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短編集BL小説(鬼畜、色々あり、1部長編あり)ちまちま新作を更新中
◇◆◇New!2代目はアイドル、2
▽▲▲▽

恭平は佐野の部屋に行った。
ベッドに座卓、小さな棚があるだけのこじんまりとした和室だ。
佐野は恭平に座布団を渡し、恭平は座卓を前に座布団に座った。
部屋にはなんにも面白そうな物はなかったが、佐野は恭平に飲み物でも出そうと思って台所へ取りに行ったので、恭平はひとりきりになって、物珍しそうに部屋の中をキョロキョロ見回した。

「坊ちゃん、お待たせしやした、どうぞ」

そうするうちに佐野が部屋に戻って来て、恭平にジュースの入ったコップを差し出した。

「ありがとう」

恭平は目の前に置かれたコップに手を伸ばしたが、棚の中にズラリと並んだDVDが目にとまった。
なんのDVDか物凄く気になる。
ジュースをひと口飲んだら、すぐにコップを元に戻した。

「なあ佐野、あのDVDはなにが入ってるの?」

気になって仕方がないので、向かい側に座る佐野に聞いてみた。

「えっ……、あれはその、たいしたもんじゃないっす、っと〜、ほら組の会合とかそんなやつっす」

佐野はきょどりながら言ったが、それは青少年には見せちゃいけない物だった。

「ふーん、そっか……、じゃあさ、聞きたいんだけど、澤地はあんな風に男女両方とやってるけど、佐野はああいうの、どう思う?」

恭平はそれ以上追求しなかったが、恭平からしてみれば、佐野は自分よりも遥かに年上だ。
きっと色んな事を経験してるだろうし、澤地の事についてどう思っているのか、ふと疑問に思った。

「えっ、どう思うって……そりゃ人間それぞれ嗜好ってやつがあるんで、カシラがそれで満足なら俺はいいと思いますよ」

佐野は実のところ、自分もバイ・セクシャルだったが、それは明かさずに答える。

「そうか、僕さ、正直に話すと……男同士でやってるの、すげー興奮するんだ、だからつい見ちゃった、僕って普通?それとも変態かな?」

恭平はホッとした気持ちになり、本心を打ち明けて、今度は自分について聞いてみた。

「そっすか……、いや、変態じゃないっすよ、俺だって坊ちゃんの事、可愛いと思ってるし、いや、変な意味じゃなく……」

佐野はそんな事を気にする恭平が余計に可愛く思えたが、誤解されないように一言付け加える。

「え? マジで? 佐野は僕の事可愛いって思ってるんだ」

恭平は自分がどう思われてるかなんて、考えた事もなかったので驚いた顔をする。

「ええ、俺だけじゃないっす、組の皆がそう思ってますぜ」

佐野を含め、厳つい子分達からすれば、恭平は2代目で遠慮しなきゃいけない相手だが、美少女のような可愛らしい姿をしているせいで、皆つい目を細めてしまうのだった。

「そうなんだ、僕が可愛い……か」

恭平は自分の見た目にコンプレックスを抱いていた。
だから、皆が慕ってくれるのは嬉しく思ったが、ちょっと微妙な気持ちになった。

「ええ、ははっ、ま、2代目っすから、尚更ですよ」

佐野は恭平が自分の容姿についてどう思っているか、薄々勘づいていた。
余計な事を言わなきゃ良かったと思い、今度は見た目の事は無しにして恭平の立場を強調して言った。

けれど、恭平は賢い子だ。
佐野は自分を気遣って言い直したんだと、すぐにわかった。
佐野はいつもそんな風に優しい。
というよりも、2代目だから基本皆自分には優しいのだが、恭平はそんな佐野に、前からやってみたかった事を頼んでみたくなった。

「なあ佐野、じゃあ……僕とキスして」

さらっとなんでもない事のように言ったら、佐野は思いがけない事を言われて唖然とした。

「え、えぇっ……、キスっすか? いや、ちょっと坊ちゃん……、カシラに影響されたんすね、駄目っすよ、カシラはカシラ、坊ちゃんは真似するにはまだ早い」

そんな事を言うのは、覗き見したのが原因だろう。
佐野はそう思ってやんわりと断わった。

「僕は2代目だぞ、僕がやれと言ったら逆らえないだろ」

しかし、恭平は澤地がやっているのを見ているうちに、自分もやってみたいと思うようになっていた。
権力を行使してでもやらせようとする。

「そうっすけど、もし親父にバレたら俺はボコボコにされて破門っすよ、勘弁してください」

組長の倉本大介にとって、恭平は大切な一粒種の2代目だ。
そんな者に手をつけたりしたら……佐野は想像しただけで玉が縮みあがる思いがした。

「バレなきゃいい、な、キスするの!」

恭平は素直に従わない佐野に苛立ち、強行手段に出た。
立ち上がって佐野の傍に行き、ガバッとしがみついてキスしようとする。

「あっ、ちょっと、わ、わ……、坊ちゃん、いけません」

佐野はあぐらをかいて座っているが、しがみつかれてよろけながら、恭平の腕を掴んで体から離そうとした。

「手を離せ、僕はやりたいんだ」

だが、恭平は全力で藻掻いて顔を近づける。

「駄目です、坊ちゃん、ファーストキスっすよね? それが俺になるんすよ? 坊ちゃんはこれから恋をして……可愛い女の子とファーストキスをするべきっす」

組にとっても大事な坊ちゃんだ。
自分なんかがファーストキスの相手になったらマズいに決まっている。
佐野が華奢な恭平を押さえつける事位簡単な事だったが、あまり力を入れて怪我をさせてはマズい。
手加減しながら迫る恭平を避けた。

