは心の隅に引っかかってた事だ。
一旦口にしたら、聞かずにはいられなくなった。
「じゃあ聞くけど、今まで何人にタトゥーを入れさせたんだ?」
「さあな、忘れた」
とぼけて誤魔化すテツを見たら、無性に腹が立ってきた。
「ほら、そうやって忘れてんじゃん、惚れたとか言っても別れたら意味ねーじゃん、ものにして印をつけて……、結局はあんたが満足してるだけだろ、だからコレクションだって言ってるんだ」
「生意気な口ききやがって、おめぇのようなガキになにがわかる、なにもわかりゃしねぇ!」
テツはまた俺をガキ扱いしたが、恋愛経験はなくてもちゃんと分かってる。
「ああ、俺はガキだ、だけど……いい事と悪い事の区別くらいはつく」
「なにがいいてぇ、おい、おめぇ……何か知ってるのか?」
朱莉の事を思い浮かべながら遠回しに言ったら、テツは即座に疑ってきた。
「いいや、さっき言ったように、あんたを満足させる為にタトゥーを彫るのはごめんだって、そう言ってるんだ」
ちょっと焦ったが、素知らぬ顔でタトゥーは承諾出来ないと主張した。
「ふーん……、そうか、どうしても嫌か」
「ああ、嫌だ」
「分かった、じゃタトゥーは今回は先延ばしにしてやる」
テツは黙り込んで暫く考えていたが、一応俺の気持ちを汲んでくれたのか、ひとまず諦めてくれたようだ。
「先延ばしか、うん、まぁ……それなら」
いずれまた言い出すだろうが、しつこくゴネて本気で怒らせるのはマズい。
俺もひとまず納得した。
「その代わり美容外科だ、永久脱毛してパイパンにしてやる」
だが、安心したのも束の間……また妙な事を言い出した。
「美容外科?永久脱毛?」
「おお、レーザーや針で毛根を破壊して毛を生えなくするんだ」
タトゥーよりはマシだが、微妙だ。
「あのさ……、そこまでパイパンに拘る?じゃあ自分がやればいいじゃん」
「馬鹿、俺はこれでいいんだよ」
「なんで俺だけ?」
「俺がそうしてーからだ」
「どうしても、何か残したいんだな……」
「おう、あたりめーだ、それにタトゥーは別としても、永久脱毛は普通にやる奴増えてるんだぜ」
何故そこまでして痕跡を残そうとするのか、俺には理解不能だったが、やる人が増えてると聞いてちょっと興味をひかれた。
「それほんと?」
「ああ、嘘じゃねー、けどよー、おめぇが自分でやるには無理がある」
「なんで?」
「金がかかる、チン毛だけで2、30万はみといた方がいい」
「ええ、そんなに?」
「おうよ、それを俺が出してやるっつってんだ、有り難く思え」
「う、うーん……、そうなのかな…」
自分でやったら結構金がかかると聞いて驚いたが、それをテツに出して貰えるなら……お得なように思えてくる。
テツは今から行くと言って、早速タトゥーのスタジオに電話してキャンセルすると、すぐに美容外科に電話をして今からやってくれと頼んだ。
電話の途中で『針とレーザーどっちがいい』と聞かれたが、針は痛そうだからレーザーにした。
電話を切った後、テツが色々な事を説明してくれた。
まず2週間おきに通わなきゃいけないという事。
それから、俺は毛深い方じゃないから5回やれば終わるだろうと言ったが、全部終わるまでに2ヶ月半はかかる。
その度にズル休みは出来ないと言ったら、テツは医者とは懇意にしてるから夜間もやってくれると言い、会った時に俺をクリニックに連れて行くと言った。
1回に要する時間は4、50分程度という事だ。
それからしばらく走って、町外れにあるクリニックに到着したが、なんとなく狐につままれたような気分だった。
