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女喰い男女陵辱系時代劇エロファンタジー短編(完結)
11
その後、五作は屋敷へ戻り、弥八郎は江衛門が来るのを待った。
お美代は火をおこし、とりあえず夕飯の支度を始めた。

五作が用意してくれた材料を使い、江衛門の分を入れて多めに作る事にした。

そうするうちに江衛門がやって来た。
仲間を2人連れているが、仲間は2人がかりで大きな衝立を抱えている。

「衝立、ほんとに持って来たのか? 」

弥八郎は江衛門の後ろで衝立を持つ2人に聞いた。

「ああ、江衛門がどうしても必要だというのでな」

衝立を抱える仲間は呆れ顔で答える。

「しかし……、こんなデカいやつを……、なにもそこまでしなくても大丈夫だろう」

弥八郎も呆れて言った。

「いいや、拙者は腐っても武士だ、万一間違いがあっては、末代までの恥、念には念を入れなければならん」

江衛門は真面目な顔で主張する。

「大袈裟だな〜、ま、けどよ、武士ってのは、俺みてぇな腐れ商人の息子にはわからねぇ立派な考えを持ってるからな、この大きな衝立はその証だ」

「わかってくれるか」

「ああ」

2人が話をする間に、衝立が座敷に運び込まれた。

「運んだぞ」

衝立を運んだ2人は、江衛門に声をかけて座敷から降りる。

「ああ、すまぬ」

「いや、それじゃ、俺らは戻るわ」

江衛門が2人に声をかけると、2人のうちのひとりが答え、2人は連れ立って長屋を出て行った。

「よし、それじゃあ……、俺もそろそろ行くか」

弥八郎は項を掻きながら呟いた。

「あ、ちょっと待て」

すると江衛門が走り寄り、弥八郎の耳元に顔を近づける。

「ん……、な、なんだ」

弥八郎はあまりにも近くに接近され、困惑した顔で聞き返す。

「せ、拙者は……おなごと2人きりで過ごすのは初めてだ、お美代殿は飯を作っているようだが、馳走になってよいのか? 」

江衛門は声を潜め、真剣な表情で聞いた。

「当たり前だ、あのな、堅苦しいのは無しだ、もっと肩の力を抜いて、楽〜にしろ」

なにかと思えば、取るに足らない事。
弥八郎は内心ニヤニヤしながら言った。

「そうか……楽〜にか……、しかしながら、やはり緊張する」

江衛門はおなごと付き合った経験はない。
武家は無闇矢鱈に女人に鼻の下を伸ばす事を恥とみなすので、仕方がないと言えばそうなのだが、とは言っても江戸には多くの武士が集まる。
その為、幕府は遊廓を作った。
江衛門は旗本奴になったのだから、せめて遊廓にでも行けば、少しは女人に対して免疫がつくだろう。
しかしながら、江衛門は遊びにも疎かった。
色事にばかり熱中する彦兵衛とは対象的な男だ。

「だったらよ、お美代ちゃんの手伝いでもしたらいい」

「手伝いと言っても、料理はできぬ」

「じゃ、膳を運ぶとか、他にも……洗濯や掃除、その位はできるだろ?」

膳も弥八郎が用意している。
生活に必要なものはひと通り揃えてあるのだから、雑用なりなんなり、やろうと思えばいくらでもやれる。
弥八郎は、緊張する暇があったら体でも動かせばいいと思った。

「そうか、わかった……、拙者も家を飛び出して自分の事は自分でやるようになった、やれる事はできるだけ手伝おう」

江衛門は神妙な表情で頷いた。

「で、そりゃいいが、用心棒頼むぜ」

弥八郎はちょっと不安になった。
本来の目的を忘れて貰っては困る。

「ああ、それなら任せろ」

江衛門は剣の腕は確かだ。
それについては自信ありげに答える。

「ま、だったらいい、それじゃお美代ちゃん、俺はひとまず行くが、またちょくちょく来る、俺が言った事を守るんだぞ」

弥八郎はせわしく煮炊きをするお美代に声をかけた。

「あ、はい、わかりました」

お美代は慌てて手を拭い、振り向いて返事を返した。
弥八郎はお美代にひとこと返し、戸口へ向かう。
戸を開けて長屋の外に出たので、お美代は江衛門の後について長屋の外へ出た。

深々と頭を下げて弥八郎を見送り、江衛門と共に再び長屋へ入る。
長屋には他にも人が住んでいるので、たまたま2人を見かけた住人は、お美代を見て首を傾げた。
夫婦にしてはお美代が若すぎる。
ひょっとしたら兄と妹ではないかと、勝手にそう思っていた。



その日から江衛門と共に暮らす日々が始まり、江衛門は初めのうちはやっぱり緊張していたが、夜寝る時は真ん中を衝立で仕切っているので、邪念を抱かずに済んだ。
長屋には共同の厠があるが、風呂は大衆浴場を利用するしかない。
江衛門は、ある程度纏まった金を弥八郎から受け取っている。
長屋へきて数日経ったこの日、お美代を連れて大衆浴場へ出向いた。
着替えの着物は五作が屋敷からこっそり持ち出してきたので、着るものに不自由する事はない。

