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BL長編snatch(完結)ヤクザと高校生
Snatch105Best partner
ここからは続編となります。
(続編=緩い日常w)
現在のキャラ設定。
引き続き友也目線で進みます。

◇テツ(霧島組、元若頭補佐、事実上乳母、現在幹部)&友也(元は普通の高校生)=メインCP。
◇カオリ=テツが若い時に遊んだ元ソープ嬢。
◇水野=浮島組幹部。
◇水野&カオリ=結婚済み。
◇火野さん=霧島組組員、中堅よりやや上、姉貴の旦那、友也の義兄、チンチラモフモフな猫、龍王丸を可愛がっている。
剣術の達人、ストイックな堅物でノーマルな人。
◇寺島=霧島組組員、中堅、テツの部下的立場。
短毛チワワな豆太郎を可愛がっている。
◇竜治=浮島組幹部。
◇三上=生前は霧島組幹部、今は霊魂。
◇翔吾=霧島組若頭、友也の親友でタメ年。
◇親父さん=霧島組組長。
◇亀谷=浮島組幹部。
◇堀江=友也の同級生。
◇日向さん=浮島組若頭。
◇ミノル=ソープ花車で一緒にバイトした、友也とタメ年な親友。
◇黒木=霧島組、現若頭補佐。
◇ケビン=霧島組、下っ端(親父さんに個人的に気に入られている為、やや優遇されている)、英と日系のハーフだが、金髪青い目のイケメン。
元アイドル事務所所属、脱落して親父さんが拾ってきた。
◇ケンジ=チャラい雰囲気の下っ端、元浮島組のバイト人、腕っ節はたつ。
霧島組の噂を聞いて仲間になりたいと志願してきた。
◇イブキ=元アイドル事務所所属、脱落して親父さんが拾った。
下っ端(親父さんに個人的に気に入られていた為、やや優遇されている)。
◇姉貴=友也の実姉。

゚・*:.。..。.:+・゚゚・*:.。..。.:+・゚゚・*:.。..。.:+・゚゚・*:.。..。.:+・゚








◇◇◇

バズーカは仕方がないと諦めてくれたが、テツはまた我儘を言い出した。

寺島がいるから嫌だと言ったが、当然言う事を聞かない。
仕方なく承諾した。

寺島は先に寝たので、シャワーを浴びるついでに用意を済ませた。
テツは俺と入れ替わってシャワーを浴びに行ったが、寺島はイビキをかいて寝ている。
目を覚ます心配はなさそうだ。

ソファーをくっつけてるから、横は背もたれでガードされてるし、両端には肘掛けがあるから、豆太郎が無茶をしてジャンプでもしない限り、落ちる心配もない。



少ししてテツがベッドに上がってきたが、龍王丸が俺の横に陣取っている。
テツはお構い無しに反対側から布団に潜り込んできた。
俺もテツも腰タオルで浴室から戻ったから、互いに全裸だ。

