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短編男女物、江戸の性事情(時代物)
とかく浮世は色と欲
◇◆◇

江戸というのは一見華やかで、活気に満ちている。

確かに町人はのびのびと暮らし、女も髪結や行商などの仕事についている。
ただ人が多く集まれば、それだけ様々な人間がいるというわけだ。
まっとうに生きる人達の陰で、暴利を得る高利貸し、賭博、窃盗、殺人、傷害、婦女暴行、放火、詐欺、悪い奴らも集まってくる。
また風紀に関して言えば、初めは武士御用達だった遊郭は、今や金さえ払えば誰でも利用できる。
水茶屋は飯を食わせる場所だが、飯盛女が身を売る店もある。
銭湯では湯女が同じ事をやっている。
町が栄えるにつれ、人々は遊びに時間を費やすようになり、風紀は乱れに乱れていった。
女ばかりではなく、男色を嗜む者には陰間茶屋がある。
陰間茶屋では美少年が客をとるが、11からデビューして盛りを迎え、20歳すぎたらそろそろ引退となる。


江戸には参勤交代でやってきた武士が沢山いるが、武士よりも町人の方が自由奔放に暮らしている。
基本的に浮気は厳罰となるが、実際には浮気は日常茶飯事だった。



ここに長屋住まいの若夫婦がいる。
亭主の名は八五郎、妻はおさよというが、おさよは亭主が居ぬ間に隣の亭主と関係を持ってしまった。

隣の亭主、とめごろうは50すぎで女房も同い年だ。
八五郎、おさよ夫婦よりもひと回り以上上である。
とめごろうは、若い夫婦が越してきたその日から、おさよに目をつけていた。
くたびれた古女房にはナニが反応しなくなり、水茶屋に通って若い女と遊んでいたが、隣人ならただでやれる。

とめごろうは虎視眈々とチャンスをうかがっていた。
若夫婦の亭主八五郎は大工をやっているが、ある日、幕府から命じられた仕事で工期が迫り、1週間ほど長屋を空ける事となった。

とめごろうは八五郎本人からその話を聞き、よからぬ欲を抱きながら夜まで待ち、古女房に酒を飲ませて泥酔するまで酔わせた。
女房がぐっすりと寝入った後で、満を持して隣に忍び込んだ。
おさよは布団にくるまって寝ていたが、ゴソゴソと布団に潜り込み、おさよの体を触った。

「う、う……ん」

帯を解いていったら、おさよは小さく声を漏らしたが、目を覚ましそうにない。
とめごろうはするすると帯を抜き去り、着物をはだいておさよの体を見た。
真っ暗な中に浮かび上がる白い肌。
盛り上がる胸の膨らみにくびれた腰、とめごろうは込み上げる衝動を抑えきれず、おさよの胸にかぶりついた。

「ん……」

おさよは異変を感じたが、寝ぼけて亭主だと思い、好きにさせた。
とめごろうは自分も着物を脱ぎ、真っ裸になってのしかかった。
柔らかな肌が擦れ、首筋に吸い付いてみずみずしい肌をしゃぶったら、股間がおさまりがつかないほどに膨らんできた。
おさよの足を割って腰を入れると、竿は熱く勃ち上がって急かすようにびくついた。
とめごろうは下に手を伸ばして確かめる。
そこは既に濡れていて、もう我慢ならなくなった。
猛るイチモツを握っておさよの中に入れていく。

