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短編集BL小説(鬼畜、色々あり、1部長編あり)ちまちま新作を更新中
▽▽意に沿わぬ者、2、契り
◇◇◇

槙之助は契る約束をして、翌日には杉浦の屋敷に出向いた。

暫く滞在する事になる為、先に下男に荷物を届けさせ、自分は当日の午前中に屋敷へ足を運んだ。
杉浦の屋敷は城下のはずれにあるが、近くには小さな川が流れている。
辺りを見回してみれば、屋敷の裏手が山になっていた。
町中の喧騒が嘘みたいな静けさだ。
山の方から鳥の鳴き声が聞こえてくる。
門の前に立ってじっと耳を澄ませてみれば、鶯が下手な歌を歌っていた。
巣立ちして間もない若鳥に違いなく、明らかに音がズレている。
可笑しくて思わず口元を緩ませていると、屋敷内から杉浦が歩いて来るのが見えた。
シワになった袴、首には手拭いがかけてあり、乱れた髷をグイッとまっすぐに直して、槙之助の前にやって来た。

「どうも、お世話になります」

「よう来られた、待っておったぞ」

槙之助が頭を下げて挨拶すると、ニッと笑って白い歯を見せる。

「鍛錬でもされてましたか?」

「おお少しな、ま、こちらへ、座敷へ案内する」

杉浦は内心嬉しくて堪らなかった。
衆道の絆は血の繋がりと同等か、それ以上の価値がある。
肉親の居なくなった屋敷に、弟となる者を迎える。
それは格別な喜びがあり、念者の申し入れをした事を今更ながらよかったと思った。


槙之助が玄関からお邪魔すると、下女が頭を下げて出迎えた。

「ようこそ、おいでくださいました」

下働きの者にしては老けている。
どう見ても老婆だ。

「こっちだ、遠慮はいらぬ」

「はい、ではお邪魔致します」

促されて廊下に上がり、杉浦の後ろについて歩いたが、行く先々で使用人と思しき者に出くわした。
男は皆働き盛りの若者だったが、女は全員初老から上に見える。
雑用や家事とはいえ、労働には若者の方が適しているだろう。
何故なのか、不思議に思いながら座敷に案内された。

「槙之助、ここは拙者の座敷だ、今日からお主はここで過ごせ」

この屋敷は古びてはいるが、結構広い。
空いた座敷は他にいくらでもあると思われる。

「え、別ではないのですか?」

契りを交わすから……とは言っても、四六時中共にいる必要はない。

「ああ、契るのは大安の日だが、それまでにお主と馴染んでおきたい、離れていては話すらできぬからな」

杉浦はもっと槙之助と親しくなりたいと思っていた。

「それは……、はい、そうですね」

そう言われたら……確かにそんな気がしてくる。

「まぁ、見てのとおり、なにもない座敷だ、つまらぬとは思うが、兎に角そこら辺に座ってくれ」

「はい、それでは……」

槙之助は腰から刀を引き抜き、右手に持ち替えて障子に近い場所に腰を下ろした。

「ああ、上座とか、そういうのを気にする必要はない、自由気ままに過ごしてくれ」

杉浦は堅苦しいのは抜きでいきたかった。

「はい……」

この男はガサツな上に女好きだが、気さくなところは評価できる。
槙之助はそう思いながら、何気なく庭に目を向けた。
すると、低木が綺麗に手入れされている。
袴はシワシワ、髷もほつれているのに、庭木の手入れだけはマメにするのだろうか?

「あの……庭木が綺麗に剪定されてますが、杉浦様がご自分でなさるのですか?」

疑問に思って聞いてみた。

「いや、庭は使用人にやらせている、ははっ、庭師なんか雇ったら勿体ないからな、素人だから上手くはないが、そんな事は気にならん」

杉浦は機嫌よさそうに笑って答えたが、槙之助は使用人と聞いて、さっき不思議に思った事を思い出した。

「その……使用人についてお聞きしたいのですが、男は若いのに……何故女は老いた者ばかりなのですか?」

「ああ、それはな、お主も知っておろう、拙者は女に目がない、しかしな、使用人に手を出すような真似は駄目だ、それだけは絶対に避けたい、雇い人は水茶屋の女や遊女とは違う、だから敢えて年寄りを雇っているのだ」

