短編集BL小説(鬼畜、色々あり、1部長編あり)ちまちま新作を更新中
◇◆◇2代目はアイドル、6
▽▲▲▽
恭平はお腹を壊す事はなかった。
それは良かったのだが、澤地と恭平があんな事になった後、澤地はできるだけそれを意識しないように、今まで通りに接しようとした。
けれど、恭平はあんなに気持ちのいい初体験が出来て澤地の事が大好きになり、人目をはばからずに澤地に甘えるようになった。
「えへへ、さーわじ」
廊下を歩く澤地に駆け寄り、腕にしがみついて顔をくっつける。
「坊ちゃん……、あんまりベタベタしたらマズいっすよ」
澤地は叱り飛ばすわけにもいかず、困り果てていた。
「別にいいじゃん、だって僕がそういう事をしたのは澤地だけじゃないし、澤地は若頭だから誰も何も言えないじゃん」
恭平は周りに誰もいない事をいい事に、言いたい事を好き放題言っている。
「そうっすけど、手ぇつけたのは全員じゃないでしょ?」
澤地は恭平が複数人に手を出してるのは知っていたが、いくらなんでも全員に手をつけるのは無理だと思った。
手をつけてない子分からすれば、やたらベタベタするのは異様に見えるに違いなく、だからマズいと思ったのだ。
「そりゃまぁ〜、僕にも好みがあるし、全員は無理」
手をつけられる子分は、恭平の好みによって決まっていた。
「だったらやっぱマズいっすよ、いくら俺がカシラでも、さすがに親父の耳に入るかもしれねー」
単に懐いているというのを超えてイチャイチャしていると、恭平と絡みのない子分は親父に報告するかもしれない。
澤地はそれを危惧していた。
「カシラ」
2人が話に夢中になっていると、気付かぬうちに佐野がやって来ていて、澤地に声をかけてきた。
「お、おう佐野、なんだ」
澤地はちょっとびっくりしたが、動揺を隠して振り返った。
「あのーカシラ、どうしても見ちゃいられないんで、怒られるのを覚悟で言わせて貰いやすが……カシラ……、もしかして坊ちゃんとやっちまったんじゃ? こないだ部屋にいた時鍵をかけてたっしょ、明らかにおかしいし、坊ちゃんもあれ以来すげーベッタリじゃないっすか」
佐野は小声で聞いたが、こないだ恭平の部屋で感じた違和感を忘れちゃいなかった。
忘れるどころか、あれからずっと考えていたのだ。
あの時、澤地は何食わぬ顔でソファーに座っていたが、ネクタイを外していた。
澤地はたまに開襟シャツを着る事もあるが、普通のワイシャツを着ている時にネクタイを外す事はまずない。
なのに外していて、今のこのイチャイチャ状態だ……。
どれだけ考えても、坊ちゃんとやっちまった……としか思えなかった。
「いやまぁ、そりゃ……」
澤地は補佐の佐野を誰よりも1番信頼している。
その佐野に指摘されると、ハッキリと否定する事ができず、モゴモゴと口ごもってしまった。
「カシラ、俺はもしそうだったとしても……カシラが悪いとは思いません、大体事情はわかります、いっそ打ち明けてくれませんか? 俺、正直妬けるんす、俺だって坊ちゃんの事を……、でもカシラの事は尊敬してるっす、だからカシラなら仕方がないと思うんす、ただこう……2人してイチャイチャされると、胸ん中がモヤモヤするんすよ」
佐野も恭平に迫られてキスまでしてしまい、その時は困った末に澤地に丸投げした。
とは言っても、恭平の事はやっぱり可愛い。
内緒で2人でやっているとしたら妬けるし、自分だけ部外者にされたような気がして地味にショックだった。
「えへへ、そうなんだ、佐野も僕の事好き?」
恭平はわかっているのにわざと問いかける。
「坊ちゃん、それは今更でしょう、言うまでもありません」
意地悪な質問をされ、佐野はついイラッときて、『こんな事ならいっそ先に手を出しとけばよかった』とそこまで思った。
しかし恭平は、佐野がヤキモチを妬く程自分達の事を気にしているんだとわかり、それならば……と、またいい事を思いついた。
「なあ澤地、じゃあ佐野には話してもいんじゃね? そしたら3人でできるし」
「坊ちゃん! またそんな馬鹿な事を」
澤地は突拍子もない事を言われ、驚いて険しい表情で口走った。
「馬鹿な事じゃないもん、両方好きだからだよ」
恭平は若いだけに性に対しては自由奔放だ。
「あの……カシラ、ここじゃあれなんで、部屋で話しませんか?」
話の内容が段々過激になってきた。
廊下で立ち話をするような事じゃないので、佐野は声を潜めて澤地に言う。
「だったら僕の部屋に行こう、鍵がかかるから」
澤地も確かにその方がいいと思った。
「そうだな、わかった、坊ちゃん、じゃ部屋に行きますか、佐野も来い」
「へい」
「じゃ、行こ」
3人は恭平の部屋で話をする事にして、恭平を先頭に歩き出した。
恭平の部屋のソファーはひとつだけなので、恭平は澤地と佐野に並んで座らせた。
それから冷蔵庫へ行って飲み物を用意する。
コップは冷蔵庫の上のトレイに置いてあったので、それにアイスコーヒーを入れて運び、2人の前にコップを置いた。
「はい、どうぞ」
「すんません」
しかし、2人共やたら神妙な顔をして礼を言う。
恭平は向かい側にクッションを置いてその上に座ると、2人を見て笑顔で話しかける。
「そんなマジな顔しなくても、別にさ、たいした事じゃないじゃん」