「ファーストキス? そんなもんどうでもいい、僕は佐野の事が好きだ、だからチューしたい」

恭平はもうやる気満々になっている。

「好きなんすか? マジっすか?」

「僕は子分のみんなが好きだよ、だから佐野も好き、なあ……キスしよ」

真面目に、真剣に、佐野に訴える。
佐野は好きだと言われて胸が熱くなった。

「そっすかそんなに俺らの事を……、じ、じゃあ……、って……あっぶね〜、やっぱ駄目っす! 子分みんなを好いてくれてるのはすげーありがたいっす、だけど、それって恋とは違うっしょ、俺は坊ちゃんの恋愛相手じゃねーし、おっさんだ」

うっかり情に流されてやってしまいそうになったが、ハッとして我に返ると、もう一度駄目だと言い聞かせる。

「うるさいな、好きなのは一緒だろ、恋愛なんか関係ないし、おっさんじゃなく子分だ、言う事を聞け!」

恭平は佐野が力を緩めたほんの一瞬の隙をつき、闇雲に唇を重ねた。

「う"っ! んんーっ! っは、はあ、坊ちゃん……」

やり方なんかわからない人間がやるキスだ。
めちゃくちゃに唇を吸われ、佐野は冷や汗をかきながら強引に恭平を引き離した。

「ふーん、キスってこんな感じなのか……、な、澤地はもっと激しいやつをやってた、アレをやってみたい」

しかし、恭平は今のキスで気分が昂り、澤地を真似てディープキスもしたくなった。

「えぇっ! もう……カシラぁ〜部屋に連れ込むの、恨みますよ……、つか、坊ちゃん、駄目です!」

佐野は今のだけでも十分マズいと思ったが、更にわがままを言う恭平に困り果て、ぶつくさ文句を言った後に語気を強めて断わる。
けれど、いくら佐野が苦悩しようが、恭平にしてみればそんなのは知ったこっちゃない。
有り余る好奇心と探究心は尽きることがなかった。

