Snatch成長後編BL(完結)
15幸せなひととき
◇◇◇
帰りがけに餌を買いにいつものコンビニに寄った。
ここの店長は違う人になっている。
というか、何度も変わって今の店長はつい最近やってきた。
もう何回か来ているが、俺が店内に入るとチラチラこっちを見ている。
まあーでも、気のせいか、はたまた自意識過剰かもしれないし、とにかく餌をレジに持って行った。
「どーもー、お客様は何度かお見かけしましたね、ここはよく来られるんですか?」
金を置いたら、店長のおっさんが気さくに話しかけてきた。
年はテツと同じ位に見える。
「ええ」
店に限定して言うなら、もう長い間利用している。
「どうぞ、これからもご贔屓にして下さいね」
おっさんはニッコリと笑って言う。
話すのは初めてだが、愛想のいい店長だ。
「あ、はい」
返事をして先に釣り銭を受け取り、次に商品を受け取ろうとしたら、おっさんの手がすっと伸びて手の甲をギュッと握った。
「わっ……」
「あ、これはすみません」
おっさんは謝ったが、なんとなく……今のはわざとやったような気がした。
「ありがとうございました〜」
けど、頭を下げて丁寧に言うので、こっちもとりあえず頭を下げたが……。
「どーも……」
なんか妙な感じがして、足早に店から出た。
車に乗ってマンションの駐車場に行き、定位置に車をとめて車をおりた。
すると、車がスーッと入ってきたが、テツの車だ。
足を止めてテツを待った。
テツは俺の軽四の横にとめると、車からおりてきた。
「おお、今帰宅か、なんだぁ〜いつもよりおせぇじゃねぇか」
そばにやってきて不満げに言ったが、ハルさんの事をテツが知るわけがない。
「うん……、ハルさんが倒れたんだ」
要点を率直に言った。
「んん、覡が? どうした、一体何があったんだ」
テツは食いついてきたが、こんな夜中に立ち話は嫌だ。
「っと……、歩きながら話そ」
「おお」
エレベーターに乗り込み、上にあがる間にざっくりと話した。
部屋に入って餌をキッチンへ置いたが、とりあえず、続きはソファーに座ってからだ。
「ふう〜」
家に戻ったらなんだかホッとする。
思いっきりボフッと座った。
「で、マリアが行ったんだな?」
「ああ、マリアさんは自分が自殺未遂した時にハルさんが付き添ってくれたから、恩返しだって言ってた」
「そうか、あいつ、なかなか義理がてぇな」
「そうだな、マリアさん、いい人だよ、テツが惚れたのもわかる」
「ちょい待て〜、惚れちゃいねぇ、あの頃はな、遊びまくってたんだ、ニューハーフに女、男もな、だからよ、遊びだって言っただろ?」
テツはムキになって言い訳する。
「ははっ、うん、わかってる」
ちょっとからかってみたかっただけだ。
「そうか、まあー今日はこんな時間だ、どうなったかは明日だな」
「だな、っていうか……、日付変わってるから今日だ」
「おう、そうだったな」
「猫、取りに行くんだろ?」
「おお、あのな、昼に連れて戻るわ」
「入れ物は?」
「あいつらがダンボールに入れるって言ってたぜ」
「そっか、いっぺんに2匹は賑やかだろうな」
寂しがって鳴かないか、ちょい心配になってくる。
「今まで使ってた敷物を入れるって言ってた、匂いがついてるから安心するだろうって事だ」
「ああ、それはいいかも」
ペットショップの猫とは違うから、母猫の匂いが付いた敷物は、効果ありかもしれない。
「まあーとにかく、シャワー浴びるか、お前もたまには一緒に来い」
「うん」
テツに誘われて一緒にシャワーを浴びる事にした。