「うっ……重っ」

勢いよくのしかかられ、重みで息が詰まった。

「ニャー」

龍王丸が不機嫌そうな顔でテツを睨んでいる。

「また引っ掻かれるよ」

忠告したら、首に唇が触れてゾクッとした。

「なもん、かまうか……」

荒らげた息遣いがかかり、鼓動が高鳴ってくる。

「元気だな、真夜中なのに」

昂りを見透かされるのが嫌で喋り続けた。

「あたりめぇだ、勃たなくなったら終わりだからな」

胸に唇が触れ、体の奥から熱気が込み上げてきた。

「次は……いつ?昼に出るのか……夜か……」

その気なんかなかった筈だが、抑えようとしても息が乱れる。

「夕方だ」

テツは質問に答えて乳首をカリッと甘噛みした。

「いっ……!」

体がバネのように反応し、ビクンと震えた。

「ピアスの穴は塞がったが、相変わらず感度抜群だな〜」

舌先が動き回り、下腹部に熱が集まってくる。

「っ……、んんっ……」

河神にやられた後、一時異様に感じるようになっていたが、あれは落ち着いた。
それでも元から感じやすいから、舌先でグリグリやられたら堪らない。

「こっちもだ」

無骨な手が熱く勃ちあがる陰茎を掴み、カリ首を引っ掛けるように扱く。

「うっ……うくっ」

竿がビクビク脈打ち、先走りをトロリと零した。

「おめぇはよー、抱かれる為に生まれてきたようなもんだ、みろ、こんなに濡らして……、なのによー、俺を掘った」

テツは不満げに言うが、それはおかしい。

「あんたも……OKしただろ?」

「ああ、しちまった、だからよー、もう終わりだ」

何が終わりなのか知らないが、手はしっかり動かしている。

「なんだよ……終わりって……、酷くね?」

やられっぱなしは悔しいから、チンコをギュッと握り返してやった。

「う……、やりやがったな」

テツは怯んで手を離したが、さっきから龍王丸が狙っている。

「ニャウーッ!」

龍王丸はテツの腰の辺りにいたが、無防備な肌に向かって鋭い爪を振り下ろした。

「痛てぇ〜!ケツに突き刺さった」

テツはガクッと前のめりになり、俺の上に倒れ込んだ。

「へへっ、参ったか」

嫌々掘られたような事を言うから、龍王丸が俺の代わりにやってくれた。

「くう〜、クソ〜、ケツに爪なら……ケツにナニだ〜!待ってろよ、このっ」

テツは勇んで起き上がり、さっさと準備を始めた。

「なんだよ〜いきなりかよ」

「いいから、足を曲げてな」

ローションを塗り込んでいったが、どうもやっぱり引っかかる。

「俺は……あんたを抱くからな」

リバOKだと言った筈だ。

「聞こえねー、なんにも聞こえねーぞ」

なのに、すっとぼけてナニをあてがってくる。

もっと追求したかったが、反った竿は反則だ……。

「ううっ……!」

正常位だから急所をまともに突き上げ、淫靡な痺れが湧き出してくる。

「オラ、いっくぜ〜」

体が強ばったが、テツはお構い無しだ。
膝をついてリズミカルに腰を動かし始めた。

「あっ、あっ、ちょっ、ちょっ、待っ、待っ」

突かれる度に自然と声が漏れる。

「へへっ、なんだよそりゃ、新手のラップか?」

確かにラップだ。

「ぷっ……、くっ、うう〜」

つい吹きそうになったが、急所を叩かれちゃ笑う余裕なんかなかった。

「う、あっ、わっ、あっ、あっ、あっ」

結局、ラップ調になっていた。

「おめぇ、もれなくメスイキするようになったな、へへっ、どうだ、たまらねぇだろ、ラップでメスイキだ、なははっ!」

悔しいが……当たりだ。
やむを得ず色んな経験をする羽目になり、体の感度は更に上がっている。

「たっ、タイ、厶っ、うっ、あっ、あっ」

連打は勘弁して欲しかったが、テツはまた俺をおちょくって意地悪する。

「いいぞ、なかなか上手いじゃねーか、ラップデビュー出来そうだな」

途切れなく快感が襲ってきて、あっという間に我慢出来なくなった。

「ううーっ、テツ!」

起き上がってテツの肩を掴んだ。

「お、おい……!倒れるじゃねーか」

テツは前に倒れそうになったが、咄嗟に俺を抱きとめた。

「ちょい待て、よっと……」

そのまま足を崩して座位の体勢をとったが、毎度毎度……性懲りも無く意地悪する癖に、いざって時はちゃんと抱きとめてくれる。

こんな調子だから……憎めない。