それに対して言葉を返したのは澤地の方だった。
「坊ちゃん、坊ちゃんは2代目っす、将来は組を背負って立つ身、その坊ちゃんを抱くとか……そりゃさすがに責任感じますよ」
そして、それを聞いた佐野が即座に反応する。
「カシラ、やっぱりやっちまったんですね?」
澤地はもう認めてもかまわないと思った。
「ああ、そうだ、坊ちゃんがそんな事に興味を持ったのは俺のせいだからな、だから頼まれちまったら……やるしかねーと、そう判断したんだ」
やった事を認めて、正直に心の内を明かした。
「そうっすか、苦渋の決断……ってわけだったんすね」
佐野も恭平がわがままなのはよくわかっている。
澤地の心境はすんなりと理解できた。
「まぁ……だな」
澤地は俯いてボソッと呟く。
「ふふっ……、そのわりにはめちゃくちゃ興奮してたよな?」
だが、恭平は真剣に話をする2人の間に割って入り、澤地にツッコミを入れる。
「い、いやそれは……俺はバイセクだし、坊ちゃんみてぇに可愛い子を相手にすりゃ、そりゃ……嫌でもそうなっちまいます」
澤地は強面な顔を赤らめて答える。
恭平を抱いた時、いつもより興奮を覚えたのは事実だからだ。
「えへへ、澤地上手いから、僕は後悔なんかしてないし、すげー気持ちよくて嬉しかった」
そんな澤地を前にして、恭平は堂々と露骨な発言をする。
「カシラ……そっちは上手いっすもんね」
恭平が嬉しげに言うのを見た佐野が、気落ちしたようにしょんぼりと言った。
「おい佐野……そこはもういいだろ」
澤地は恭平とやった事について、恥ずかしさもあって言及されたくない。
「俺だって……、坊ちゃん、もう言っちまいますが、俺もバイ・セクシャルです、だから……カシラがやったって聞いたら、俺もヤリたくなりますよ」
しかし、佐野はやっぱり妬けるのだった。
妬けるから自分の性的な指向を暴露した。
「そうなんだ、へへ、佐野、いいよ、佐野もやろ」
恭平はそんな佐野を無邪気に誘う。
「ちょっと坊ちゃん……」
澤地は恭平があっけらかんと言うのを見て唖然とした。
本当ならキツく注意したいところだが、自分がやってしまっただけに強く言えなかった。
「澤地はもうやったんだし、強く言えないよな〜? パパにバレたらヤバイし」
恭平はそれを分かった上で脅すような事を言う。
「そりゃそうっすけど、俺は坊ちゃんが女に興味を示さなくなるんじゃねーかと、心配になります」
澤地は追い詰められ、密かに案じている事を口にした。
「大丈夫だよ、僕は女の子もおかずにするよ、澤地が連れてきてたしな」
恭平は普通のAVを観る事もあるし、男オンリーというわけではなかった。
「あっ……それは……、そっすか……」
澤地は部屋に連れ込んでやっていた事を言われ、バツが悪くなってそれ以上言葉が出てこない。
「だからさ、3人でやればいいじゃん、パパがいない時にやれば他は下っ端だけだし、わかんないって」
恭平はここぞとばかりに言ったが、3Pは前からやってみたいと思っていた。
ましてや澤地と佐野が相手なら、尚更やる気満々になるのだった。
「3Pっすか……、 そりゃまた過激な事を、いくら坊ちゃんの願いでも、中学生にそんな真似をさせるのは……さすがに気がひけます」
澤地は次々と無茶を言う恭平に困惑するばかりで、言った後に深ーいため息をついた。
「澤地は3Pやった事あるんだろ?」
けれど、恭平は好奇心の塊だ。
肩を落とす澤地を見て、逆に『強引に押せば上手くいきそうだ』と思い、嬉々としてプライベートな事を聞く。
「あの、はい……、俺は年も年だし、色んな経験積んでますから」
澤地は少し迷ったが、嘘はつきたくないので正直に答える。
「じゃあいいじゃん、佐野とも仲良しだし、2人は僕の事好きなんだから、好きな者同士がやるんだったら、3Pだからって、そんなに拘る必要ないよ」
恭平は端から経験有りだと予想していたが、予想通りだったので、この勢いに乗ってヤル方向へグイグイ押していく。
「うーん……、そう言われたら……確かにそんな気もしねぇでは……」
『好きな者同士がやる』この言葉は澤地の心を揺さぶった。
「カシラ、俺は3Pやっても構いませんぜ」
迷う澤地に向かって、佐野はキッパリと言い切る。
佐野は恭平の言う通りだと思い、カシラとなら坊ちゃんと一緒に3Pをしてもいいと思った。
「佐野……、お前、本当にいいのか?」
澤地は佐野にハッキリと言われて反対する気になれず、確かめるように聞き返した。
「へい、そりゃやる事は過激かもしれませんが、互いに好きあってる同士なら、遊びでヤル3Pとは違うと思います」
佐野はたとえ3Pだとしても、自分も恭平とヤリたかった。
「そうか……わかった、それじゃあ、機会をみてヤル事にするか……、本当はこんな事しちゃ駄目なんすけど、坊ちゃん、それで満足っすか?」
澤地は恭平のとんでもない提案を呑む事にした。
「うん、もちろん……、すげー、やった、楽しみだな〜、エヘヘ」
恭平は念願が叶ってワクワクしっぱなしだった。
具体的な予定は組長の予定をみて決める事にして、3人の秘めた話し合いは、ひとまず無事に決着がついた。
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