2人してマッパになって浴室に入ると、テツは湯を溜め始めた。
「ん、入るの?」
「ああ、たまには浸からねぇと疲れがとれねぇ」
「でもさ、とっくに2時過ぎてるよ? 寝る時間無くなるんじゃね?」
余計に疲れそうだし、昼に戻るって事は朝には出て行くって事だ。
「大丈夫だ、明日はな、午前中に付き合いのある組に立ち寄るだけだ、それが済んだら夜までゆっくりできる、だからよ、昼から猫を拝めるわ」
「ふーん、色々付き合いが大変なんだな」
テツは話をしながら体を洗い始めたので、俺も洗う事にした。
「そういや、さっき聞き忘れたが、店長代理はどうなった?」
「ああ、それなんだけど、翔吾に電話したら、『僕が行く』って言った」
「若が? ははーん、お前と会えるからだな」
「まあー、そうみたい、で、自分が回ってるとこは黒木さんに丸投げするらしい」
「黒木か、あいつなら若の代理をやれるだろうが、ひとりじゃキツイな」
「う、うん……、だからさ、誰かつけるって言ってた」
シャワーは出しっぱなしにしてるし、話をしつつ……髪を濡らしていった。
「おお、それがいい、ほれ、洗ってやる」
シャンプーをつけたら、テツが頭をゴシゴシやり出した。
「へへっ、うん……」
一緒に入ると必ずシャンプーしてくれる。
飽きるほどやって貰ったが、飽きる事はない。
「しかしよ〜、若か……、まあ、店じゃなんにもできねーからな、お前、浮気するなよ」
俺の頭を泡塗れにしながら言ったが、翔吾を疑うのはものすごーく久しぶりだ。
「あれ? 翔吾の事は信じたんじゃねぇの?」
「おう、信じちゃいる、ただよ、そん時はそう思っても、時が経てば変わる、若も俺もおやっさんも……みんな歳をとった、若は犬がいた時は犬に夢中になってたが、今はいなくなっちまった、焼け棒杭に火が付くってのも、100パーセントないとは言えねぇ」
確かに一理あるかもしれない。
「うん、でもさ、もう構わなくね?」
ちょっと大胆ではあるが、テツも翔吾も互いに慕い合う仲だし、この年になって浮気だなんだと……。
いっそ認めてしまえばいいような気がする。
「駄目だ、そりゃあな、男同士なら孕む事ぁねぇ、だからよ、遊びだと言ってしまやそれで済む、けど……だからこそ、一旦認めちまったら、歯止めがきかなくなるんだ、俺とお前がパートナーである以上、普通の夫婦と同じように節操を持たなきゃ駄目だ」
テツは俺の頭にシャワーの湯を浴びせながら言った。
「うっぷ……、う、うん、そっか……」
顔に湯がかかり、口に泡が入ってきた。
「わかりゃいい、だから浮気はするな、いいな?」
テツは念押しをしながら髪をすすぎ終え、浴槽に湯が溜まったので湯をとめた。
それからもう一度シャワーで体を流し、ついでに俺の体についた泡を流してくれた。
「はあ〜、よーくわかった」
髪をかきあげた後で返事を返した。
「よし、じゃ、浸かろう」
「うん」
一緒にお湯に浸かったら、湯がザバッと溢れて外に零れた。
「ふうー、気持ちいいな、やっぱり浸からなきゃ駄目だ」
テツは浴槽に背中を預けて目を細める。
この浴槽は家庭用のだから狭い。
足が当たっているが、この自然に触れ合う距離感が好きだ。
「うん、そうだよな〜」
昔ならすぐにエロい事をし始めたが、今はおとなしく湯に浸かっている。
テツはひと回り近く年上だし、せっつくような衝動は和らいだように感じる。
それで構わない。
むしろ、エロい事抜きでこうして寄り添っていられる事が、何気にいいな〜と思う。
ついあくびが出たが、ふと青木の事を思い出した。