「テツ、あんた……ムカつく、でもズリぃ、初めっからそうだ、だから俺……あんたに」

思いっきり抱きついて、思いつく事を口走った。

「へへっ、なあ友也」

「な、なんだよ」

「どっちかがくたばるまで……ずっと一緒に居ようぜ、こうして抱き合ってっと、気分がいい、だからよー、取り敢えず……このままだ」

テツは笑って言う。

「そうする……、マジだからな」

そんなの……言うまでもない事だ。

「じゃ、ぼちぼちイクぞ」

大きな手が両側からケツを掴み、激しく突いてきた。
手が離れ、倒れそうになって後ろに手をついたら、先端がモロ急所を叩いてくる。

「ふあっ、も、もう……う"ぅっ……!」

張り詰めた竿がビクビク脈打って、精液が飛び散った。

「おお、よーし、じゃ、いっちまうぞ〜」

テツは一度竿を引いて深く突き上げ、そのまま動きを止めた。

「っう! はあ、テ、テツ、こっちに……」

快感でむせ返り、堪らなくなって手を伸ばした。

「おお……」

のしかかる重みに息が詰まったが、無我夢中で汗ばんだ体を抱き締めた。
吐き出した体液がヌルヌル滑り、オス臭い匂いに塗れながら逞しい腕に抱かれる。

脈動を感じたら、永遠にこのまま繋がっていたいと……いつもそう思う。







翌日、寺島は先に部屋を出て行った。

テツはその後で出かけて行ったが、俺はバイトの時間まで好きに過ごした。

夕方迎えに来たのはケビンとイブキだったが、イブキは話がしたいと言って後部座席に座ってきた。

「ねー友也君」

「ん?」

「俺さ〜、寺島の兄貴は諦めた」

「あ、そうなんだ……」

いきなり寺島の話題がくるから焦ったが、割り切ったような事を言う。

「付き合ってた人も〜別れた」

イブキは暴露したが、イブキが付き合ってたマネージャーというのは、俺は全然知らない奴だ。

「あ〜、そうなんだ」

返す言葉がない……。

「へへ〜ん、でさ〜、今ケンジと付き合ってる」

「ええっ……」

だが、ちょっとびっくりした。

「ふふっ、あのね〜、ケンジ、背中にタトゥー入ってるんだ」

という事は……ケンジと寝た……かもしれない。

「へえ、そうなんだ、で、タトゥーはどんなの?」

まぁでも、別に大した事じゃないし、俺はタトゥーが気になった。

「髑髏、呪われそうな絵だよ〜」

「そっかー、髑髏か……」

タトゥーだからきっと洋風なんだろう。

「友也君の鷹、また見たいな〜」

「えっ、ああ、機会があれば……」

「今、だめ?」

「えっ? い、今はちょっと……」

イブキは鷹を見たがったが、いくら車の中でも、肌を露出して墨を見せるのは抵抗がある。
適当にはぐらかしたら、イブキは再びケンジの話をし始めた。
どこに行ったとかそんな話だが、同じ立場だし、今度は長続きしそうな気がする。



2人に送って貰い、何事もなく店に到着した。
テツは竜治の事を用心しているが、もし2人に護衛された状態で襲撃してきたら……笑える。

店に入ったら、すぐにミノルと会って一緒に仕事を開始したが、今日も三上が憑依していた。
割烹着と三角巾を身につけて掃除をしていると、ハルさんがやって来て動画を撮り始めた。
本人はこっそり撮ってるつもりらしいが、俺は気づいていた。

「なあオイ、あいつ……また動画撮ってるぜ」

三上も気づいたらしく、小声で言ってきた。

「まあ、個人で楽しむなら、別にいんじゃないですか」

実害はなさそうだから、別にいい。

「楽しむって……、あいつ、マジでおかずにする気か? クックッ……、変わってるよな〜、あんな執事みてぇなナリしてよ〜、ビシッと礼儀正しい癖に……、あいつも変態だ、コアな部類だがな、なははっ」

三上は面白がって笑ったが、今はやる事をさっさと済ませたい。

聞き流してモップを滑らせた。


「ハルさん、やだぁもう〜、また隠し撮り?」

すると、マリアが控え室から出てきてハルさんの傍へ行った。

「何を言ってる、私がそんな事をするわけがないだろう」

ハルさんは何食わぬ顔でスマホをポケットにしまい込み、メガネのフレームを片手でくいっと引き上げてとぼけた。

「ハルさ〜ん、あたしの目は誤魔化せないわよ、ふふっ、ね、そんな物を撮るって事は欲求不満なんじゃない? マネージャーって疲れるから〜、たまにはあたしが癒してあ げ る」

