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鎮守の森(短編)BL、時代物
鎮守の森



「1……2……3……」

50まで数えたら隠れた者を探す。
子供には定番の遊びだ。

鬼になった正太郎は数を数え終わり、辺りに潜む友達を探しに行く。

ここは鎮守の森。
神様の領域だが、小さな祠の周りには常緑樹や針葉樹、低木など様々な木々が生い茂り、子供達にとっては格好の遊び場となっている。

正太郎は祠の後ろに回り込み、隠れた者がいたら捕まえてやろうと、身構えた。
しかし、誰もいない。

がっかりして辺りを見回し、低木が生い茂る場所へ歩いて行った。
すると、ガサガサっと木の葉が揺れた。

「ん?」

誰か隠れているのかと思い、木の周りをぐるっと歩いてみたが、低木の中は枝が蔓延っている。
入れるわけがなかった。

「なんだ、誰もいないのか」

落胆して木から離れようとしたら、またガサガサっと木の葉が揺れる。

「んん〜?」

猫でもいるのかと思ってもう一度木の側へ戻り、木の枝を掻き分けて中を覗き込んでみた。
と、いきなり真っ白な何かが飛び出してきた。

「うわ〜」

正太郎は咄嗟に避けた。

「びっくりした〜」

心臓がドキドキしていたが、やっぱり猫だったんだと思い、飛び出した白い猫を探した。

すると、猫は正太郎の真後ろにいたが……。

「ん〜?」

振り返って見てみると、この猫はなにか変だ。
猫位の大きさではあるが、体が光沢のある白い鱗に覆われ、長い顔をしている。
頭には二本の角があって尻尾があるが、胴が長く、四つの足はやたらと短い。

「……っと〜、これは」

正太郎は以前父親が買ってきた書物を捲ってみた時に、これとそっくりな生き物を見た事があった。
それは龍だが、絵に描かれた龍は人の何倍も大きいと、父親から聞いていた。
こんな猫みたいな大きさじゃ、本当に龍なのかわからない。

どうしたものかと考えていたら、龍がサッと前に飛び出し、正太郎の足首にパクッと噛み付いた。

「いたっ!」

小さくても龍には牙がある。

「噛んだ……」

正太郎は痛みに顔を歪めたが、これは化け物だと思って焦り、逃げようとした。
ところが、体が麻痺したように動かない。

「あ、な、なに……」

立っていられなくなってその場にしゃがみ込んだ。
また噛まれるかもしれない。
早く逃げなきゃ……冷や汗をかいていたら、龍は人の姿に変わった。

「え、え……」

わけがわからず、目の前に立つ男を見上げた。
一見して若い男だったが、血の気のない真っ白な顔をしている。
白い顔に真っ白な着物と袴、長い髪をそのまま垂らしているが、顔立ちは女にも見える。

「正太郎、一緒にきて貰う」

男は正太郎に向かって言うと、正太郎を軽々と抱きかかえた。

「えっ……、なに、どういう事?」

正太郎は人の姿を見て安心感を覚えていたが、男は正太郎を抱えた状態でどこかへ行こうとしている。

「ちょっと、離せ……」

これはただ事ではない、正太郎は抵抗した。
体の痺れが軽くなり、足をバタつかせて暴れてみたが、痩せた男は思わぬほど力があった。
そうするうちに目の前がグラッと歪んだ。
数秒間目が眩んだ後、見た事のない景色が目に映った。

まるで異国のような岩だらけの景色だ。
何故景色が変わったのか混乱したが、それよりも宙に浮いている事に愕然となった。
男は正太郎をわきに抱えたまま、浮遊するように空を飛んでいる。
正太郎は背筋がゾッとして息を呑んだ。
眼下には突き出すように点在する岩山が沢山見える。
ここで暴れて、もし下に落とされでもしたら……。
おとなしくするしかなかった。