杉浦は女に関しては自信がなかった為、万一の事を考えて自ら用心していた。

「そうでしたか……、あの……立派だと思います」

本当にただの女好きで悪い男ならば、逆に喜んで若いおなごを雇い入れるだろう。
杉浦は遊びと日常をきちんと分けて考えている。

「そうか? お主にそんな風に言われたら……、素直に嬉しく思う、はははっ、いやー照れるな」

「あ、ははっ……」

照れ笑いを浮かべる杉浦につられ、自然と自分も笑顔になっていたが、槙之助は杉浦と間近に関わった事で、今まで見えなかった素顔が見えてきたような気がした。

「旦那様、お茶を持って参りました」

と、不意に障子の陰に腰を曲げた老婆が立ち、座敷に向かって声をかけてきた。

「ああ、こちらへ、拙者はいい、槙之助に振舞ってくれ」

「はい、承知致しました」

杉浦に言われ、老婆は槙之助のわきへ歩み寄った。
膝をついて丁重に頭を下げ、朱塗りの盆に乗った茶と茶菓子を差し出した。

「ありがとう」

槙之助は老婆に礼を言った。

「いいえ、お饅頭をどうぞお召し上がりください」

老婆は礼儀正しい槙之助に好感を覚え、にっこりと微笑んでもう一度頭を下げた。
それからゆっくりと立ち上がって座敷から出て行った。

「ああ、遠慮せずに食ってくれ」

杉浦は槙之助の向かい側にやって来ると、あぐらをかいてどっかりと座る。

「はい、ではいただきます」

槙之助は饅頭を手に取って食べ始めた。

「美味いか?」

「はい、おいしゅうございます」

江戸には飴屋がいたり、饅頭も売ってはいるが、主食以外の菓子は贅沢品である為、そう再々食べられる物ではない。
槙之助は甘い餡の入った饅頭を味わって食べた。

「饅頭はな、両親が健在だった時は……母が好んで食べていた、拙者は甘い物はあまり好きではない、父上もそうだった、酒の方がよい、はははっ」

杉浦は槙之助を見て、亡き母を懐かしむような気持ちになっていた。

「そうですか、自分は酒はあまり……体が受け付けないようで」

「ああ、大病を経験したんだったな、幼い頃から病弱だったのか?」

「はい、丈夫な方ではなかったです」

「そうか、拙者は体だけは丈夫でな、病気ひとつした事がないが、両親は呆気なくあの世に逝った、2人も風邪すらひかぬほど丈夫だったが、丈夫だからと言って長生きするとは限らないようだ、ある日突然バタッと倒れて死んでしまう、まあー、どうせ死ぬなら楽に死んだ方がよい、2人はいい死に方をしたのかもな」

「そうでしたか、ですが、急に亡くされたらショックだったのでは?」

「そりゃあ、ショックはある、ただな、致し方ない事だ、それが2人の運命ならば、それを受け止めねばならん、それに責任がある、この先、杉浦家当主として妻を娶り、後々に繋げていかねばならぬからな」

一身上の話を聞いたのは初めてだったが、だらしなく思えた杉浦は、実の所、意外な位しっかり者だ。

「そうですか、そう聞いたら確かに……当主として家を継ぐとなれば、悲しいだけでは済まされない、自分はまだ未熟者なので、もし我が身ならば……と思うと……とても不安になります」

もし自分の身に同じ事が起こったら……。
想像しただけで、足元をすくわれるような気持ちになる。

「はははっ、まあ……そんな先の事を心配したところで意味はない、病に怪我、場合によっては辻斬りもあるが、災難というものは急に降りかかる事が多々ある、だからな、そうなったらそうなった時だと、投げやりに考えていた方がよい、どのみちその場にならねばわからない事だ」