クリニックの中に入ると、白衣を着た医師が笑顔で出迎えた。
親しげに話をしているところを見ると、テツはお得意様といった感じだが、これまでに何人ここに連れて来たのか……。
複雑な気持ちになった。
面倒な手続き無しで早速脱毛する事になったが、医者は男だからチンコを晒すのは抵抗ない。
台の上に寝ているうちにあっという間に終わったが、医者は『君は毛量が少ないから、3、4回で済むだろう』と言った。
レーザーを当ててる時はちょっとチクッとしたが、大した痛みじゃない。
40分もかからずに終了してクリニックを出た。
テツはハンドルを握りながら、今日はゆっくり出来ると言った。
タトゥーを断った時は怒鳴ったが、俺が永久脱毛を承諾したので随分機嫌が良さそうだ。
「で、何処に行くつもり?俺は夕方には帰らないとマズい」
「そうだな、何処へ行くか……、デートするか」
「なに気色悪い事言ってるんだよ……」
「はははっ、別に構わねーだろ」
「翔吾は……大丈夫なのか?」
「ああ、普通に学校に行ったぞ」
「そっか……、けど、屋敷に居なくていいわけ?」
「代わりに寺島を留守番させてる」
「そうなんだ、こんな事言ったら怒られるかもしんねーけど、テツだからいいかな」
「ん、なんだ?」
「あの人、ちょっと頼りないよな」
「ああ、まあな、ちょいと抜けてるが、ま、あれはあれでいい、大事なのは心の1番下んところだ」
「下って?」
「根っこだ、そこがぐらついてる奴は信用できねー、いざって時に腹を据えられるかどうかだ、普段上手い事言って立ち回っていても、いざって時にゃコロッと変わる奴もいるからな」
「そっかー、なるほど…」
「お前はしっかりしてるな」
「え?なにが?」
「年のわりにゃしっかりしてる」
「そうかな、俺は……親の期待に応える自信はねーし、就職だって……なんか面倒で、フリーターでもしようかなって…そう思ってる、全然ダメだよ」
「友也、うちに来い、ここんところ人材不足だからなー、待遇いいぞ、おめぇなら…親父が嫌というほど可愛がってくれるだろう」
「な、何言ってるんだよ……、待遇とか可愛がるとか…いらねーから、大体、ヤクザなんかになったら…母さん号泣するよ」
「あははっ、そうか」
気づいたら、テツとたわいもない会話を交わしていた。
初夏の日差しは熱く感じたが、滅多にない位爽やかな気分だった。
このままデートするのも悪くないな……って、そう思っていると、テツは何気にラブホテルへ向かって行く。
「あの……結局それ?」
「嫌か?」
問いかけられて一瞬迷ったが、まだ1回しか行ってないし……興味はある。
「い、いいや……別に」
決してやりたいわけじゃない、探究心が勝っているだけだと、自分自身に言い訳した。
1回経験したから、ガレージに車をとめて部屋に入るまでは、周りをキョロキョロ見回す事はなかったが、靴を脱いで部屋に入った時に部屋の中を見回していた。
前に行った部屋とは雰囲気が違う。
全体的に白と黒で統一され、暗い雰囲気の中にベッドがどーんと置いてある。
それだけならさほど変わりはないが、部屋がかなり広く、ベッドと反対側のスペースは敷物の無い床になっていて、そこに奇妙な台が2つ置いてあった。
早速傍に行って観察した。
ひとつは変わった形状をしていて腰位の高さがあり、もうひとつはブランコのような形をしていた。
そう言えば、三上が地下室にブランコがあると言っていたが、これの事か……?