男はある岩山へ向かい、そこに空いた洞穴に入って下に降りた。

不思議な場所だった。
暑くも寒くもなく、風の音すら聞こえない。
静まり返った空間だが、中には石で出来た四角い大きな物が置いてある。

「庄屋のせがれ正太郎、お前は私とつがいになるのだ」

男は正太郎の目の前に立って言った。

「え、つ、つがいって……」

けれど、たかが6歳の少年にはピンとこない。

「私は龍だ、龍は人間とつがいになる」

男は自分の事を龍だと言ってまた同じ事を言う。

「え……、な、なんの事……」

正太郎は口をあんぐりと開けて立ち竦んでいる。

「我々は数百年に一度人間と交わる、穢れなき肉体でなければならない、お前は選ばれたのだ」

龍は説明したが、正太郎にはさっぱりわからなかった。

「龍だかなんだか知らないが、おいら、おとっつぁん、おっかさんの元に帰りたい、隠れた奴らを見つけなきゃ」

こんな場所にいたくないし、まだかくれんぼの最中だ。

「役目を果たして貰う」

龍は正太郎の訴えを無視して抱き寄せ、帯を掴んで解き始めた。

「わ、わっ、なにしてる」

正太郎は抗ったが、龍からすれば赤子同然だ。
簡単に着物を剥ぎ取った。

「離せよ!」

正太郎は頭にきて怒鳴り、強引に龍から離れたが、龍は正太郎の背中に目をとめた。

「お前、珍しいホクロがあるんだな」

背中の真ん中に、綺麗に並んだホクロが三つある。

「うるさい、わけのわからない事を言って、おいら……嫌だ!」

正太郎はなんとか龍から逃れようとして、石造りの奇妙な物の中に逃げ込んだ。
しかし、それは龍にとって好都合だった。

「ふっ、ちょうどいい」

龍は薄ら笑いを浮かべると、手をあげて指先を石の物体に向けた。

「な、わ、わ」

石造りの物体は浴槽のような形になっている。
その底から、奇妙な液体がわき出してきた。
光り輝くそれは、湯のようで湯ではない。
霧のような雲のような物だった。

正太郎があたふたする間に、その液体は縁まで上がってきた。

「準備はできた」

龍は着物を脱いで裸になり、石の浴槽に向かって行く。

「く、くるな! 化け物!」

正太郎は端っこに逃げたが、龍は中に入って正太郎を捕まえ、自分の懐に抱き寄せた。

「この時を待っていた、心配ない、苦痛は与えぬ」

龍は正太郎を横向きに抱き直し、長い舌を出して肌をぴちゃぴちゃ舐め始めた。

「ひ、ひい、化け物!」

肌を這う舌は真っ赤だ。
正太郎は気持ち悪くて堪らなかった。
散々喚いたが、龍は首から胸、胸から腹へ舌を這わせていくと、未熟な陰茎を舌で絡めとる。

「やー、そんなとこ……、やめろ!」

正太郎は恥ずかしい箇所を舌で巻かれ、顔を真っ赤にして叫んだが、龍は皮を被る陰茎を舌で扱き始めた。

「うう、いやだぁ!」

小さな陰茎を愛でるように擦りあげると、正太郎は嫌がって藻掻いたが、霧のような湯が小さな体全体を包み込み、奇妙な湯が鼻腔や口、毛穴から染み込んでいった。
それを吸っているうちに、正太郎は頭がフワフワして気持ちよくなってきた。

「怖くはない、昔は捧げ物を出したが、今の人間は出さなくなった、だから自ら捕らえる、仕方がないのだ」

龍は愚痴めいた事を呟き、舌を口の中に戻した。
正太郎を仰向けにして自分の前に寝かせたら、正太郎の体はキラキラ光る霧の湯に浮かんでいる。

「あ……」

今なにが起きているのか、正太郎にはわからない。
霧の湯のせいで思考が停止しているのだ。
龍は正太郎の足を大胆に開いた。

「この湯に浸かれば、心が楽になる」

おとなしくなった正太郎に話しかけ、赤い舌を出して菊門を舐める。

「あ、ああ……」

正太郎は惚けた顔をしている。

「中はどうかな」

龍は舌先を体内へ挿し込んだ。

「んっ!」

正太郎はビクンと震えたが、ぬるりと入り込む舌に感じていた。
龍は舌をぐねぐねと動かした。
正太郎の中は暖かく、舌を包み込んでくる。
興奮気味に動かしたら、赤い舌から唾液が滴り落ちてきた。
唾液は正太郎の体内に流れ込んでいき、くちゅくちゅと卑猥な音が響いた。