杉浦は穏やかな笑みを浮かべ、バカバカしいと言わんばかりに言った。
先の見えぬ未来を危ぶんでも、取り越し苦労にしかならないと、そう言いたいのだろう。

「なるほど……、よくわかりました」

納得して深く頷いたが、なんだか妙な気分になってきた。
あんなに嫌っていた筈の杉浦が……今はまったく違って見える。
いや、見た目はいつもと同じなのだが……。
どうやら自分は、外側の印象だけで杉浦の事を判断していたようだ。
人というものはサシで付き合ってみないと、本当のところはわからない。
槙之助は愚かだったと反省し、これからは安易に決めつけるような真似はやめようと思った。






そうして杉浦の屋敷での生活が始まり、寝食を共にして、翌朝には約束通りに稽古をつけて貰った。

そうする間にあっという間に時が過ぎ、いよいよ契りを結ぶ時がきた。

指南書に従って体を綺麗に洗ったら、寝衣を着て座敷に戻る。
槙之助は緊張していたが、変に高揚した気分になっていた。
それもその筈、25と言えば血気盛んな年頃である。
槙之助とて、そういう事に興味がないわけではない。
ただ、女人を体験するよりも先に、衆道の契りを結ぶとは思ってなかった。

障子の前に立ったら、心臓が口から飛び出しそうな勢いでドキドキしている。
杉浦とは大分打ち解けた。
少々粗野ではあるが、気さくな気の置けない人物だと分かった。

なのに……抱かれるとなると、話は別だ。

しかし、ここまできて引き返すわけにはいかない。

「槙之助です」

意を決して中に向かって声をかけた。

「ああ、入れ」

杉浦の返事を待って障子を開けて中に入ると、大きな布団が一組敷かれ、布団から少し離れた場所に行灯が灯してある。
杉浦は先に湯を浴び終え、自分と同じ白い寝衣を身に纏っている。
座った体勢で下半身だけ布団に入っていたが、槙之助をじっと見つめた。

「あ、あの……、酷く緊張しておりまして……どうしてよいやら」

槙之助は射抜くような眼差しに怯んでしまい、入ったところで立ちどまって言った。

「書を読んで勉強したではないか、大丈夫だ、さ、こちらへ」

杉浦は布団をはぐって手招きする。

指南書を読んで知識を得たのは確かだし、行かねばなるまい。

槙之助はそっと布団に入り、杉浦の隣に座った。
行灯の明かりがチロチロと揺れ動き、淡い橙色の光が杉浦の顔を照らしていたが、槙之助は顔を見る事が出来ずに俯いていた。

「槙之助……、よいな?」

杉浦はおなごの経験があるだけに、すっかりその気になっている。

「は、はい……」

槙之助は頷くと同時に唾をゴクリと飲み込んだ。
書を読んで知識を得ても、実際となると何をどうすればいいかわからない。
固まって身動き出来ずにいると、杉浦が背中に手を回してきた。
ドキドキが酷くなったが、体を引き寄せられてガッチリとした肩に顔を寄せた。
ちょうど首の辺りに顔がきたが、杉浦の匂いを強く感じる。
男臭い匂いだが、日頃から女遊びが好きなだけに、男盛りである事を強く感じさせた。

「槙之助……、拙者は……男は初めてだ、お主が緊張するのと同じで、緊張している、ただ、おそらく……女と同じようにやればいい、だから……やるぞ」

杉浦も初めての事に緊張していたが、昂る気持ちはおなごの時と変わらなかった。
むしろ初めてという事が、逆に興奮を煽っていた。
気持ちの向くままに槙之助の顔に手をやり、唇を重ねて軽く吸った。

「ん……」

槙之助は小さく声を漏らした。
初めての体験に驚き、艶めかしい感触に戸惑っていたからだが、じっくりと感じる暇はなく、杉浦は口吸いをやめて痩せた首に唇をあてがった。

「そ、その……、あの……」

槙之助は心臓のドキドキが酷くなったが、無精髭が当たり、熱い息が肌に触れてくる。
すると、下腹部のイチモツが勃ち上がってくるのがわかった。
どうして興奮するのか、自分で自分がわからない。