それから、その横に椅子が置いてあるが、普通の椅子とは何かが違っている。
「へへー、なんだかわかるか?」
台を手で弄りながら顔を近づけてじっくり見ていると、テツが後ろからやって来た。
「わかんねーけど、エロい事をする為の台?」
「そうだ」
「わっ…」
背後からいきなり抱きしめられて驚いたが、そのまま腕を掴まれてぐいっとテツの方に向かされた。
「な、この台使って楽しもうぜ」
「あ、あの、でも……浣腸ないし、シャワ浣だけじゃ無理だよ」
「ふっ、これを見ろ」
「えっ……、持って来てたんだ」
ラブホに浣腸は売ってないし、準備が出来なきゃ無理だと思ったが、テツは内ポケットに手を突っ込んで颯爽と浣腸を取り出した。
「おう、ぬかりはねー」
「ちょっ、待って……、ぷっ、くっ、あははっ!」
見た目が格好いいだけに……ギャップが凄い。
「何が可笑しい」
「いや、だって、内ポケットから浣腸出すって……、あははっ!」
「別にいいだろ」
思わず吹き出していたが、テツが使うのは市販の浣腸だ。
前から気になってはいたが、この際聞いてみようと思った。
「い、いいけど、テツ…それ、まさか自分で買いに行くんじゃ……、ぷっ、駄目だ、想像したら笑える」
「馬鹿、下っ端が買いに行くに決まってるだろ、なんてこたぁねー、屋敷にゃ普通に置いてある、ほら、おめぇは見たから知ってるだろ」
薬局に浣腸を買いに行く姿を想像して笑っていたが、屋敷で見た光景の事を言われ、厳つい顔をしたガチムチデブな2人が交尾してる姿を思い出し……笑いがおさまっていた。
「ああ、そっか……、うん、確かに……見た」
それからすぐに準備を始めた。
テツはシャワーを浴びると言って浴室に行き、俺は浣腸を終えた後で、シャワ浣をウォシュレットでやってみる事にした。
実はもっと簡単な方法がないか、シャワ浣について密かに調査済みだった。
ウォシュレットでやるのは初めてだったが、悲しい事に湯の入れ加減とか、そういうのを体が覚えていた。
やる事を済ませて浴室に行ったら、テツは浴槽に湯を張ってのんびり浸かっている。
「シャワ浣やるのか?」
「トイレで済ませた」
「ん、ウォシュレットでか?」
シャワ浣の事を聞かれ、ちょっとマズいんじゃないかと思いながら頷いた。
「あ、うん……」
「お前、やけに慣れるのがはえーな、まさか浮気してるんじゃなかろうな」
案の定、テツは体を起こして聞いてきた。
好きで三上と会ってるわけじゃないし、シャワ浣について三上に教わったわけでもないが、とにかく誤魔化さなきゃマズい。
シャワーヘッドを握り、湯を出してシャワーを浴びながら答えた。
「そんなわけないだろ、あっ、それより、ボディソープつけたら嫌なんだよな?」
「おお……、な、友也、三上の野郎がおめぇに目をつけてたが、まさか奴がちょっかい出してるんじゃねーだろうな」
ボディソープの事を口にして話題をそらそうとしたが、無駄だった。
「なわけねーし…」
「だといいが、人のもんに手ぇだしやがったらただじゃおかねぇ、あいつにゃ何かとムカついてるからな、やきを入れてやる」
やばい……。
三上の名前を出されてギクッとしたが、手早く体を洗い終えてシャワーヘッドを戻し、直ぐに湯船に浸かってテツに抱きついた。
「怖い事言うなよ、俺は……あんたしか」
肩に顔を預け、何とかテツの気をひこうとしたら、テツは俺の背中を抱いて乗ってきた。
「おお、いいぞ、続けろ」
「あんたの……」
「なんだ、早く言え」
「チンコが好きだ」
「あのな、お前……、ったく、しょーがねー奴だな、分かったよ、ああそれで構わねー、俺のちんぽに惚れたか?」
「ああ……惚れた」