お美代は江衛門とは並んで歩かず、一歩下がってついて行く。
旗本奴となっていても武士には変わりない。
武士は女と並んで歩くわけにはいかないからだ。
お美代はそんなことはなんとも思っておらず、江衛門がいてくれる事で安心して毎日を過ごす事ができた。
風呂屋に到着したら別々に暖簾をくぐり、湯を浴びてさっぱりしたら、もう一度暖簾をくぐって外に出る。
すると、江衛門が柳の木の下で待っている。

「お待たせしてすみません」

お美代が頭を下げて駆け寄れば、江衛門はお美代を一瞥する。
無愛想な態度だが、『ついて来い』と暗に示唆している。
江衛門が長屋に足を向けて歩き出すと、お美代は勝手知ったるように、江衛門の後について歩く。
パッと見、如何にも江衛門が偉そうにしているように見えるが、江衛門はお美代がついて来られるように歩幅を小さくしていた。
お美代はお武家さまと関わるのは初めてだったが、江衛門を知って、武士に対して良いイメージを抱くようになった。
江衛門は表では武士の面子を保っているが、家の中では何かと手伝いをしてくれる。
とても優しく、頼もしい存在に思えた。


長屋まであと半分のところまで来た時に、柄の悪い連中が何処からともなくフラフラと現れ、2人を取り囲んだ。

「あ……、江衛門さん」

お美代は話に聞いた町奴だと思い、怯えたように後ずさりした。

「お美代ちゃん、こっちへ」

江衛門はお美代を自分のわきへ引き寄せた。

「よお、あんた旗本奴だな」

男らは3人、そのうちのひとりが江衛門に向かって言った。

「そうだ」

江衛門は淡々と答える。

「旗本奴とは縄張り争いをする仲だ、お世辞にもいい印象は抱けねぇが、下手に喧嘩するとお上がうるせぇからな、なあ、あんた、わりぃ事は言わねぇ、その娘を置いていきな、そしたらよー、互いに穏便に済むんだがな」

町奴と旗本奴は仲が悪い。
何かにつけて小競り合いを起こしているが、どちらもお上に目をつけられているのは事実だ。

「断わると言ったら?」

「力づくでも……奪う事になる」

「ほお、郷田屋に頼まれたのか? 」

男は睨みつけてきたが、江衛門は表情を変えずに聞き返す。

「さあな、あんたにゃ関係ねぇ事だ、いいから渡せ」

男はあやふやに答え、一歩前に出てお美代を渡すように迫った。

「断わる」

しかし、江衛門が渡すわけがない。

「ああ、そうかい、この野郎……人が優しくしてりゃつけあがりやがってっ! 」

男は態度を豹変させると、胸元から匕首を出して鞘を抜き、匕首を振りかざして江衛門に向かって行った。

「お美代ちゃん……後ろに」

江衛門はお美代の腕を掴んで自分の背後へやり、刀を抜いて素早く身構え、前に踏み込んだと同時に男へ一撃を浴びせた。

「ぎゃ〜っ! 」

男は肩から胸を斜めにバッサリとやられ、叫び声をあげてよろつきながら後ろへ下がった。

「あっ……、兄貴ぃー! 大変だ、斬られちまった」

傍にいた男の仲間が顔をひきつらせて騒いだ。

「ば、馬鹿野郎……、峰打ちだ、いってぇー」

打たれた男は肩を押さえてうずくまっている。
峰打ちとは言っても、刀で思い切り打たれれば結構な痛手になる。

「お前ら、ボサっとするな、娘を奪え! 」

男は残る2人に向かって怒鳴った。

「え、いや、でも兄貴……、あ、寛太、お前行け」

2人は狼狽えたが、片方がもう一人に命じた。

「ええ、俺っすか? しかし……相手は侍っすよ」

だが、言われた男は及び腰になっている。

「馬鹿、旗本奴は皆侍じゃねぇか、お前も匕首持ってるだろ」

「あ……、へい、確かに持ってます……」

「じゃ、行け、娘っこを奪え、そしたら礼金がたんまり手に入るぜ」

命令した男は、自分は行こうとはせずにけしかける。

「金か……、くう〜、こうなりゃ一か八かだ、とりゃ〜っ! 」

けしかけられた男はやけになったように言うと、抜いた匕首を振り上げて走りだし、江衛門に斬りかかった。
お美代はヒヤッとしたが、バシッと鈍い音がして男が地面に倒れ込んだ。

「う"う"〜、やっぱり無理だった、いてぇよ〜」

男は片手に匕首を握ったまま、泣きそうな面で肩を押さえている。

「お主ら、この娘は渡さぬ、諦めて立ち去れ、さもなくば……もっと痛い目にあうぞ」

江衛門は脅すように言った。

「ち、ちくしょー、覚えてやがれ! 」

最初に峰打ちを受けた男が捨て台詞を吐き、倒れた奴がよろつきながら立ち上がり、3人は連れ立ってどこかへ向かって歩いて行く。

「あの……、ありがとうございます、助かりました」

お美代は江衛門に向かって頭を下げた。

「その為に拙者がいるのだ、礼には及ばん、さ、ゆこう」

江衛門は刀を鞘におさめて言うと、お美代を促して歩き出した。

「はい……」

お美代は頷いて後に続いたが、江衛門は意外な程優しく、克己的で頼りがいがある。
長屋に向かってしずしずと歩きながら、江衛門の事を粋でいなせな格好良いお侍さんだと思っていた。





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あきゅろす。
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