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brat(ヤクザ物、ショタ、純愛、中編)BL、完結
その8
◆◆◆

田西を含め、3人で銭湯に行ったあの後、裕之は毎日電話をかけてくるようになった。

1日1回だけだ。
俺だけじゃなく田西にもかけてくるし、あんまし気にしねぇようにした。

今夜もまた飲み会だ。

田西を引き連れてクラブに行った。
そこにはまた刈谷がいた。
こいつばっかし飲み会に来てるし、今夜はこねぇかと思ったら、ちゃっかり来てやがる。

俺は田西と隣同士で座り、店の女に酒をついで貰っていたが、刈谷の奴、酔っ払ってカラオケを歌いまくり、下手な歌を散々披露している。

「兄貴……、耳栓……持ってくるべきでしたね」

田西が小声で言ってきた。

「だな……」

集まってるのは、刈谷と同格か下の奴らばかりだ。
刈谷は遠慮なく歌を歌い続ける。

「おい葛西さんよ、あんたメリーゴーランド、見たぜ」

刈谷と同じ組の幹部、北原がニヤついて言ってきた。

「ああ、そうか」

どうせ笑うつもりなんだろうが、相手にするつもりはねぇ。

「なあ、ガキを連れてたらしいが、誰なんだ?」

北原は笑いはしなかったが、ガキに興味があるようだ。

「そいつは話せねぇ」

刈谷より更に付き合いの薄い奴に話す義理はねぇ。

「ふーん、けどよ、子供なんか連れ回して、あんたひょっとして……そのガキで美味い汁を吸ってるんじゃ?」

「あのな、うちは薬すら禁止なんだ、で、ガキを食い物にするっていうのか?」

うちのやり方を知ってる癖に、バカバカしいにもほどがある。

「おお、そいつはわかってる、ただよ、最近は色々と厳しいからな、まともな事をしようにも、そう簡単じゃねぇ、法に触れる事をしなきゃ稼げねぇからな」

「残念だが、面白い話は聞けねぇぞ、なんにもねーんだからな」

「そうか、児童ポルノだとかなり稼げる、勿体ねぇな、へへっ、男でもショタなら結構売れるぜ」

「やめてくれ、お宅らがなにをしようが勝手だが、俺は至って真面目なんだ」

刈谷がショタコンって事は、他の奴らも似たり寄ったりなんだろう。

「へっ、またまたー、かてぇ事を言うなよ、俺はな、今高校生と付き合ってる」

今度は自慢か?

「で?」

一応聞くだけは聞いてやる。

「男だ」

やっぱり刈谷と同じだったようだ。

「へえ、そうか、そりゃよかったな」

はっきり言って、どうでもいい。

「だろ? 高校生でもかなりいいぞ、ケツなんかぷりっぷりだしよー」

「ケツって……」

四七築組は変態ばっかしなのか?

「俺が調教してやった、今じゃてめぇから尻を差し出すぜ、へへっ」

「ああ、そうか」

呆れちまうが、聞き流そう。

「お前もよ、中学生をモノにしたんだろ? なあ、おい……中学生って、相当いいんじゃねーか? な、どうなんだよ」

「ああ、いいな」

くだらねーが、適当に答えるしかない。

「ほらみろ、やっぱしやってるんじゃねーの、そんな事をしてちゃ、やべぇ事をしてるって思われても仕方ねぇよな」

「ま、兎に角……AVを作ったり、ウリをやらせたり、そんな事はしちゃいねぇ、それだけは確かだ」

裕之との付き合いを否定するわけにゃいかねぇが、そこんとこは否定する。

「しっかしよ、あんたそっちにゃ興味ねーと思っていたが、意外だな、まぁー、女も悪くねーが、飽きるからな、たまにゃ男も悪くねぇ」

「ああ、そうだな……」

俺は奴が言った通り、男には興味ねー。
ただし、1度だけ経験がある。
兄貴分に言われて仕方なくやった。
あれも金絡みだったが、俺はやりたくなかった。
そういう趣味がねーのもあったが、兄貴が連れていたのは、まだ小学生だったからだ。
そのガキは既に兄貴が手ぇ出して調教済みだった。
そん時、しけたラブホテルにいたんだが、ガキは媚薬を飲まされてハイになってた。
俺は嫌だ、できねーと言って、頭を下げて勘弁してくれと頼んだが、兄貴は土下座する俺を蹴りあげた。
で、倒れたとこを胸ぐらを掴まれ、兄貴は真ん前で睨みつけてきた。
『俺は日頃お前に目ぇかけてやってる、その俺に付き合えねーと言うのか?』そう言って脅した。