何とか誤魔化す事が出来て良かったが、本当はチンコだけじゃ済まなくなってる。
有り得ない事だが……どうしようもなく惹かれていく。
もう認めざるを得なくなってきたが、朱莉の姿を思い出す度に歯止めがかかる。
だけどこんな事は初めてで……やっぱりよく分からない。
分かるのは、今はテツと抱き合っていたいという事だ。
項を掴まれてキスされたら、意識が現実から離れていった。
湯船の中でディープキスを交わしながら体を弄り合う。
背中を撫で回して腰から尻へ手を滑らせると、テツの手が俺の尻臀をやんわりと揉んだ。
「逆上せちまうな…」
「うん……そうだな」
手を前に回して股間を弄ったら、湯の中で陰毛が手の甲を擽ったが、すぐに指先がチンコを捕らえた。
逆手でギュッと握って指の腹で亀頭を撫でると、竿がビクンと跳ねる。
「そんなに好きか……」
テツはキスを中断して、息を乱しながら聞いてきた。
「もう……このチンコは貰った、あんたが俺を所有物にするなら、俺はチンコを貰う」
唇がテツの唇に触れる寸前まで顔を近づけて宣言した。
「へへー、俺は浮気するぜ」
テツはニヤついた顔で意地悪な事を言う。
「酷いな、俺は浮気しちゃ駄目なんだろ?」
「当たり前だ」
「テツだけ……狡い」
「おお、俺はズリぃし、おめぇにひでぇ真似をした、けど、それでもお前は俺のものになった、俺のいう事を聞いておとなしく抱かれてりゃ可愛がってやる」
自分勝手で強引……俺にとってはまるで独裁者だ。
「すげーな、そこまで言う?」
「今から証明してやる」
自信たっぷりに言われて苦笑いしたが、唇を塞がれて力が抜けていった。
「ん……、ふっ……」
貪るように吸われ……ドキドキした。
堪らず吸い返したら、焦らすように唇を離して啄むように吸う。
肩を抱いて追いかけるように吸えば、また貪るように吸ってくる。
まごついてる間に舌が侵入して口蓋をなぞりあげ、むせ返るような熱気の中で行為にのめり込んでいく。
「おい、部屋に…戻るぞ」
もっと続けたかったが、耳元で囁かれたら素直に頷くしかなかった。
「あ、ああ……」
部屋に戻ったら、テツは奇妙な台に俺を拘束した。
ブランコの形をした台ではなく、もうひとつの方だ。
テツはこの台を分娩台だと言ったが、開脚した状態で革ベルトで両足を固定され、腕も肘掛けに乗せられてベルトでがっちりと固定された。
ローションは部屋の中に自販機が置いてあった。
俺は自販機を見に行きたかったが、拘束された後だったので動けない。
テツに聞いたら、アダルトグッズの自販機だと言った。
テツは早速アナルにローションを塗り込めてきたが、拘束されて恥ずかしい格好をさせられているのに、チンコは早々と勃起していた。
「もうこんなにしやがって、おめぇやっぱりドMだな」
テツは指先でアナルを弄りながら言い、竿がビクンと跳ねて我慢汁を垂らした。
「あんたが……そうしたんだろ、俺を変態にした」
「いいや違う、俺はちょいと手助けしただけだ、Mなのもアナルが感じるのも、生まれつきだ」
テツは話しながらチンコの根元に何かを巻き始めた。
「何それ?」
「ふっ、ドMのお前にゃたまらねぇ物だ」
皮でできたベルトのような物に思えたが、テツはベルトをギュッと締めあげた。
「んんぅ!」
反射的に体が強ばったが、テツはチンコにベルトを巻いたまま、アナルに指を入れてきた。
「へへー、指いくぞー」
太い指にはたっぷりとローションが塗られている。
襞を押してぬぷっと中に入り込み、縛られたチンコがピクリと跳ねた。
「う、あ……!」
「前立腺は……ここだな」
「んっ!ううんっ!」
「これをこうやって……」
「うあ……ちょっと、待っ」
「へへー、たまらねぇだろ」