「あ、あっ、はあ、はあ」

正太郎は生まれて初めて感じる快感に呑まれている。

「正太郎、これからお前に授けてやる」

龍は舌を抜いたが、代わりに湯の中から真っ黒な陰茎が現れた。
それは長く伸びて自由自在に動く。
先端部は蛇のように二つに分かれ、無数の小さな棘がついている。
正太郎は股の間に浮かぶ不気味な陰茎を見たが、まったく恐れていなかった。

「やっとこの時を迎えた」

龍は感慨深げに言って陰茎の先端を菊門にあてがう。
菊門は唾液で濡れているので、歪な陰茎が狭い穴をこじ開けて中へ入っていく。
無理矢理潜り込むような感じだ。
棘が穴を摩擦してぐにゅりと入り込むと、正太郎はビクンと背中を反らした。

「ふあっ!……あ"……あ"……」

異様な刺激に硬直し、重苦しい圧迫感に呻いたが、ハッとして意識が覚醒した。

「な、なにをして……」

龍は自分の股の間に座っているが、恍惚とした表情で正太郎の腰を掴んでいる。

「目を覚ましてしまったか、もうじきだ、待て」

正太郎に言って大きく息を吐き出すと、陰茎を更に奥へ挿し入れた。
二つの塊が体内をズリズリッと摩擦し、正太郎は体を震わせて目を見開いた。

「っあ"っ……あ"あ"っ!」

得体の知れない塊が、ハラワタを抉りあげるのがわかる。
なにか恐ろしい事が起こっている。
恐怖を感じたが、龍は切羽詰まったように正太郎を抱きあげた。

「さあ、来るのだ……、くっ」

小さく呻き、陰茎がドクンと跳ねた。
先端部が小刻みに振動し始め、二つの先端からそれぞれに子種が噴き出したが、数百年に一度というだけあって、その量は凄まじいものだった。
体温よりやや熱い体液が、正太郎のハラワタに撒き散らされる。

「か……あっ……、かはっ」

正太郎は苦しげに呼吸をし、胸板が激しく上下した。
息も絶え絶えになったが、先端部の小刻みな振動が苦痛を和らげ、正太郎に再び快楽をもたらし始めた。

「快楽に浸っておればよい」

龍は正太郎にキスをして舌を入れたが、舌は喉を通り抜けて内蔵にまで達していた。

なのに、正太郎はトロンとした目をして身を任せている。
体の中は龍の種で溢れていたが、意識が朦朧として半分眠っていた。




龍は長い間交わり続けた。
1日か、2日か、時間の感覚はないが、かなりの時間だ。
その間、正太郎の体を味わい尽くしていたが、ようやく交接が終わりの時を迎えた。
陰茎は無事役目を果たし、体内からズルズルと抜け出してきた。
元通りに龍の体内におさまり、龍は可愛らしい寝顔を見つめていた。

正太郎はぐっすり寝入っていたが、体の中では早くも変化が生じている。

龍は上手くいった事に安堵すると、正太郎をそのまま霧の湯に浮かべ、自分は石風呂から出た。

背伸びをして着物を着直し、洞穴から外を眺める。

「時が満ちるまで、あと少し」

まだ時間がある。
青い空を見たら無性に散策したくなり、龍の姿になって洞穴から出ると、広い空へ向かって飛び立った。





◇◇◇

正太郎はかくれんぼをして神隠しにあい、二度と姿を現す事はなかった。

それから半年後、龍は鎮守の森にいた。

人間を物色しているのではなく、単なる暇つぶしの散歩だ。

猫くらいの大きさになり、高木の枝に座っている。

下を見下ろせば、子供達がかくれんぼをしていた。

龍の隣には、子猫のような小さな龍が寄り添って座っている。

小さな龍は目を輝かせて子供達を見つめているが、その背中には……綺麗に並んだホクロが三つあった。








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あきゅろす。
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