「あの〜、ちょっと聞きたいんだけど、ニューハーフの店で、風俗以外で、シャギーソルジャーより格下の店って知ってる?」
テツなら……昔取った杵柄じゃないが、色んな店を知ってるような気がする。
「BARやパブか?」
「うん、そう」
「なんだ、なにかあるのか?」
「ちょい前に話したけど、ニューハーフになりたいって奴、結構毛深いし、本人はぬぼ〜っとしてるし、なかなか厳しい状況なんだ、で、マリアに相談したら、とりあえず格下の店で働いて、そこでお金を稼ぐ、で〜、そのお金でホルモン注射をしたらいいんじゃないかって言った」
「そうか……、なるほどな、そりゃいい案だ、ニューハーフになりてぇなら、それが近道かもしれねぇ、格下の店なら知ってるぜ、シャギーソルジャーがある場所とは違う繁華街になるが、隣町って距離だな、そこに行きゃ汚ぇカマの揃った店が何店舗かある」
汚ぇカマってのが笑えたが、やっぱり聞いて正解だった。
「そっか、じゃあ、青木に話してみる」
青木がうんと言うか分からないが、暇をみて連絡してみよう。
「お前、そいつんちに行ったのか?」
「うん、行った、そしたら爺ちゃん婆ちゃんがいた」
「ジジババが御在宅か、で〜、ジジババの前で女装したのか?」
「いや、脱毛しただけで、服を見せて貰った」
「どんな服だ?」
「セーラー服……」
「おお〜、なははっ、そうきたか〜」
テツは自分も所持してるのに他人事みたいに笑っている。
まあーいいが、問題は青木だ。
「いや、あのさ〜、青木って毛深くて〜、ギャランドゥもあるんだよ」
「だははっ、ギャランドゥ、そいつはまた濃いな、汚ぇカマに決定だ」
能天気に面白がっているが、俺は青木を改造しなきゃならない。
「で、肌もガサガサしてる、顔を見たらわかるレベル」
「だめだな〜、シャギーソルジャーは到底無理だな」
テツは呆れているが、青木にはそういうところに気を使って貰わなきゃ困る。
「俺だってさ、そりゃさすがに化粧水やクリームまでは塗らねぇけど、ボディソープは高いやつを買ってるし、ほら、これも……顔を洗うやつだ」
わきに置いてある洗顔料を取って見せた。
「ほお〜、お前、少しは気ぃ使ってるんだな」
「うん、今日はもう面倒だから洗わねぇけど、年とると肌が荒れやすくなるだろ? テツは肌がツルツルの方がいいって言ってたじゃん」
洗顔料を戻して言った。
「俺の為に気ぃ使ってるのか?」
じっと見て聞くから、なんだか照れ臭くなってきた。
「そりゃ……、パートナーだし」
言い難くなり、ボソッと言った。
「へへー、こいつ〜、こっちに来な」
テツはデレて腕を引っ張ってくる。
「な、なんだよ〜」
ストレートに感情を出すタイプだから、俺は益々照れ臭くなった。
「へへっ、お前とは長ぇ付き合いだけどよ、これからもよろしく頼むぜ」
不安定な体勢で寄りかかると、テツはやんわりとハグして頼んでくる。
そんなのはお互い様だ……って言いたかったが、ナニが当たっているのが気になった。
触りたい衝動に駆られたが、テツはまたすぐに起きなきゃならない。
刺激するのはやめて頷いた。
「うん……」
「へっ……」
なのに、ニヤッと笑ってチューしてきた。
人がせっかく我慢してるのに舌を入れて濃厚にやる。
もう我慢できない。
だったら……握る。
「あーあ、どうしてくれんだよ」
ギュッと握ったら、テツはチューをやめて文句を言った。
「あんたのせいだろ」
俺とテツは、こんな掛け合いを何度も繰り返してきた。
「やってくれるか?」
「もう、しょうがないな〜、わかった」
何を言いたいのか、いちいち聞かなくてもわかる。
