Snatch成長後編BL(完結)
50、ウリ
◇◇◇
坊主BARは意外とそんなに悪くはなかった。
竜治とも交流を図れたし、別れ際、日向さんに深々と頭を下げた。
それからまた日にちが経ち、魔の月曜日がやってきた。
テツは留守だ。
小森という男はむら気があるらしく、日によって機嫌が良かったり悪かったりする。
待ち合わせ場所は前に連れて行かれた店の前だ。
決して喜んで行ってるわけじゃないが、俺の方が先に着いてしまった。
ポン引きがうろつく通りを前に、闇営業の店の前に立つ。
日が暮れた直後だから、まだ空は薄明るい。
「よお、兄ちゃん、そこで何してんだ?」
勘違いしたのか、ポン引きが声をかけてきた。
いかにもチンピラ風情といった身なりをしている。
「待ち合わせだ」
「こんなとこで待ち合わせ? へっ、なあ、いいスーツ着てるじゃねぇか、こんなとこにいるより、もっと楽しまねぇか?」
「いや、だから……待ち合わせをしてるんですが?」
「ああ、分かってる、待ち合わせの間にちょっと寄って行こうや、な? いい子がいるんだ、本番無しなら三千円でいい、はした金で退屈を紛らわす事ができるんだぜ、ほら、行こう」
チンピラはしつこく誘い、腕を掴んで引っ張る。
「いや、ちょっと……」
「おい、てめぇ、なにしてる」
困っていると、小森が現れた。
「あっ、えっ……、小森の旦那、まさかこの兄ちゃんを?」
「そうだ、このボンクラが、あっちでカモを探せ」
「はい、どうもすみません」
チンピラは小森にペコペコ頭を下げて退散した。
父親のシマだから、顔がきくらしい。
チンピラを追っ払ってくれたのはいいが、また店の中にインしなきゃならない。
「あの、こういうの……無しに出来ませんか?」
ダメ元で頼んでみた。
「矢吹がいるから、気にしてるのか?」
「そりゃ、パートナーだし……」
「ふっ、だからいいんじゃねぇか、俺はな、そういうのを寝とるのがたまらねぇ」
「え……」
「ステータスだよ」
「は?」
何が言いたいのか、ちょっと意味が分からない。
「お前は特にそうだ、霧島の若がお気に入りときたら、尚更気分がいい、兎に角、来い」
「わっ」
また店の中に引きずり込まれた。
すると、真っ暗だった店内が明るい。
シャギーソルジャーよりは狭いが、テーブル席がいくつかある。
そのテーブル席では、半裸で盛り合う男らがあちらこちらに……。
目を逸らさずにはいられない光景だ。
「ふっ、繁盛してるだろ?」
小森は得意げに言う。
「いや、まあ……」
そういうのを見てびびる程ウブじゃないが、見たくもないものを見せられちゃ困惑する。
「ああ、小森さん」
席の方から年配の男がやって来たが、この男はまだスーツを着ている。
けれど、その声は聞き覚えがあった。
「おお、社長さん」
小森が男を社長と呼んだが、前回俺を買った奴だ。
「またこの子を連れてきたんですね、ふふっ、いや〜、こないだは良かった、3万でも惜しくないよ」
社長は俺をチラ見しながら話す。
「良かったらまた買います?」
小森は社長にオススメした。
「えっ、いやちょっと……」
勝手に売られちゃ困る。
「いいんですか? あなたのお気に入りなんじゃ?」
社長は確かめるように問いかけたが、黙っていられるわけがない。
「いや、あの〜、勝手に決めないでください」
「おい、いいのか?バラされても」
「それは……」
拒否したかったが、翔吾の事を仄めかされたら……拒否出来なかった。
「ああ社長さん、俺はかまやしませんよ、なんだったらそこのホテルにでも」
小森は再び社長にオススメする。
「いくらだ?」
「2時間貸し切りだと、少々お高くなりますよ」
2人は商談し始めた。
腹が立つ……めちゃくちゃ腹が立つ。
こうなったら刺青なんかどうでもよくなってきたが……とりあえず釣りが終わってからだ。
「じゃ、前金で払いますわ」
ガチでどっかの社長なんだろうが、話がついたらしく、社長は5万出して小森に渡した。
「君は……友也君って名前なんだね、友也君、ちょっと付き合って貰うよ」
社長は俺を見て言ってきた。
「はい……」
ついて行くしかない。
店を出て、近くの連れ込み宿に入った。
こういう風俗街には大抵それ用のホテルがある。
しかもこのホテルは古いタイプのラブホらしく、狭い入口を入ったら受け付けがあり、おばちゃんと小窓でやり取りする。
おばちゃんは慣れた様子で、こっちを見ようともしない。
社長が鍵を受け取って階段で2階へ上がった。
部屋は狭い廊下の両脇にあり、普通のドアだ。
「さ、入って」
中に入ったらベッドがあって、そのすぐ脇にテーブルが置いてある。
一部屋とバス、トイレがあるだけって感じだ。