「っ、はあぁ……」

あたたかな粘膜が心地よく締め付け、期待した通りの極楽浄土が訪れた。
おさよは淫らな刺激に苦悶し、艶のある声で亭主を呼んだ。

「あ……、あんた……」

とめごろうは亭主と勘違いしている事に気づいたが、無我夢中で腰を振った。

「はっ、はあ、おさよ、前からお前の事を」

興奮状態になっておさよの耳元で口走ったら、おさよは驚いて目を開けた。

「と……とめごろうさん」

自分を組み敷いているのは、隣の亭主とめごろうだ。

「目ぇ覚ましたか」

とめごろうはおさよと目があったが、動くのをやめようとはしなかった。

「ちょっと……、や、やめてください」

何故とめごろうに抱かれているのか……おさよは混乱し、とめごろうを押してどかそうとしたが、非力な女の力ではどかす事ができない。

「いいじゃねぇか、な? 隣同士仲良くしなきゃな」

とめごろうはおさよの口を塞いで黙らせた。
口吸いをしながら胎内をゴリゴリ擦りあげ、高みに向かって駆け上がっていく。

「んふ、んっ、んっ」

おさよは激しく胎内を突かれ、くぐもった声を漏らした。
こんな事をしたら大事になると思ったが、とめごろうは亭主より経験豊富だ。
イチモツの先端で弱点を突き上げる。
おさよは嫌でも感じてしまい、必死に否定しながら襲いくる快楽に呑まれていった。
とめごろうはおさよをしっかりと抱いて腰を突き出した。
先端が突き当たりを突き上げ、おさよはビクリと体を震わせた。
とめごろうは強い締め付けを感じ、口吸いをやめてもう一度腰を突き出した。

「はあ、はあ、おさよ、なんだ、感じてるじゃないか、お前さんの中が俺のに吸い付いてくる」

おさよは高みに上り詰めてしまい、とめごろうの子種を腹の中で受け止めた。

「いや、だめ……」

とめごろうの赤子を宿してしまう。
かぶさる体を押して抗ったが、高みに上り詰めた体は力を失っていた。

「おさよ、もう出ちまった、俺の子を産んでくれ」

とめごろうはこれが初めてではなく、何回も同じ事をしてきた。
おさよの中を深く貫いて、悪びれもせずに若々しい肉体に種を注ぎ込む。
イキイキと脈打つ竿は、おさよの大事な場所に白濁した体液を大量に撒き散らした。

「あ、あぁ、そんな……」

おさよは嫌で堪らなかったが、どうする事もできない。

「なあに、よくある事だ、向かい側のたみ、あれが産んだガキは俺の子だ、おさよ、お前も俺の子を産んでおくれ」

とめごろうはケロッとした顔で悪行をバラし、念願叶った事を心から喜び、吐き出す快楽に浸っていた。

おさよは茫然となったが、とめごろうの精力は1回きりじゃおさまらない。
そのまま2回目に挑んだ。
おさよはまだ抵抗していたが、とめごろうは本能のままに動き、乳房をしゃぶりながら子種を放つ。

「ああまた……、ひ、酷い……」

とめごろうは八五郎の居ぬ間に忍び込み、夜這いをかけてきた。
非道な真似に怒りを覚えたが、とめごろうはお構い無しにおさよを犯し続ける。

「まだまだ……夜は長い」

3度目を同じ体勢で放った後、4度目はおさよを四つん這いにさせた。
八五郎にも見せた事のない恥ずかしい格好だ。
おさよは顔を真っ赤に染めていたが、恥ずかしさが興奮を煽った。
4度目ともなれば、胎内はとめごろうの種で溢れかえり、激しく抉られた事で感じやすくなっている。
胎内を好き放題突かれるうちに、おさよは喘ぎ声を漏らしていた。


その夜、おさよは朝方まで犯されて気を失い、とめごろうはそそくさと退散した。

おさよは気がついた後で罪悪感に襲われたが、とめごろうに何度も犯された事で、肉体が開眼してしまった。
罪悪感や嫌悪感を嫌という程感じるのに、無理矢理犯されて突かれるあの感触は、体の芯に忘れがたい快楽を刻みつけた。

その日の昼すぎ、おさよは行水をして体を洗い流した。

ひとりで狭い座敷に座って髪を撫でつけていると、とめごろうがやってきて、中に入るや否や、すかさず戸口にしんばり棒を立てる。
おさよは警戒して後ずさったが、とめごろうはズカズカと上がり込んだ。

「おさよ、ゆうべはよかったぜ」

座り込んでおさよを抱き寄せたが、おさよは嫌がって抵抗する。

「やめてください……」

だが、とめごろうは女の扱いに慣れている。
強引に抱き寄せて唇を吸えば、おさよは力を無くしておとなしくなった。
とめごろうは口吸いをしながら、着物を捲りあげる。
白い太ももが露わになり、股間がグンと張りを増した。
そのまま押し倒して上に被されば、おさよは悲しげな顔で懇願する。