「思った通り肌がきれいだ、お主を選んでよかった、でなければ……こんな具合にはならぬ、槙之助、触ってみろ」

杉浦は槙之助の手をとって自分の股間を触らせる。

「あっ……」

槙之助は硬いモノに触れ、ドキッとした。
杉浦のそれも自分と同じか、それ以上に硬く勃ち上がっていたからだ。
他人のそれを触ったのも初めてだが、手に握らされてビクつくのが伝わってきた。

「ははっ……、お前は……どうなんだ?」

杉浦は少し照れくさくなり、誤魔化すように槙之助の股間に手を伸ばした。

「お……、なんだ、一緒じゃないか」

「それは……その……」

槙之助は狼狽え、頬を赤く染めて口ごもった。

「これくらいで恥ずかしがっていては、後が大変だぞ」

杉浦は恥じらう姿に煽られ、着物の裾を開いて中に手を入れた。
暖かな空気がこもる中に、熱く勃ち上がるそれがあったが、手に握って大胆に扱いていった。

「ん、く……」

杉浦は後が大変だと言ったが、他人にそんな事をされるのは……やっぱり恥ずかしい。
槙之助は顔を背けたが、はだかれた着物から覗くそれは、いつもより昂って反り立っていた。
ゴツゴツした手が竿を扱く度に快感が襲ってくる。

「は……、あ」

「やってみたら、案外すんなり出来るものだな」

杉浦はさも手慣れたように振舞っているが、実の所、上手くやれるか不安だった。
おなごと同じように……と頭じゃ分かっているが、いざ他人のそれに触れてどう思うかは、やってみなければわからない。

今実際にやってみて、違和感どころか……槙之助が恥ずかしがるのを見たら、意地悪な欲望が湧き出してくる。

「槙之助、拙者のもやってくれ」

躊躇するのを見越して頼んだ。

「え……」

槙之助は杉浦が期待した通りの反応を見せる。

「嫌か?」

杉浦はわざと残念そうな顔で聞く。

「いえ……、はい、じゃあ……失礼して」

ただじっとしていては悪いというのもあった。
槙之助は杉浦がしたのと同じように、着物をはだいてイチモツを握った。
熱く生々しい感触は、手の中でビクリと脈打つ。
興奮が直に伝わってきて、淫らな気分が高まってきた。

たどたどしい態度を杉浦が見つめていたが、杉浦には槙之助の心情が手に取るようにわかった。
水揚げしたての遊女と言ったら語弊があるが、たとえるとしたらそれに近い。
恥じらいながらも、必死に尽くそうとする。
その健気さが堪らなかった。

「よし、わかった、もうよい」

槙之助の手を優しく掴んで股間から離し、体を押して布団の上に倒した。
そのままでは髷が乱れる為、すかさず高枕をあてがってやる。

「ほら」

「すみません……」

槙之助は一言返したが、杉浦の顔を見る事ができず、横へ向いて目を瞑った。

「そうか……よいのだな、では、遠慮なくいくぞ」

杉浦は細い帯を解いて体を露わにした。
肋の浮いた痩せた体は、病弱さを映し出していたが、杉浦の興奮はとめようのない所まできていた。
おなごにするのと同様のやり方で体を愛撫していった。
男には当たり前に胸の膨らみはないが、小さな突起を舌で丹念に舐めまわす。
そこは皮膚が薄くなっていて敏感だ。
槙之助は擽るような舌の動きに感じてしまい、顔を赤らめて唇の隙間から乱れた息を吐き出す。