「あっ……、あ…くっ!」
テツは指の腹で前立腺をグリグリ刺激してくる。
「おい、どうだ、感じるか」
「う、うわっ!い、イク…!う、ううっ!」
トコロテンを経験して以来、直ぐに射精感に襲われるようになっている。
快感が一点に集中した。
「うっ!」
前立腺から生じる刺激が、チンコを刺激してイキ果てていた。
「ハァ、ハァ、あっ、あっ……」
けど、何かおかしい。
「なんも……出ねぇ、んっ、あ、あ、ちょっと……これ……」
飛び散る筈の精液が出てこない。
「んっ!ハァハァ!くっ、あ、あ……」
何も出ないのに、射精した感覚がおさまる気配がない。
「ふっふっふっ、連続射精地獄だ、たっぷり味わえ」
テツはアナルに指を2本突っ込んで恐ろしい事を言った。
「ま、マジで?うぁ、チンコが……、ハァハァ、あ、あ、ああ!」
下腹に締め付けられるような快感が走り、射精時の快感が継続してわき起こる。
「ほーら、どうだ、へへっ」
「ハァハァ、ああ、そこ駄目…だからっ、あ、くっ!」
亀頭が苦しげにピクピク震え、淫液だけがじわりと滲みだしてきた。
堪らなくなって藻掻き、手足にベルトが食い込んだ。
勘弁してくれと繰り返し頼んだが、テツはやめようとはせずに、途中でローションを足して前立腺より奥の方まで弄った。
奥の方を弄られると、体の芯から痺れるような快感が走ったが、そうするうちにチンコが痛くなり始め、涙目になってテツにやめるように頼んだ。
「ふ、はあ、あ、もう、無理、マジで、無理……頼む……」
必死に頼んだら、テツはようやく指を抜いてくれた。
「まあ、許してやるか」
地獄から解放されて体が楽になり、安心して体の力が抜けていた。
「はっ、はあ、ああ…」
だが、ふと見ればテツはチンコを握ってアナルに入れようとしている。
「ちょっ、待って!今は……、少し休ませて」
「甘いな」
やめるように言ったが、反り返った竿が体内を抉りあげ、一瞬目の前が真っ白になった。
「う……!やめっ……、やめて!死ぬ、ほんとに死ぬー!」
「あーあ、こりゃちんぽが痛そうだ、そーら、慰めてやる」
テツはチンコを握って指の腹で亀頭を撫で回し、腰を動かして腹の中を突き上げてくる。
「あっ……!ハァハァ、ああ、ベルト……、そ、それ…とってー!ああもう、うぅっ、涙出てきたー」
テツにはちょくちょく泣かされるが、今回もまた涙が溢れ出してきた。
「友也、おめぇ泣くなよ、な、ほら」
テツは上に被さってきて、優しげな言葉とは裏腹に頭を押さえつけて唇を塞いだ。
「ふっう、んんんっ……!」
台を掴んで腹の中を抉りながらキスをする。
チンコは生殺しにされたままだ。
重なる肌に挟まれてピクピク震えているが、腹の中の疼きも酷くなる一方だった。
「う"ぐっ……!」
体内を勢いよく貫かれ、息が詰まって意識が飛びそうになったが、気絶する寸前でテツは体を起こした。
「おい、気ぃ失うんじゃねーぞ」
朦朧としていると、ほっぺたをぺちぺち叩かれた。
「はあぁ、顔……いてぇ」
下に目を向けたら、テツがチンコのベルトを外しているのが分かったが、ベルトが外された瞬間……、堰き止められた精液がびゅっと勢いよく飛び出した。
「ぅうう!」
白濁した体液は有り得ないくらい飛んで、顔に飛び散ってきた。
「お前、顔射好きだな、2度目だぞ」
テツは俺を見てニヤニヤしていたが、快感に痺れた体がビクビク痙攣して、もうどうでもいい気分だった。
「か、体が、俺……、駄目だ、き、気持ちいい」
スポットライトに照らされて、斑に浮かび上がる仄暗い天井をぼんやりと見つめていた。
「顔が汚れちまったな」
テツはまた被さってきたが、顔についた精液を手で拭ってくれる。