マリアは毒気を撒き散らしながら、ハルさんに接近した。

「な、なにを言ってるんだ……、私はマネージャーだよ、君達を束ねる立場だ、君は従業員、私はマネージャー、立場を弁えなさい」

ハルさんは壁際に立っているが、正面から迫るマリアに手の平を向け、背中を壁につけて逃げ腰だ。

「またまた〜、堅苦しい事は言いっ子なし〜、ね〜、たまにはいいじゃない」

マリアは威圧感たっぷりにハルさんを追い詰める。

「マリア、君は……、あ、頭を冷やしなさい」

ハルさんは逃げだそうとしているが、マリアはハルさんを両腕で包み込み、ゆっくりと顔を近づけた。

「うお……、エグイな、おい……」

また三上がやってきたが、顔を顰めるわりには、しっかりと成り行きを見ている。

「なっ、 なにを……!よせ、私はマネージャーだ、離せ!」

ハルさんは藻掻きまくり、横にズレてなんとかマリアの腕から脱出した。

「キャハハッ〜、貰ったぁ〜!」

マリアはパッと離れたが、手にスマホを持ってはしゃいでいる。

「あっ、コラ……! 返しなさい……、返すんだ」

ハルさんは胸ポケットを探り、慌ててマリアを追いかけた。

「あいつ、相当慣れてるな」

三上は感心したように言ったが、確かにマリアのスリの腕は神業だ。

けれど、俺は2人の戯れあいを横目に見ながら、黙々と掃除を続けた。

シャギーソルジャーは花車とは違う。
細かい事を気にしてるようじゃ、この店じゃやってけない。









仕事場ではマリアに絡まれたり、堀江が来たりしたが、もう腹を括っている。
小さな諍いや困り事をこなしつつ、同じような毎日が過ぎていった。

気づけばとっくの昔に21になっていたが、テツは相変わらず、昼夜関係なく出かけて行く。

カオリとは近所づきあいをしている。
一緒に料理を作ったりするうちに、段々姉貴みたいな感覚になってきた。

実の姉貴はというと、あれから赤ん坊が無事に生まれ、ちょうどハイハイし始めたところらしい。

俺は赤ん坊が生まれた時、忙しくて病院へは行けなかった……というのは口実で、実は行かなかった。
病院へ行けば、母さんと顔を合わせる羽目になるからだ。

子供は男の子だったらしく、名前は蒼丞。
古風な名前だが、火野さんは自分の名前が源三郎だし、水垢離や鍛錬をするような人だ。
古臭い名前をつけるんじゃないかと心配していた。
蒼丞ならおかしくはないと思う。

姉貴は退院してそのまま実家へ行き、ずっと向こうで過ごしている。
俺は行ける筈がないから、火野さんから話を聞くだけだが、母さんは初孫にメロメロになってるようだ。
火野さんは母さんには気に入られてるし、夫だから当然実家に通っているが、火野さんが言うには、父さんが祝いをしてやると言ったらしい。
あんな父さんでも、やっぱり孫は可愛いときた。

火野さんの事を見下してる癖に……薄い笑みが零れる。

テツは火野さんに祝い金を渡したようだが、俺はまだ何も渡してない。
弟だし、金を渡すのは気が引けるが、かといって何がいいか悩む。

姉貴はあと3日したらマンションに戻ってくる。
赤ん坊と初対面は何気にドキドキするが、それよりもまず祝いだ。

今日はバイトが休みだから、何か買いに行かなきゃ……そう思いながらソファーでゴロゴロしている。

「ニャ〜ン」

龍王丸はまだ預かっているが、最近ようやくテツを攻撃しなくなった。

「あ〜あ、龍王丸〜、なにがいい?」

俺の脇で寝転がってるから、腹を撫でながら聞いてみた。

「ニャッ……ニャッ……」

喉を鳴らし、短く鳴いて甘えている。

「えへへ……」

可愛いから、もうちょいまったりする事にした。

「あとちょっとか〜、寂しいな〜」

返却しても、隣だからいつでも会える。
だけど、常に傍にいる訳じゃない。
元々ひとりだったんだから……とは思うが、居るのが当たり前になってしまった。

「猫、飼おうかな〜」

ぼんやりと考えていると、ドアが開いてテツが帰ってきた。

「おめぇ、姉ちゃんの祝い、まだ買ってねーんだろ?」

上着を翻してやってきたが、帰った早々聞いてくる。

「あ、うん……」

グラサンかけたまんまだが、かがみ込んでるせいでズレている。

「連れてってやる、用意しろ」

猫の事を相談したかったが、取り敢えず用意する事にした。




車に乗ったらテツはやけに楽しそうだ。

「なあ、蒼丞よ〜、写真見せて貰ったんだがな」

「あ、ズリぃ」

「お前、火野に言わなかったのか?」

「うん、忘れてた……」

父さんの話を聞いて、そこまで頭が回らなくなっていた。
母さんの事もだ。
火野さんの話を聞く度に、2人が孫を前に浮かれる様子が目に浮かび、胸がズキンと痛む。

正直、写真どころじゃなかった。

「火野も見せてやりゃいいのによ、気が利かねぇ奴だ」

テツは火野さんを責めたが、何も返す言葉がない。

「まあーいいじゃねぇか、どうせこれから先、嫌というほど見られるんだしよ」

黙っていると、テツが慰めるように言った。

「うん……」

「自分は息子なのにって……、そう思うか?」

力なく頷いたら、ギクッとするような事を聞いてくる。

「いや、別に……」

つい誤魔化したが、テツが言った事は図星だ。
俺はこの嫌な気持ちがなんなのか、自分でも分からずにいたが、たった今わかった。
あれだけ息巻いて、自分から縁を切った筈なのに……息子として嫉妬している。