「ん……んん……」

股間のイチモツが舌の動きに反応していた。

「槙之助、すまぬが……、早くお前とひとつになりたい、前置きはこれくらいにして、菊門に触れるがいいか?」

杉浦は押し殺したような反応を見て、我慢出来なくなってきた。

「は、はい……」

そこは更に恥ずかしい箇所だが、どのみち見られる。
槙之助は返事を返し、杉浦に全てを託した。

杉浦は下に移動して足を持ち上げたので、槙之助は目をぎゅっと閉じた。
股間では、勃ち上がる竿が焦れたまんまほったらかしにされている。
杉浦は竿を軽く扱いてやった。

「ほら、気を楽にしろ」

「は、はい……、っ……」

槙之助は顔を顰めて頷いたが、痛みを感じるくらい硬くなっている。

杉浦は槙之助の様子を見ながら、菊門がよく見えるように足を開かせた。
25なら当然毛が生えていると思ったが、股間には生えているものの、尻には毛が生えてなかった。
そういえば……と思って、改めて足を見てみれば、足の毛がかなり薄い。
どうやら槙之助は体毛が薄いらしく、ワキも股間も薄かった。
杉浦にしてみれば、出来るだけ女を抱くような感覚でやりたかった事もあり、俄然やる気に満ちてきた。
指に通和散をつけて菊門に塗りこめていくと、菊門の襞がヒクヒク蠢く。

「ん、んんっ……」

槙之助は恥ずかしさの中で溺れ死にそうだったが、菊門は思わぬ程敏感で股間のイチモツがグンと硬さを増した。

「指を中に入れるぞ、書によれば……菊門を柔らかくしなければならん」

杉浦は片手で竿を扱きながら、指を穴の中に入れていった。
指はヌルヌルっと内部へ入り込み、熱い粘膜が包み込んでくる。

「す、杉浦様……、もう……ナニが限界です」

槙之助は太い指が蠢く感触に昂り、竿が杉浦の手の中でビクつき始めた。

「出しても構わんぞ」

杉浦は指を抜き差ししながら言った。
菊門が指を挟みつけている。
早いところ穴を解して、いきり立つナニを入れてみたかった。
菊門を広げるように指を動かしていると、手の中の竿がビクッと強く脈打った。
ピュッと白濁した体液が飛び散り、槙之助の腹の上を濡らした。

「うっ……、んん!」

槙之助は体を強ばらせたが、菊門がぎゅっと指に食らいついてきた。

「おお……、もう我慢ならん、槙之助、入れるぞ」

杉浦は遂に抑えきれなくなり、指を抜いて通和散を自分の竿に塗りたくった。
ガチガチに勃起した竿は、涎を垂らすかのように淫液を垂らしている。
通和散を塗り終えて寝衣を脱ぎ、膝をついて挿入する体勢をとった。

槙之助はいよいよとなって怖かったが、いき果てて力を無くした体は、淫らな快感で痺れている。
熱い塊が押し当てられ、迎え入れるつもりで力を抜いた。

目を瞑っていると、ズッ……ズズッという感じで、杉浦自身が軋みながら入ってきた。

「う、ううう……」

菊門がめいっぱい広がって切れてしまいそうな気がしたが、槙之助は何も言わずに布団を握りしめて耐えた。

「っ、こ、これは……また」

しかし、辛いのは杉浦も同じだった。
半分ほど入れたところで動けずにいた。
菊門が痛いくらい締め付け、中が熱く包み込んでくる。
おなごとは違う感じだが、動く前からイキそうになってきた。
込み上げる衝動を必死に堪え、なんとか根元まで埋めたら、槙之助の上に被さった。

「う………、っ……」

槙之助は苦しげな顔で呻いている。

「槙之助、苦しいか?」

杉浦は片手を高枕の上に置き、槙之助の頭を抱き込むようにして、心配そうに問いかけた。

「な、なにやら……腹の中が……、それに……菊門が……壊れてしまいそうです」

槙之助は感じた事をありのまま伝えた。

「そうか、もう少し広げた後がよかったんだが、すまん、我慢ならなかった」

杉浦は焦った事を申し訳なく思ったが、そう言っている間にも、じわじわ快感が押し寄せてくる。

「うー……、た、堪らん、槙之助、動くが……少しばかり我慢してくれ」

耐えきれなくなり、槙之助に断った後で動き出したが、出来る限りゆっくりと出し入れした。
それでも、槙之助は突く度に体を強ばらせている。

「うっ……くっ、はあ、あっ……」

「槙之助……」

見かねた杉浦は、根元まで埋めて唇を重ねた。
唇を全部塞いでしまったら、余計に苦しくなる。
軽く啄むように吸った。

槙之助は苦しかったが、優しく触れる唇が腹の中の重圧感を緩和した。
自分は今、自分を覆い尽くす大きな体の下にいる。
体の中の竿が焦れたようにびくつくのがわかり、契るという事をめいっぱい体感していた。
ガサツで野性味溢れる杉浦だが、今は動きたいのを我慢して優しく口吸いをしている。