どんだけくだらねー事でも、上のもんの言う事にゃ従わなきゃならねぇ。
それがこの世界の掟だ。

だから、やった。

仕方がなかったんだ。
だから、ニコニコ金融で裕之が馬鹿な事を言った時、チラッとそれが蘇った。
けど、即座に打ち消した。
俺は兄貴のような真似はしたくねー。
ましてや、親の借金を義務教育真っ只中のガキが背負い込むなど、そんな必要はどこにもねーんだから。


飲み会は賑やかなうちにお開きとなり、俺は田西に送られて自宅へ戻った。

真夜中のマンションは人気がない。
ここは他人名義で借りてるが、事実上四七築組の持ち物だから審査はゆるゆるだ。

ひとりきりの部屋に戻るのは慣れちゃいるが、他の奴らみたいに女でも住まわせりゃ、少しは違うんだろうか……。

水を1杯煽ってひと息ついた。

と、不意に電話が鳴った。

ポケットからスマホを出して見たら、カシラからだ。

「うっ、カシラ……やな奴からかかってきた、なんなんだ?」

まさか呼び出しとかか? 今帰ったばっかしで勘弁して欲しい。
兎に角、電話に出なきゃならねぇ。

『はい、葛西っす』

『おう葛西、もう帰ってたか?』

『はい、さっき戻ったところです』

『そうか、あのな、お前が片付けたあの仲本って奴だが』

あの件はカシラは関わってないが、何故今になって聞いてくるんだ。

『あの、それが……なにか?』

『おお、あのな、その息子の裕之ってガキが、うちに入りてぇって言ってきたんだ』

あっ……裕之の奴……。
やっぱり企んでやがったか。
にしても、おかしい。

『あの、本人が?……って言っても、カシラに会う機会はないっすよね?』

直談判しようにも、カシラに会う機会はねー筈だ。

『ああ、部屋住みの奴が言ってきたんだ』

『あっ……』

そうだった、うっかり忘れてたが、裕之は知り合いがいると話していた。

『まぁー、うちとしちゃ、人員は喉から手が出るほど欲しい、ただな、まだ中学一年生だ、ちょいと早すぎるな、せめて16だ』

『そうっすね……』

どのみち俺は反対だが、今それを口にする必要はない。

『ただな、1度会ってみたい』

だが、カシラは妙な事を言い出した。

『えっ、そりゃまた……どうしてですか?』

早々と面接ってわけじゃないだろうし、そもそも、面接にくる奴なんかいねぇ。

『俺な、こないだ四七築組のカシラに誘われてよ、売り専ってやつに言ったんだが、なかなか面白かった、だからよ、ちょいと気になった』

四七築組……どこまで迷惑なんだ。
というより、そういう意味で興味を持たれちゃマズい。

『いや、しかし……相手は中学生っす、やめた方がいい、立場上、それをネタに足を掬われるって事もありますんで』

もっともらしい理由をつけて説得した。
カシラに限ってそんな事はないと思うが、なんせこの稼業は色事に長けた奴らが多い。
四七築のカシラは男を囲ってると聞いたし、そそのかされて悪い気を起こしたら事だ。

『極秘に会えばいい、うちがやってるラブホテル、あそこなら人目に晒される事もねー』

『えぇ、ラブホはちょっと……』

マズい……非常にマズい。

『なにもしやしねぇよ、ただ会って話をするだけだ』

『いや、しかし……、中学生をそんな場所に連れてくのは、教育上よくねーんじゃねーかと』

『お前な、今は小学生が援交する時代だぞ、俺はそんな事でパクられるのはごめんだ、だからやらねーが、他所の連中は小遣いやって楽しんでる、なもん、気にするこたぁねー』

『そ、そうっすね……』

参った。
これ以上上手い言葉が出てこねー。

『おめぇ、ガキを知ってるらしいな、だったら話ははえー、お前が連れてきて同席しろ』

『え、どうしても会いたいんで?』

『だから言ってるんだ』

『あの……本当になにもなしで……って事ですよね? いや、カシラの気持ちはわかりましたが、勝手な事をやらかしたら、おやっさんに叱られますんで』

もう止めようがないが、せめて、なにもしねぇって事を約束して貰いてぇ。

『ああ、なにもしやしねぇ、約束してやる、その代わり……親父には内緒だからな』

『はい、わかりました、じゃあ、日時を言ってくださりゃ……俺が手配しますんで』

手配したくねーが、するしかない。
裕之の奴……まだガキの癖して、余計な事を言うからだ。






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