承諾したらテツは潜望鏡の体勢をとったが、これも今じゃすっかり慣れた。
湯船から突き出したチンコを握り、口に咥えて喉奥に押し込んだ。
「お、おお〜、出たな、必殺ディープスロート」
テツはふざけるように言ったが、俺のテクで秒殺してやる。
鼻で息をしながらゆっくりと締め付ける。
「おっ……、ああ"〜、き、きた、ちょっ……待て、あ、くそ〜、だ、駄目だぁ〜」
テツは焦りまくっていたが、チンコがビクビク脈打ってヌメる粘液が喉に流れ込んできた。
「ふ……、う"……」
唾液と共にゴクリと飲み干せば、生臭い匂いが鼻から抜ける。
第1波をやり過ごしたら浅く咥え直し、2波、3波を舌で受けとめて亀頭を舐め回す。
初めのうちは苦痛だった飲精も、今や当たり前のようにやっている。
「はあ〜、お前、やっぱすげーわ」
テツは両腕を浴槽の縁に掛けて気の抜けた表情で言った。
「へっ、ちょろいな、瞬殺だ」
口を拭って勝利宣言した。
「くそ〜、負けたままじゃ気がすまねぇ、次は俺がやる、腰を浮かせろ」
テツは悔しげに言って足をおろしたが、リベンジしたいようだ。
「わかった」
両腕を浴槽の縁にかけて腰を浮かせ、両足を開いて浴槽の縁にかける。
「半勃ちかよ、わけぇ癖にノリの悪いちんぽだな」
テツは露出したチンコを見てぶつくさ言ったが、パクっとひと息にいった。
半勃ちだから根元まで丸ごといかれた。
「う、うわっ……」
大胆に咥え込み、ディープスロートをやり返してきた。
チンコは瞬時にシャキーンとなった。
熱くぬめる粘膜の中に取り込まれ、心地よい締め付けが襲いかかり、腰の辺りがゾクゾクし始めた。
「くっ、くう〜」
勝利したままでいたかったが、リベンジなだけにテツは攻めの手を緩めない。
バキューム攻撃まで加えられたら……ソッコーで風前の灯火だ。
「む、無理ぃ〜っ、ううーっ!」
チンコが脈打ってぴゅっと精液を飛ばし、体が強ばって快感がブワッと弾けだした。
俺が苦悶する間に、テツは余裕の表情で全部飲み込んでいった。
「へっへー、どうだ、参ったか」
顔をあげて得意げに聞いてくる。
「引き分けだ」
百戦錬磨のテツがやや優勢だったが、ここは五分五分って事にしたい。
ヘナヘナに力が抜けた足をおろし、元通りに湯に浸かった。
「引き分けか、ま、そうだな、お前は実際上手いからよ」
テツは俺のテクを認めてくれた。
「へへっ」
嬉しくなって抱きついた。
「ふうー、そろそろ出て寝るか」
しかし、テツはお疲れモードで背中を抱いてきた。
つい浮かれていたが、マジでそろそろ寝かせなきゃヤバい。
「ああ、な、また交代してくれる?」
但し、ひとつだけ約束して欲しかった。
「こら……」
乳首を摘んで引っ張りながら聞いたら、ちょっと迷惑そうな顔をする。
「いいだろ? 最近交代してねぇし」
俺だってたまにはタチ側に回りたい。
「ああ、わかったよ、やらせてやる」
テツは俺の背中をペシペシ叩いてOKした。
「うん、サンキュー」
あんまりいい顔はしないが、頼めば大抵承諾してくれる。
そういうところが好きだ。
湯の中で手を掴み、指と指を絡めて握った。
「パートナーだからな、俺は……絶対にお前を離さねぇ、死んで生まれ変わっても、もういっぺんお前を探し出して……無理矢理犯してやる」
すると、やけに真面目な顔で言う。
「うん……、俺はかまわねぇ」
本当に構わねぇと思っていたが、そう言ってくれるうちが華だと……心の中でもう一人の自分が呟いた。
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