思いやりは、自分に対する優しさに他ならない。
杉浦を慕う気持ちが自ずと膨らみ、槙之助は杉浦の背中を抱いていた。

「槙之助……」

背中に手が触れ、杉浦は口吸いをやめて槙之助を見つめた。

「杉浦……様、大丈夫です……動いてください」

槙之助は苦しいのを承知で促した。

「あいわかった、では……出来るだけゆっくりやるからな」

杉浦は衝動のままに動きたいのを堪え、槙之助の両脇に腕をついて動いた。
しかしながら、菊門の襞が竿に纏わり付き、急かすように締め付けてくる。
まだだ、もう少し楽しみたい。
そう思ったが、イチモツが先走ってドクンッと跳ね、ビュッと体液が飛び散った。

「うっ……くっ!」

強烈な快感が襲いかかり、つい力強く突いて槙之助の中に精を注いだ。

「うぐっ……!」

槙之助は強く突かれて呻いたが、背中をしっかりと抱いていた。
イチモツが体の中で脈打つのを感じ、杉浦の荒らげた息が耳に降りかかる。
腹の中を抉られる違和感は拭えなかったが、それでも、不思議と嫌だとは思えなかった。

行灯の明かりは、未だに頼りなくチロチロと揺れ動いている。

体を重ねたまま、しばし無言の時が続いた。

やがて杉浦は体を離して起き上がったが、そのまま槙之助の隣に横たわった。

「これでお主とは兄弟だ、杉浦様では味気ない、兄者と呼んでくれ」

感無量といった気持ちで口走ったが、痩せた色白の肉体も、纏わり着く菊門も、とても満足のいくもので、杉浦はたった今手に入れた若衆をいたく気に入っていた。

「兄者ですか」

「ああ、嫌か?」

「いいえ、はい、では兄者……わかりました」

槙之助とて同じであった。
初めての体験は少しばかり辛かったが、この男なら兄者として慕う事ができる。

「枕を置いてこちらへ来い」

杉浦は腕を差し出して言った。

「はい」

槙之助は高枕から頭を外し、杉浦の腕を枕替わりに借りた。

「後で湯を浴びよう、まだ冷めてはおらぬだろう」

「はい」

杉浦は穏やかに言って槙之助の手を握った。

屋敷内は静まり返っている。

使用人は住み込みの者のみ、屋敷内に残っているだけなので、人の気配は全くない。

遠くの方で、犬が遠吠えしているのが聞こえてくる。

2人は手を握り合って身を寄せていたが、杉浦は槙之助の耳や首筋を食むように愛撫した。

「槙之助、1回ではおさまらぬ……、今一度お前の中に入りたい」

杉浦は高揚した様子で言った。

「は、はい……、兄者が望むなら」

槙之助も肌をまさぐられてその気になってきた。

杉浦は槙之助の体を手の平で撫で回し、口吸いをした。
昂った気持ちをぶつけるように唇を貪り、舌を口内に侵入させたら、槙之助はぬるりと入り込む舌に肩を震わせた。
肉厚な舌が舌を捉えて絡みつき、なんとも言えぬ感覚だったが、頭がのぼせたように熱くなってきた。
ごく自然に、求めるように杉浦の体へ手を這わせた。

杉浦は顔の向きを変えて執拗に口吸いを続け、未だに戸惑いを見せる槙之助に昂っていた。
指先で胸の突起を摘みあげると、槙之助は小さな声を漏らす。
感じているのに耐え忍んでいる。
弱々しい見た目をしていても、女のような声をあげる事はない。
男だからこそ、味わえる感覚だ。
胸板に顔を寄せて突起を舌で嬲っていった。