「堪忍……、堪忍して」

とめごろうは潤んだ瞳を見て堪らなくなり、おさよの足を割って腰を入れていく。

「心配するな、バレやしねぇ、亭主の居ぬ間に……気持ちいい事をするだけだ」

褌の横から竿を引っ張りだすと、戸惑って涙目になるおさよを貫いた。

「あ、ああっ」

刻まれた快楽が湧き出し、おさよはつい甘い声をあげた。
おさよは既に自分の物だ。
そう確信したとめごろうは、我が物顔で腰を振った。
真昼間の長屋の片隅で、体を交える男女……。
おさよは肉欲に負けてとめごろうを抱いていた。
とめごろうはしっかりと腰を押し付け、イチモツを根元まで入れた状態で種を放つ。
びゅくびゅくと種が飛び出すと、えもいわれぬ快感に包まれたが、おさよが高みに達してしまった事で拍車がかかった。
とめごろうは玉袋が空になりそうな勢いで子種を放っていた。

おさよは震える指先でとめごろうの背中をなぞり、虚ろに目を泳がせる。

「う……、た、堪らない」

最早、引き返すのは不可能だった。

「だろ? 俺はよ、遊んできた、だから上手いんだ」

とめごろうは得意顔で言うと、張り切って動き出し、2回目に挑んだ。



それから後、八五郎が戻るまで、おさよは暇さえあればとめごろうと体を交えた。
八五郎が帰宅してその関係は終わるかと思われたが、とめごろうは隙を見てはやってきた。

「おさよ、そろそろやりたくなっただろ?」

見抜いたように言えば、おさよは頬を染めてそっぽを向く。

「そんな事は」

とめごろうはおさよを釜戸に押し付けた。

「遠慮するな」

「あ、あの……」

おさよが釜戸に両手をつくと、とめごろうは手早く着物を捲りあげる。

「へっへ、やりてぇのはわかってる」

とめごろうは肉付きのよい尻を見て昂り、イチモツを握って挿し入れていく。

「こんな場所で……」

おさよは戸惑う素振りを見せながら、欲求に突き動かされて尻を突き出した。

「ようし、また突いてやるからな」

とめごろうは猛りを全ておさよの中に埋めた。

「ああ……、ん、んっ」

おさよは口に手をあてて声を抑え、胎内に深々と居座る猛りに身震いしていた。
2人は着衣のまま下半身だけ晒して交わった。

「すっかり俺の女になりやがって」

とめごろうはイチモツを突き入れて心地よい締め付けを味わう。

「あ、あなたが……いけないんです」

おさよはとめごろうを責めたが、既に抑制が効かなくなっていた。

「いいじゃねぇか、お互い気持ちいいんだからな」

とめごろうは激しく突いた末に、おさよの腰を引き寄せた。

「うっ、出た、出たぞ」

尻を震わせて快楽に浸れば、おさよも高みに達して体を強ばらせる。

「あ、う……、酷い……人」

文句を言ってはみたが、禁忌な交わりは理性を破壊するほどの快感を与えてくる。
おさよはびゅくびゅくと吐き出される子種を受けとめた。

満足すると、とめごろうはイチモツを引き抜いてさっさと外へ出て行った。
おさよは通り雨のような交わりに興奮がおさまらず、着物を戻してその場に座り込んだ。
とめごろうの子種が胎内から溢れ出してくる。


おさよはやがて身ごもったが、子は亭主ととめごろう、どちらの子かわからない。
それでも、おさよは幸せに満ちていた。

亭主に抱かれ、暇をみてはとめごろうと交わる。
これも悪くはないと、そう思うようになっていた。




これがありがちな町人の姿だ。

また、町人ほど楽に暮らせるわけではないが、百姓も似たり寄ったりである。
農村でも夜這いはよく起こったが、夜這い以外で性処理担当の女がいた。
担当役は独り身になった後家だ。
童貞の若者がいたら、相手になってやる。