「ならいいが、あのな、蒼丞だが……、最初は猿だった、今は……イケてる方じゃねぇか? ま、両方あれだからな、お前にも似てるぞ」

「え、俺に?」

「そりゃそうだ、伯父なら似る事もあるだろ」

「あ、そっか……」

俺に似てる俺の甥……。
と言っても、俺にはなんの実感もないし、親戚付き合いもなかった。
赤ん坊はまるっきり未知の生命体だ。


暫く走ったところで、テツはある店の駐車場に入った。
看板を見てみたら、赤ん坊〜子供用品を扱う店らしい。

「こんなとこ、よく知ってたな」

「そりゃ通りがかりに何気なく見るだろ、そういやここにあったなと思ってよ、よし、行くぜ」

テツは車をとめてさっさと行こうとするが、激しく戸惑った。

「ちょっと待って、俺達この格好だし……、こんな店入りにくいよ」

俺は誂えたスーツを着てきたし、テツはいつも通りの格好だ。
こんなヤクザみたいな服装の男2人が……クマの絵がついた看板の店に……入れるわけがない。

「な事関係あるか、客は客だ、ほら、降りろ」

だが、テツはやっぱり平常運転だ。
まったく気にしてない。

「けどさ、他行こう、な? ここじゃなくてもいくらでもあるから」

なにもガキ専門店じゃなくていいと思う。

「お前な……、グズグズするな、ったくよー、引きずりおろすぞ」

行きたくないが、気を変えてくれそうにない。

「わかった……」

仕方なく車から降りたら、早速親子連れに出くわした。
店から出てきた母親と子供だ。

テツは見もせずに入口に向かったが、母親は俺達をチラ見してハッとした顔をすると、小さな子供の手を引いて足早に車へ向かう。

なにも悪い事はしてないが、申し訳ない気持ちになった。

入口近くに来たら、店のガラスには動物の絵が描かれていた。

恐ろしく敷居が高い……。
なのに、テツは普通に入って行った。
後に続いて中に入ったら、レジの店員がいらっしゃいませーと言ったが、俺達を見て顔をひきつらせた。

場違い感が重圧のように押し寄せる。

店内にはチラホラ客がいたが、若い夫婦やさっき出くわしたのと同じような、幼子を連れた親子連れだ。
広々とした店内は棚で区切られているが、テツの後について店の端から歩いて行ったら、ベビーカーに押し車、ベビーベッド……色んな物が置かれている。

「おい、何にするんだ」

「わかんね、決めてない……」

商品をゆっくり見る気持ちにはなれず、辺りを見回しながら歩いていると、奥の方で若い夫婦が俺達に気づいて2度見した。
俺がそいつらを見たら、さっと目を逸らして立ち去った。

これじゃまるで……針のむしろだ。

できるだけ目立たないように、それとなく誰も居ない通路へ歩いて行った。
両側には棚があるからここなら安心だ。

「おー、これで背負うのか、へへっ、お前、これ使え」

ホッとしていると、テツが商品を手に取って見ている。

「ん? なにそれ」

「こりゃなかなかいいぞ、これ買ってやるからよ、ガキをもりしろ」

覗き込んで手にした物を見てみたら、パッケージに赤ん坊を背負った母親の写真がついていた。

「おんぶするやつじゃん、なんで俺なんだよ、姉貴がいるのに」

「友也ぁ、遠慮するな、可愛い甥っ子をおぶってやりてぇだろ? その気持ちはよーく分かる、これは俺の奢りだ」

テツはまた訳の分からない事を言い出した。

「いらねぇって」

「お前な、これはいいから早く決めろ」

本気で買うつもりらしいが、おんぶ紐なんか必要ない。

「いや、だからさ、それいらねぇ……!かして」

「へへー、そうはいくか、これをつけるんだ、見ろ、前から見たら縛りじゃねーか、このペケになってるのがなんとも言えねーな」

どうも変だと思ったら、やっぱりそういう事だ。

「あのさ〜、こんなもんでなに想像してんだよ、いいからかしてって!」

そんなものを変態プレイに利用されちゃ堪らない。

「なははっ、取れるもんなら取ってみやがれ〜、あははっ!」

意地でも奪ってやろうとしたら、揶揄うように商品を持って手を上げる。

「くう〜、もう馬鹿じゃね?かせって、この〜」

しがみついて腕を引っ張ったが、背が高いから届かない。
ジャンプして何とか掴もうとしたら、横から目線を感じた。

「あ……」

通路の端に親子連れが立っている。

「ママ〜、楽しそう、遊んでるの?」

「あっ、こら……、こっちに来なさい」

4、5歳位の男の子がはしゃぐように母親に聞いたが、母親は男の子の手を引っ張ってそそくさと姿を消した。

今のをどう思われたのか……想像すらつかない。

「マジかよ……」

「な、諦めろ、ほら、はえーとこ何か決めろ」

軽くダメージを食らっていると、テツが言ってきた。

「あんた……、メンタルつえーな」

「あたりめぇだ、そんなもん気にしてるようじゃ、こんな稼業やってられっかよ、それより真面目に考えろ」

「ああ、まあー、うん……」

確かにそうだが、こんな店にわざわざやってくる神経を疑う。

だけど、これ以上ここで揉み合うのはマズい。
下手をしたら通報される。

諦めて真面目に探す事にした。

とは言っても、必要な物は既に買い揃えてあるだろうし、ひとまず店を回ってみる事にしたが、俺はもう人目を気にするのはやめた。
テツが言うように、客だと開き直ればいい。