たった今、嫌というほど虐められたが……優しくされたら堪らなくなる。
「台は……もういい」
「よし、ベッドだ」
テツは拘束を外し、俺を台からおろしてベッドに連れて行ってくれた。
ベッドに上がったらすぐに体を重ね、正上位で疼く箇所を激しく突き上げてきた。
「んああっ!はっ、あっ、ああ……!」
再び快楽責めにあってドライイキしていたが、テツも昂っていたのか、さほど経たないうちに深く突いて止まり、耳元で息を荒げていき果てていた。
「はあ、これがたまらねぇんだよな」
脈動する竿を感じながら被さる背中を抱き締めると、テツも俺の体をギュッと抱き締めてきた。
何もかも忘れられる瞬間だ。
テツとひとつになって、与えられる快楽だけを貪った。
体が落ち着きを取り戻したら、テツは俺に腕枕をしてきたが、抗わずに身を任せた。
寄り添ってたわいもない会話をポツリポツリと交わし、2人だけの穏やかな時間を満喫した。
暫く経ってシャワーを浴び、ラブホを出た。
車に乗り込むと、テツは俺の家に向かって車を走らせたが、夕方までにはまだ少し時間がある。
「腹減ったな……」
「おお、そうだったな、よし何か食いに行こう」
昼飯抜きだったので腹が減って無意識に呟いたら、テツは焼肉屋に連れて行ってくれた。
夕方を前にした中途半端な時刻だし、店は空いていて人目を気にする必要はない。
テツは焼けた肉を小皿に取り分けてくれたりしたが、多分翔吾の面倒をみてきたから、そんな事をしてくれるんだと、勝手にそう思っていた。
口には絶対出さないが、俺はちょっとしたデート気分を味わった。
帰り際、テツは家の前まで送ると言ったが、夕方は人通りも増える。
「ごめん、有り難いけど……、やっぱ誰かに見られたらマズいし」
「そうか……わかった」
来た時は家に上がろうとしたくらいだ。
また文句を言うかと思ったが、すんなりといつもの場所まで送ってくれた。
車が定位置に止まり、何気なく車から降りようとしてやめた。
「焼肉まで奢って貰って……なんか悪いな、ありがとう」
ちょっと照れ臭かったが、お礼を言わなきゃ気が済まない。
「そんなこたぁいいんだよ、気にするな、それより若の事なんだが……」
テツは満更でもない顔をしてニヤリと笑ったが、不意に翔吾の事を持ち出してきた。
「翔吾がどうかした?」
「もし若が何か勘ぐるような事を言ったら、これまで通りとぼけて誤魔化してくれ」
「そうするつもりだけど…、ひょっとして何か言われたとか?」
「いや、そうじゃねー」
翔吾にバレたんじゃないかと心配になったが、テツは軽く流してそれ以上何も言わなかった。
「そっか、じゃまた連絡待ってる」
たまたま言っただけか……。
そう思って次の約束を口にした。
「お前から言うとはな、へへっ、いよいよ俺にハマってきたな」
「え、あ、いや…、そうじゃなく……その」
なんとなく言った事だったが、突っ込まれて慌てた。
「冗談だ、また連絡する、いいか、おとなしく待ってろ、浮気するなよ」
テツは楽しげに笑い、次の約束を口にして念押しする。
「それはテツの方だろ、俺はそんなのねーし」
俺は逆に突っ込んで誤魔化した。
「そうか、なら安心だ」
テツは俺の言葉を信じて頷いた。
「それじゃ、また」
ひとこと言って車を降りたら、振り返らずに家に向かって歩いたが、俺が脇道に入るまでテツは車を止めている。
脇道に入り、走り去る車の音が聞こえてきたが……堪らなくなって遠ざかる気配に向けて言った。
「……ごめん」
テツがどうであれ、嘘をついたのは事実だからだ。
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