社長はベッドの脇で服を脱ぎ始めた。
仕方がない……。
「あの、用意して来ます」
「ああ、ちょっと待って、はい、これ」
「あ、はい……」
声をかけたらイチジクを渡された。
ウリを容認するのは惨めだが……今は我慢する。
用意を済ませ、備え付けのバスローブを羽織って部屋に戻った。
「ああ、おいで」
「はい……」
社長は裸でベッドに入り、下半身に薄い布団をかけている。
決心してベッドに上がった。
「君がどこの誰か知らないが……、あの店に行って良かった、行かなきゃ出会えなかったからね」
隣に入って足を伸ばして座ると、社長は肩を抱いてきた。
顔を近づけてキスをしようとしたが、キスはしたくない。
「嫌か……、ん? 指輪をはめてるね、既婚者か?」
拒んだら、社長は指輪に気づいた。
「ええ、まあ……」
投げやりだし、どう思われても構わない。
「そうか、バイか、ふーん、私もバイだ、女房と子供がいる」
社長は俺の胸元に手を潜らせ、乳首を摘みながら言った。
「そうですか」
「女房には内緒だ、今までバレずにきた、へっへっへっ」
「そうっすか」
バスローブをズラされたので、返事をして袖を抜いた。
「はあ〜、君、まだ30代だろ」
社長は高揚しているのか、ぽっちゃりとした顔を赤らめている。
「はい」
肉付きのよい手で背中を撫で回していたが、布団がはぐれて起立した竿が露出した。
「既婚者か〜、女にモテそうだな、それなりに遊んでるんだろ?」
背中の手が尻を揉んできたが、俺はただ返事を返すだけだ。
「いえ……」
「はあ〜、たまらん」
社長は肩に唇を当てて軽くキスをする。
「ああ……、そう言えば君は刺青入れてるんだったね」
鷹は前回見られている。
「ええ、はい」
「墨を入れてるし……小森さんと親しくしてるって事は、まさか組関係の人じゃないよね?」
社長は今頃になって用心したのか、疑うように聞いてきた。
「はい、ただのタトゥーです」
組関連かもしれないが、カタギはカタギだ。
「タトゥーか、そうか〜、流行りだからな、ははっ、ん……、尻にもなにかあるな」
刺青はあっさり納得したが、尻のタトゥーに気づいた。
「こないだは暗くて見えなかったが、よく見せてくれ」
どう言われるかわからないが、それもどうでもいい。
「はい、じゃあ……」
尻だけあげるのは嫌だし、うつ伏せに寝た。
「なんだ……、ローマ字で……tetsu、これ、男の名前だよな? 君は嫁さんがいるんだろ? それで男の名前を入れてるって……どういう事だ?」
そうくるとは思ったが、ハッキリ言って……言い訳するのも面倒臭い。
「昔入れたやつです」
適当に嘘をついた。
「ふーん、嫁は文句を言わないのか?」
「はい」
架空の嫁だから当たり前だ。
「へえ、カミングアウトしてるのか、いいな〜オープンで、今どきって感じだ、カミングアウトして嫁が文句を言わないなんて……最高じゃないか」
社長は羨むような事を言って尻の溝にローションを垂らした。
お喋りをしていても、着々と事を進めている。
ひんやりとしたジェルが尻の溝を流れ落ち、腰から背中にかけてゾクッとした。
「そうか〜、へっへっへっ、女を抱きながら、この穴で男を食らうんだな、どーれ、中はどうなってるかな」
指が入ってきて、反射的に体が強ばった。
「っ……」
「前立腺はどこかな〜?」
「う……」
社長は指を動かしたが、すぐに前立腺を見つけ出した。
「ここだ、さあ、感じるだろう、これをやられたらたまらない筈だ」
指の腹で円を描くように押し回し、下半身がビリビリ痺れ始めた。
「ふっ……、くっ」
感じたくはなかったが、体の下敷きになったチンコがビクビクしている。
「へっへっへっ、アナルがひくついてるぞ、いやらしい肉穴め」
社長は前立腺を攻めて尻たぶを舐め回し……湧き出す快感をとめる事ができない。
まんまと乗せられて、社長のペースに呑まれていった。
体中を舐められた後でバックから掘られたが、前戯の段階で十分昂っている。
貫かれた瞬間、声をあげた。
俺がイキ果てると、社長は興奮気味に突き込んだ挙句、腰を打ち当てて射精した。
ベッドに顔を埋めて息を乱し、体内の脈動を感じていた。
社長は背中にかぶさって鷹を舐めていたが、やがて満足したら竿を引き抜き、ふっと体の力が抜けた。
「うっ……」
そんなに大きなモノじゃないが、感じるには十分なサイズはある。
「いやあ、よかったよ、君のアナル、かなりいいね、ははっ、出したやつが出てきた」
社長はケツを眺めて言ったが、生温かな体液がぽたぽたとシーツを濡らした。
「友也君、フェラ頼むよ、シャワー浴びるからさ」
じっとしていたら、前に回り込んで言ってきた。
「あ、はい……」