ただ、色々見て歩いたが、これと言ってピンとくる物がない。

「どうすんだよ、もうなんでもいいじゃねーか、気持ちだ、気持ち」

ひと通り見終わる頃にテツが投げやりに言ってきたが、通路の一番奥を見たら、他とはちょっと雰囲気が違う物が置いてある。

「ん……?」

何かと思って近くに行ってみると、円盤型の掃除機だった。

「こりゃあれだな、勝手に掃除してくれるやつだろ」

テツが言った通り、ロボット掃除機だが……。
姉貴は実家じゃ相当楽をしてると思う。
マンションに戻ってきたら途端にひとりだ。
俺は昼間は暇だし、姉貴を手伝うつもりでいるが、ずっとついてるわけじゃない。

「これに決めた」

このロボット掃除機はきっと役立つ。

「これにするのか、結構な値段だが、いいのか?」

価格は7万位だったが、金は貯めてるから大丈夫だ。

「うん、俺、金はそんなに使わねーし、これさ、俺のも買う」

気に入ったから、自分のも買う事にした。

「お前も買うのか、洗濯も掃除も……動かずに済むな、太るぜ、筋トレしろ、親父んとこに連れてってやる」

テツは何かと言えばすぐ筋トレだ。

「バイトしてるし、料理やってるじゃん」

俺は鍛えられた肉体は好きだが、自分が鍛えようとは思わない。
でもそれだけじゃなく、テツと一緒に親父さんちに行ったら、翔吾やその他諸々な人達と顔をあわせる事になり……無駄に気を使う。

「おう、まあな……、じゃ、決まりだな」


掃除機を2台買って帰途についたが、姉貴のはプレゼント用にラッピングして貰った。


「へへー、いい物を手に入れたぞ、たまにゃああいう店にも行ってみるもんだな」

テツはハンドルを片手で握り、くわえタバコでご満悦な様子だ。

「いや、用がねーと、行かねーだろ」

あんな店に行く機会は、多分この先ない。

「まあーいいじゃねぇか、無事姉ちゃんのプレゼントを買えたんだしよ、俺は日が暮れたら出るが、それまではのんびりできる」

「そうなんだ、じゃあ、何か作るよ」

もう昼を過ぎてるが、一緒にいられると聞いて嬉しくなり、何か作ろうと思った。

「いや、何か食いに行こう、そうだな、フレンチ、イタリアン、それとも焼肉か」

でもテツが誘ってきた。

「じゃ、ラーメン」

折角だから乗る事にした。

「ラーメン? デザートねぇぞ、お前、ケーキやらアイスやら食いてぇだろ」

「いや、別にラーメンだけでいい」

「じゃあれだ、帰りがけに買おう、確か……道沿いにケーキ屋があった」

有り難い事を言ってくれるが、言う事が矛盾している。

「ふっ……」

太ると言っておきながら、ケーキは笑える。

「なんだ、なにニヤついてる」

けど、せっかく機嫌よく言ってくれてるのに、そんな事はどうでもいい事だ。

「いいや、なんでもない」


ラーメン屋に寄り、脂っこいやつを腹一杯食べて満足した。
次にケーキ屋に寄ってチョコレートケーキを買って貰い、夕方には部屋に戻って来た。


プレゼントはサイドボードの上に置き、早速自分のを出して床に置いてみた。

「おお〜、動いたぞ」

掃除機は音を立てて自走し始め、テツと一緒に働きっぷりを観察した。

「あっ、ぶつかった」

初っ端からソファーにぶつかったが、コツンとぶち当たってバックし、方向を変えて進んで行く。

「ほお〜、賢いな」

テツは感心しているが、龍王丸が掃除機の向こう側から歩いて来た。

「フゥウウーッ……」

唸り声をあげて背中を丸めている。

「あ、なんか……やばくね?」

最近はめっきり見なくなった、臨戦態勢のポーズだ。

「ニャウーッ!」

思った通り、掃除機に猫パンチをおみまいした。

「おい、喧嘩ぁ売ってるぞ、なははっ!」

テツは笑っているが、掃除機は龍王丸に向かって行った。

「シャアァァァァーッ!ニャウ〜ゥ……」

龍王丸は体を斜めにすると、ぴょんぴょんと連続で横っ飛びした。
きっと、生き物と勘違いしてるんだろう。
毛を逆立てて背中を丸めているが、怖いのか、攻撃出来ずにいる。