「は……、あ……兄者……」

槙之助はこんな事をされて感じる自分はどうなのか、これでいいんだろうか……そう思いながら、体は勝手に昂っていく。
ただ、流れに身を委ねるしかない。

杉浦は暫くの間、槙之助の反応を楽しんで体を交えた。

今度は体位を変え、四つん這いでやる事にした。

槙之助はまた恥ずかしくなったが、兄者の為に四つん這いになって尻を晒す。
杉浦は通和散を塗り込めて後ろにいったが、尻を後ろから見たら、また違った興奮を覚えた。
女のような豊満さはない。
肉付きの薄い尻だが、毛もなく滑らかな肌をしている。
2つの尻臀の谷間には菊門があり、先程出した体液が垂れている。
白濁した粘液は鼠径部まで伝い流れ、陰嚢の裏側を濡らしているが、菊門からドロリと噴き出す様が酷く淫猥だ。
杉浦は矢も盾もたまらず、前ににじり寄って亀頭を菊門に挿入した。

「っ、つは、はあっ、あっ……」

槙之助は力を抜こうとしたが、つい体をかたくしていた。
たった1度では慣れるのは無理だ。
肉槍がズズッと奥に侵入し、布団を握り締めていたが、杉浦が放った精は潤滑剤となり、最初よりはすんなりと根元まで入った。

「槙之助、お前のここは……かなり良いぞ」

杉浦はヌルつく粘膜に包まれ、吐息を漏らして呟いた。

「そ、そうなの……ですか……」

槙之助は自分の中がどんな具合なのか、想像すらつかない。

「ああ、下手な遊女よりよっぽどいい」

杉浦は尻臀を両手で掴んで腰を動かしていった。
肉槍がぬちゃぬちゃと音を立てて菊門を出入りしているが、滑りがよくなった事もあり、さっきよりも荒々しく突いた。
ズッ、ズッ……と一突きされる度に槙之助は呻いていたが、杉浦の腰がぶち当たり、肌が触れ合う感触を感じていたら、徐々に重苦しさが薄れていった。
ハラワタを抉られるような苦しさはあるが、それとは別に腹の中がじわりと火照ってくる。

杉浦は槙之助の変化を感じ取り、背中にかぶさって指で突起を摘んだ。

「槙之助……、さっきよりも更にいいぞ、お前も感じろ」

指先を動かしながら、背中に唇を触れさせる。
槙之助は自分の体を把握しきれなくなった。

「あ、兄者……、駄目です、そんな事をしたら……、あっ、あっ」

ズズッ、ズズッ……と肉槍が往復すると、我を忘れて声を漏らした。

「もう大丈夫そうだな、それならば……少々激しくいくぞ」

杉浦はこれならいけると思って起き上がり、尻臀を掴み直して腰を打ちつけていった。
肉がぶつかる乾いた音が響き、2人の影が激しく揺れ動く。

「はっ、はあぁ……」

槙之助は腕をついていたが、股間のイチモツが白濁した汁を垂らしていた。
結合部は白く泡立った体液が漏れ出し、卑猥な音が聞こえてくる。

「槙之助、また出すぞ、お主の中に……全部注いでやる」

杉浦は一層動きを早め、一際大きく動いて太い腰をパンッと打ちつけた。

「くっ……」

引き締まった尻をかたく窄めて精を放てば、腰から背中に向けて快感が駆け上がっていく。

「っ、つあっ……」

槙之助は堪らなくなって布団に顔を埋めた。
ドクッ、ドクッ……と竿が脈打つと、体の中に生温かな体液が放たれる。

「はあ、よい、たまらぬ……」

杉浦は気が済むまで吐き出した。
イチモツが菊門にはまり込む様子をじっくりと見ていたが、満足してゆっくりと引き抜いていった。
ズルズルっと竿が抜け出し、カリ首が引っかかってヌルンッと抜け出した。
萎えた竿は項垂れ、菊門から白濁汁が溢れ出してくる。

槙之助はぐったりとして動かないが、2度目は確実に感じていた。

今宵、杉浦は槙之助を自分のモノにしたが、初めての体験は忘れ難い体験となった。

衆道では女遊びは許されているが、当面は遊びに行く必要はなさそうだ。

運良く縁談話も遠のいている。

今しばらくは、この可愛い弟を愛でてゆきたい。

そう思って槙之助を引っ張り起こし、愛おしむように両腕で包み込んでいた。






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