買われた側としてはやらなきゃ仕方がない。
社長がシャワーを浴びに行くのを見送った。
ひとりになり、薄暗い部屋の中を見回した。
ただやる為に用意された部屋は、ラブホと比べて地味だ。
趣も何もない空間を眺め、俺は何をやってるんだろうって、一瞬頭が真っ白になった。
初めて体を売ったのは竜治だったが、今はあの時のような緊張感や怖さは無い。
変に落ち着き払っていて、それが何とも言えず滑稽で……悲哀のようなものを感じる。
「ああ、待たせたね……」
「いえ……」
客と売り専のボーイ……。
そんな会話を交わし、社長がベッドに上がってきた後でフェラをした。
無理矢理あてがわれた相手にサービスする必要はないのだが、早く終わらせたかったので、ディープスロートをやった。
「くっ、お、おお〜、き、君は口も凄いね、あっ、もう……」
5分以内に決着をつけた。
さすがに飲みたくなかったので、ティッシュに吐き出した。
「はあ〜、凄い、益々気にいった」
社長は息を荒らげながらニヤついた顔で言った。
あまり気に入られても困るのだが、この人に罪はない。
やらせたのは小森だ。
本番を入れて2時間弱、シャワーを浴びて身支度を整え、連れ込み宿を後にした。
社長は俺に5万も使ったし、このまま帰るようだ。
お抱え運転手が迎えに来るらしく、俺と別れて歓楽街から出て行った。
またあの店に戻らなきゃならない。
店に入ったら小森が入口付近で椅子に座り、下っ端らしき男と話をしていた。
「おお、終わったか」
「それじゃ小森さん、俺はこれで」
小森が俺に声をかけると、下っ端らしき男は頭を下げて店の奥に引っ込んだ。
無理矢理ウリをやらされ、笑顔が出る筈がなく、俺は店を入った所に突っ立っていた。
「ふっ、ご苦労だったなマネージャー、よく働いてくれる、やり手じゃねぇか」
小森はニヤニヤしながら嫌味ったらしい事を言う。
「こんな事、好きでやってるわけじゃない」
ムカついた。
「ああ、しかし……、俺は気にいったぜ、こっちに来な」
小森は手招きしたが、行きたくない。
「嫌です」
「ほお、まだ抗うのか、弱みを握られてるっていうのに、なかなか気の強ぇとこがあるな、いいから来るんだよ!」
「ちょっと……」
「へへっ、こっちだ」
「なっ、なにして……」
カウンターのそばに引っ張って行かれ、カウンターの前まで来たら、小森は背中を押さえつけてきた。
「うっ!」
乱暴に押すから、おでこをぶつけた。
「俺はまだだ、相手をして貰うぜ」
「くっ! 離せ」
ウリをさせた後は……自分が欲求を満たす。
それが小森のやり方らしい。
ジタバタ藻掻いたが、力があるから勝てない。
カウンターにうつ伏せになった状態で後ろからやられた。
最悪の気分だったが、やってるうちにギャラリーが数人集まってきた。
見せ物にされて悔しかったが、下をズラされた状態で最後までやられた。
小森が俺の中から出て行くと、力が抜けてカウンターに伏さった。
だが、興奮したギャラリー達が自分達にもやらせろと言い出した。
「ちょっ……」
冗談じゃない。
焦って起き上がろうとしたが、小森が背中を押さえつけてくる。
「ひとり3万だ、それでよけりゃやっても構わねぇ」
小森が金額を口にすると、ギャラリーのひとりが金を出すと言って後ろに立ち、腰を持って勢いよくナニを突っ込んできた。
「ううっ!」
見物して昂ってるから、初めから激しく突いてくる。
背中は小森が押さえてるし、カウンターにしがみついて耐えるしかなかった。
その後、ギャラリー3人にまわされた。
狂宴が終わった時には、酷い脱力感に襲われて動けずにいた。
すると、突如アナルに異物が押し込まれた。
「んぐっ!」
アナルは乱暴に摩擦されている。
痛みを覚え、呻き声が漏れた。
「ザーメンが出ちまうからな、帰宅するまではめてな、へへっ、優しいだろ?」
小森が馬鹿な事を言ったが、アナルプラグを入れたらしい。
「ハァハァ……、うっ、冗談……じゃない」
頭がクラクラしていたが、腹が立って仕方がなく、フラつきながらシャワー室に行った。
小森は俺を見てゲラゲラ笑っていたが、シャワー室に入ってアナルプラグを引き抜き、体内を洗浄した。
湯を浴びてるうちに、少し体が楽になってきた。
プラグをゴミ箱に投げ捨て、スーツを気直して店内に戻ると、小森はまた入口付近に座っていた。
「じゃ……」
頭は下げずに、声だけかけて店から出ようとした。
「おう、よくやった、また頼むぜマネージャー」
小森は背中に向かって言ってきたが、何も答えずにドアを開けて店を出た。
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