初めての交わりに、若者は夢中になってやりまくるが、担当の女は子を成せぬ年である為、身ごもる心配はない。


ある村の後家さん、カタという名の女は余裕の表情で役目を終えたが、若者は何度も体を交えるうちにカタに惚れていた。
身なりを直しながら、堪らなくなって迫った。

「なあ、一緒になってくれ!」

畳に両手をつき、前のめりになって言う顔は、真剣そのものだ。

「ふふっ、あなたは若い人を貰いなさい」

「俺はあんたが、あんたに惚れちまった」

「あたしはただやるだけの女、よく見りゃわかる筈、この体……肌に張りすらない、第一子を産めなきゃ、女としてはもう終わりよ」

後家は現実を突きつけ、若者を相手にしなかった。

「くっ、そんなの、こんなに好きなのに……」

若者にとっては初めての相手だから……という事もあったが、いつも自分を優しく包み込んでくれる、そんなカタに心を奪われていた。

「あたしは死んだ亭主を思い続けてる、だから、ごめんなさい」

カタは亡き亭主を出してキッパリ断った。

「っ……、そうか、わかった」

若者は吐き捨てるように言って座敷から出て行き、カタはそれを黙って見つめていた。

障子がぴしゃりと閉まると、カタはズキッと胸が痛くなったが、深いため息と共に……叶わぬ想いを吐き出した。


カタのような女は縁の下の力持ちだが、それを一番わかっているのは、処理役をやる本人だった。



一方で、武家はというと……。
男社会で成り立ち、衆道が盛んに行われていた。

大名や旗本などの当主には、家来達が付き従う。
身の回りの世話は全て家来がやる。
奥方が亭主の世話をする事はない。
当主は常に男に囲まれているが、中には気に入った若者を側近にして、常時そばに置く場合もあった。
戦国ならそのまま出世街道まっしぐらだが、江戸時代は肩書きや役職が決まっていた為、そう易々と出世……とはいかない。

しかしながら、やはり目をかけられれば、出世のチャンスを得たようなものだ。
側近についた者は誠心誠意殿に尽くし、殿は側近をいたく可愛がった。

江戸では男色はごく普通の事だ。
宴の席でお気に入りの若衆をはべらせたり、抱き締めて口吸いをしたりした。
周りの者も特に驚かず、気にもとめなかった。

奥方はというと、家事や身の回りの世話は使用人がやる。
屋敷内で一番奥の座敷に引きこもり、自分の好きな趣味などに没頭した。
『奥方』と呼ばれるのは、そういった事情があったからだ。

亭主と顔をあわせるのは夜伽の時のみとなるが、それも若いうちが中心で、子を身ごもる為に行われる。
無事に男児が生まれ、更に何人か産み落とせば、それでお家は安泰だ。

政略結婚である為、互いに好きでなくてもお家の繁栄の為に体を交える。
中には惚れ合う夫婦もいたようだが、大抵の場合惚れた腫れたは無縁だった。

武家の女房は亭主の稼ぎがいいほど退屈だ。

趣味にでものめり込まなければ、やる事がない。
自由になるとしたら、年をとって後家になってからだ。
亭主は死んでいるので世間に咎められる事はないが、体面がある。
日が暮れた後に頭巾を深く被り、陰間茶屋にこっそりと通った。

陰間茶屋は男色が主体だが、盛りを過ぎた陰間は女の客もとる。

亭主亡き後、若い陰間と遊んでひとときの悦楽を得る。

武家の妻女は表に出て活躍する事はない。
歴史上に名を残した妻女は、前田利家の妻、まつ、秀吉の妻、ねねくらいだろう。
ドラマや映画で使用される名はほとんどが架空の名だ。
妻女は書に名を記録される事すらなかった。

武家の妻女は、日陰に咲く花として裏方に徹する。
万一浮気などしたら、亭主が間男もろとも斬って捨ててよしな時代であった。

ただ秀吉の子、秀頼は、実は重臣の子ではないかと疑われている。









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