「あははっ……、龍、ビビってる」

目をつり上げて必死に対抗するのが笑えたが、掃除機はくるっと向きを変えて龍王丸から離れた。

「フゥウウ〜……」

龍王丸の興奮は若干おさまったが、唸り声を漏らして掃除機について行く。

「よーし、龍そのままいけ、猫パンチだ、やっちまえ!」

テツはけしかけているが、最近は躾と称した強制抱っこもやらなくなった。
仲良く……とまではいかないが、無難に過ごすようになっている。
こんな風にけしかけるテツを見るのも、後少しだ。
そう思ったら、ふと保留した相談事を思い出した。

「なあテツ」

「ん……?」

「姉貴が帰ってきたら、龍王丸返すんだよな?」

「おお、そのつもりだが」

「俺……、猫飼いてぇ」

龍王丸が居なくなったら、寂しすぎる。

「あぁ"? 猫を飼うのか?」

テツは俺の方へ向き直ったが、あんまりいい顔をしなかった。

「いいだろ? 龍王丸居なくなったら……寂しいし」

「お前、寂しいって……、ガキじゃあるまいし」

「俺が世話するから、な? いいよな?」

「あのよ〜、って〜事は、子猫だろ、やめとけ、めんどくせぇ」

新しく飼うのは嫌なようだ。

「大丈夫だ、ちゃんと面倒みる」

どうせ世話をするのは俺だし、構わないと思う。

「面倒みるっつってもよ〜、うーん……」

テツはソファーの背もたれに寄りかかり、難しい顔をする。

「なあ、いい? いいよな? 」

兎に角頼み込んだ。

「龍王丸をこのまま置いとけ、新しい猫はいらねぇ、折角慣れたのによ、また別の猫とか……うんざりだ」

テツは龍王丸を見て言った。

「フウゥゥ〜……」

龍王丸は掃除機から一定の距離を保ち、唸り声を漏らして掃除機を尾行している。
確かに……今でこそこうやって眺めていられるが、あれだけ引っ掻かれたらうんざりするのもわかる。