「ふっふっふっ、もうキスしちゃったもんね〜、佐野、今のをパパにバラされたくなかったら……やるんだ」

たった今、無理矢理やったキスをネタに、佐野を脅しにかかる。

「ああ〜そんな……、坊ちゃん、お願いします、お願いだからそれはよしてください、俺にはできません、この通り……頼んます」

どれだけ脅されても、佐野はこれ以上過激な事をするのは無理だった。
土下座して謝ったら、不意に障子越しに声がかり、2人は同時に障子の方を見た。

「おい佐野、いるのはわかってる、入るぞ」

障子がスっと開き、少し前まで部屋にいた筈の澤地が入ってきたが、澤地は恭平に気づいてびっくりした顔をする。

「坊ちゃん、こんな所に来てたんすか、珍しいっすね」

澤地が障子を閉めて言うと、ソッコーで佐野が言葉を返した。

「カシラ、坊ちゃんが退屈してたんで、それで部屋に呼んだんです」

恭平は自分のすぐ傍にくっついているので、変に誤解されたらヤバいと思ったのだ。

「おお、そうだったのか、坊ちゃん、こんな部屋に来てもつまんねーでしょう?」

澤地は特に疑うわけでもなく、恭平に聞いたが、ゲームがあるわけでもないし、確かに子供が来て楽しい部屋じゃない。

「ううん、楽しい、佐野が遊んでくれるし」

だが、恭平は嬉々として言った。

「遊ぶ? 佐野、トランプでもやんのか?」

澤地は首を傾げて佐野に聞く。

「あ、はい……、まぁ〜そんなとこっす」

さっき起きた事を言えるわけがなく、佐野は嘘をついた。

「違うよ、チューしたの」

ところが、恭平は屈託もなく爆弾発言をする。

「坊ちゃん!」

佐野は背筋が凍りつき、思わず叫んだ。

「なに? チューだと? 佐野、そいつはどういう事だ、お前まさか、坊ちゃんに悪戯したんじゃねーだろうな」

澤地は、可愛らしい恭平に佐野が欲情して、悪さでもしたんじゃないかと思った。

「ち、違います!」

佐野は激しく焦って否定する。

「澤地、悪戯なんかじゃない、僕がキスしてって頼んだんだ、でも佐野が駄目だっていうから、僕が無理矢理チューした」

恭平は佐野が責められちゃマズいと思って真実を明かした。

「佐野……それは本当か?」

澤地は顔をしかめて佐野に確かめる。

「へい……」

佐野は意気消沈して頷いた。
それを見る限り、嘘をついているとは思えない。
だとすれば……話はべつだ。

「坊ちゃん……、何に興味を持ってるのか知りませんが、中2でそんな真似をしちゃいけませんぜ」

澤地は恭平を説得しにかかった。

「澤地までそんな事言って、じゃあさ、もう言っちゃうけど、僕は澤地が部屋に誰かを連れてくる度にこっそり見てたんだ」

しかし、恭平はまたまた爆弾発言をする。

「え……、マジっすか?」

澤地は顔を強ばらせて聞き返す。

「うん、女とか男とかニューハーフとか、障子の隙間から覗き見ちゃった、だから澤地のやってる事をやってみたくなったんだ」

恭平は悪びれもせず、あっけらかんと覗き見した事をバラした。
覗き見する事に罪悪感は持っていたが、ここまで話してしまった以上、別に本当の事を話してもかまわない。
なぜなら、恭平は2代目で2人は子分だからだ。

「あ……っと〜、そっすか……見られちまってたんすね、そりゃマズい事をした、けど坊ちゃん、だからって俺の真似をしちゃ駄目だ、坊ちゃんはそんな事より勉強しなきゃならねぇ」

澤地は非常に気まずくなり、説得するには不利な状況となった。
まさか恭平が覗き見していたとは……迂闊だったと悔やんだが、後悔先に立たずだ。
とは言え、澤地は若頭を任されるような男である。
そこは佐野よりも度胸が座っているので、引き続き恭平を正しい方向へ導こうとする。

「まだ言うんだ、あ〜んなエロい事してる癖に、僕、全部見ちゃったもん、よく言うよ」

けど恭平は、頬を膨らませて不貞腐れ、痛いところをダイレクトに突いた。

「いやまぁ、それは……」

澤地はバツが悪そうに頭をかいたが、恭平はそれを見ていい事を思いついた。

「じゃあさ、いっそ澤地がキスしてよ、僕、あの激しいやつをやってみたいんだ」

恭平は調子に乗ってターゲットを澤地に変えた。

「坊ちゃん……なにを言ってるんっすか!」

ちょっと佐野と話をするつもりで部屋にやって来たのに、とんでもない展開になってしまい、澤地は困惑してつい険しい表情で言っていた。

「やってみたいんだ、佐野はパパが怖いからビビってやってくんないし、代わりに澤地がやって」

恭平はそういう事をするのに全く抵抗がなく、可愛い子分が相手ならむしろ体験してみたいと思っている。
佐野でも澤地でも、どっちでもかまわなかった。

「あの……、そういうのは遊びでやるもんじゃないんすよ」

澤地は『坊ちゃんがそんな事に興味を持ったのは自分のせいだ』と思って責任を感じていたが、だからこそ、めげずに引き続き説得を試みる。

「じゃあ、澤地は遊びじゃないっていうわけ? 毎回違う人を連れてきてんじゃん」

けれど、恭平は納得できなかった。
月に数回とはいえ、事実、澤地は毎回違う人間を連れ込んでいるからだ。

「俺は大人っすから、大人は互いに納得してりゃそれでかまわないんす、でも坊ちゃんはまだ中学生だ、そんな事を遊び半分で俺らとやったりしたら駄目です」

澤地は必死に言い訳したが、今ひとつ決め手に欠けている。

「僕は遊びじゃないもん、佐野も澤地も好きだし、好きだからやりたい、好きって気持ちがある分、澤地よりマシなんじゃね?」

案の定、恭平は至極まともな事を言った。

「はあ……、参ったな」

澤地はとうとう言葉をなくし、腕を組んでため息をつく。

「カシラ、どうしやす? そりゃ親父にバレなきゃいいわけなんすけど、坊ちゃんは……やらなきゃさっき俺にキスしたことを親父にバラすって言うし、そんな事されたら俺は……、カシラ、ここはひとつ……カシラがなんとか、お願いします」

佐野は澤地に向かって頭を下げて頼んだが、その実……澤地に丸投げしたのだった。
元はと言えば、澤地が原因でこうなったのだ。
自分より格上のカシラと言えども、わがままを言う恭平を何とかして貰いたかった。

「うーん……、坊ちゃん、佐野を追い詰めてまでやりたいんすか?」

澤地は責任を感じているので、自分がなんとかしなきゃ駄目だと思い、恭平に問いかける。

「うん、やりたい」

なにを言われても、恭平の気持ちは変わらなかった。

「わかりやした……、そんなに言うなら俺がやってもいいっすけど、これは3人だけの秘密ですよ、それが約束できるならOKしてもいいっすけど、本当にいいんすよね? 後悔しませんか?」

澤地は自分が背負い込む覚悟を決め、念入りに恭平に確認をする。

「えへへ、澤地がやってくれんの? 当然じゃん、後悔なんかしないし、絶対内緒にするよ」

恭平は満面の笑みで『やった』と内心喜んでいた。

「じ、じゃあ……、ここじゃやる気になれねーんで、ベッドに行きますか」

「うん」

澤地に促されて思いっきり頷くと、立ち上がって楽しげにベッドに向かった。







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