新しく飼うのは諦めるしかない。

「そっか……、わかった、だったらいい、その代わり……火野さんがいいって言うまで龍王丸を置いといていい?」

火野さんに預かり延長を頼む事にした。

「ああ、構わねー」

俺は新しい猫が欲しかったわけじゃないし……これでいい。

「さてと、じゃ、テストだ」

テツは足元に置いた袋をとった。

「ん、テスト?」

中にはおんぶ紐が入っているが、そっちは俺が掃除機を買った後で、テツが別に買っていた。

「ほら、つけてみろ」

テツはおんぶ紐を俺の方へ差し出して言ったが、テストとはつまり……そういう事らしい。

「やだね、誰がつけるか」

そんな物をいかがわしい事に使用しちゃダメだ。

「へへー、それが……そうはいかねぇんだよな〜」

テツは悪魔顔でニヤつき、おんぶ紐を持って立ち上がった。

「ちょっ……またかよ、冗談じゃねー!」

久々に出た悪魔顔だが、この顔をする時はタチが悪い。
床に座っていたが、すかさず逃げる体勢をとって隣の部屋目掛けてダッシュした。

「待てコラァ〜!懲りねぇ奴だ、どこに逃げるってんだ? なはははっ!」

高笑いが危機感を煽ったが、俺のようなズボラな人間には……変態筋肉悪魔に打ち勝つ術はない。

「うわっ!ちょっと、やめろよ」

呆気なく、とっ捕まってしまった。

「オラ、手を通すんだよ!」

何故おんぶ紐をつけなきゃいけないのか、理不尽にも程がある。

「ちょっと〜、あんま引っ張ったら上着破ける、大体、意味わかんね〜!」

「っしゃー!思いっきし締めてやる」

ぎゅうぎゅう締めるから、胸が苦しい。

「う"〜っ、締めすぎぃ〜」

「よし、出来たぞ」

「うう……さいて〜」

肩を落として床に膝をついたら、テツは真ん前に立って俺を見下ろした。

「ふっ……、やっぱりなんとも言えねーな」

「はあ〜……」

こういう事は散々やられてきたが、何がおもしろいんだか……。

「スーツにおんぶ紐か、なるほどな〜」

テツは感心したように言う。

「つーかさ、苦しいんっすけど〜、もういいだろ、外すからな」

おんぶ紐に手をかけたら、ニヤニヤしながら後ろへ回り込んだ。

「へへー、まあそう言うな、なんなら全裸でやるか?」

両肩を掴み、顔を近づけて馬鹿な事を言う。

「何言ってんだよ……、テストはもう済んだ、納得しただろ」

「いーや、まだ終わってねー」

首に息がかかり、ざらつく髭が肌を擦った。

「ちょっと……、まさか、マジで欲情してるんじゃねーよな?」

「いいじゃねーか、へへー」

両手を上着の中に突っ込んできた。

「う"っ……」

無理矢理手を入れるから、紐が余計に体を締め付ける。

「キツイって……、つか、なんなんだよもう……」

「ちょいとやりずれぇが……見つけたぞ」

指先がシャツの上から乳首をカリカリ引っ掻く。

「この〜変態っ……」

「と言いつつ、勃ってんじゃねーの」

ヤバい……。
こんな意味不明な事をされてるのに、首にキスされたら……気分が昂ってくる。

「うう〜、ああ〜、もうやだ〜」

感じる自分が嫌になる。

「どれどれ、下はどうだ?」

テツは片手を抜いて股間を握ってきた。

「ちょっと〜、やめろよ」

抗ってはみたが、力がどんどん抜けていく。

「へへっ、ビクついてっぞ、可哀相によ〜、解放してやらなきゃな」

テツはベルトを抜いてズボンをズラしたが、俺はもう抵抗しなかった。

「なあ、これ外していいだろ?おんぶ紐が邪魔だ」

「やる気になったか?」

「ああ」

その気にさせたのはテツだ。

「わかった、外せ」


許可を貰って外したら、浴室でやろうと言い出した。

やることをやって浴室に入ったら、テツは湯に浸かっていたが、洗ってやると言ってザバッと勢いよく出てきた。
腕に抱かれ、茹で上がった肌が密着した。
濡れた肌に気分が高まったが、体から立ち上る湯気が鼻に入って……くしゃみが出そうになった。

「ふあっ……」

けど、ムードが壊れるから口を塞いだ。

「ふっ、我慢したな」

テツはニヤリと笑った。

「あ、うん……」

「へへっ、ほら」

ニヤついた顔でチンコを擦り付けてくる。

「んじゃ、遠慮なく」

折角だから握った。

「どっちが上手いか、競走するか」

テツも負けじと俺のを扱いてくる。

「嫌な競走だな〜」

滾る竿は熱い。
血管を浮かせてビクッと脈打ってるが、それはお互い様だった。

「かしてみな」

無骨な手が2本纏めて扱き始めた。

「うっ……」

竿が擦れ合うと体に力が入ったが、乳首を目にしたら放置出来ない。
小さな突起を摘んで、指の腹で回すように摩擦した。
テツは耳にキスをしているが、息が荒くなるのがモロに伝わってくる。
膝を曲げて少しだけしゃがみ込んだら、兜合わせは出来なくなったが、構わずに乳首を舐めた。
吸いついて舌先で転がしたら、テツは体を抱いて頭を撫でてくる。

このままイケると思っていると、体を離してしまった。

「座れ……、洗ってやる」

言われるままに椅子に座ったが、あわよくば……と目論んでいただけに、ちょっと残念だ。


いつものように体を洗われ、湯船の中で抱き合い、キスをして……繋がった。

肩を抱いて体を揺らしたが、湯の中じゃ上手く動けない。
テツが下から突き上げてきたが、感じる箇所を摩擦されてイキ果てた。

「くっ……う……うくっ!」

奥を突かれ……体の中に精液が飛び散った。

「へっ……、種つけだ」

イった状態から逃れられない。

「ふはっ、ハァハァ、あ、熱いっ……」

湯の中に倒れそうになったが、グイッと引っ張られて抱き寄せられた。

「おい、またやっちまったな……」

テツはバツが悪そうに言った。

「う、うん……」

ぐったりと肩に寄りかかり、汗の匂いが混ざる湯気を吸い込んだ。

「ニャ〜」

龍王丸が浴室の外にやって来たらしい。

「龍が……鳴いてる」

「ほっとけ、邪魔は……させねぇ」

唇が重なって息が詰まったが、荒っぽいやり方が興奮を煽る。

龍王丸はずっと鳴いていたが、テツは離してはくれなかった。





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