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SMILE!
しょうくん



寮から出て大神と並んで歩く。外は夕日で赤く染まっていた。


「…大神、」

「何?」

「……ここまでで、大丈夫」


送ってくれるのはありがたいが、大神はまた寮に戻らないといけなくなってしまう。
それに寮とおれの家は結構離れてるし…、


「送ってやってんだから、文句言わないでよ」

「……、」


おれがいつ文句言った。大神が送るの面倒なんじゃないかと思って言ったのに。


「てゆーか、ちょっと話しがあってさ、だからわざわざ送ってやってんの」

「……話し…?」

「そう」


大神はちらりとおれを見て、歩きながら話し出す。


「江夏サンさ、危機感とか警戒心持った方がいいんじゃない?」


多少なりとも持っているつもりなんだが、それじゃ足りないんだろうか…


「ちょっとは疑ったら?滝登の事どう思ってるのか知らないけど、滝登も男なんだよ」


それは、分かっているけど…
滝登が泣くのは見たくないから、どうしても構ってしまう。


「滝登って子供っぽいじゃん。それは喋り方のせいだと思うんだよね、僕は」

「……」

「滝登も高校生なんだよ。滝登の涙に惑わされたら、江夏サンはまた滝登に捕まるよ?」


惑わされたらって、滝登がわざと泣いてるみたいな…


「……わざと泣いてる、のか?」

「本気で泣いてる時もあるけど、泣き落としの時もあるでしょ。特に今回の場合は」


大神の言葉を聞いて、唖然としていると、大神はくすりと笑う。


「滝登は小悪魔なんだよ。嘘泣きに騙されたらおしまい」


今度は誰にも見付からないように監禁されちゃうかもね、と大神は口元を緩めた。
滝登が小悪魔…
監禁までしてしまうんだから、大神の言ってる事は本当だろう。
でも、騙されない自信がおれにはない。


「……滝登の事、よく分かってるんだな」

「そりゃあ付き合い長いし。でもまぁあんまり話した事はなかったんだけど」


ちょうど滝登の事を話し終わった頃に家に着いた。玄関の前まで行き、大神を振り向く。


「……ありがとう」

「ちょっと待って、もうひとつすっごい重要な話」

「……な、に?」


重要な話と言われ、少し身体が強張る。


「僕さ、江夏サンの事わざわざ助けに行ったんだよね」

「……わ、わざわざ、ありがとう、ございました」

「別にお礼を言ってほしいわけじゃないんだよね」


じゃあ何を言えばいいんだ。
他に何もしようがないし…



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あきゅろす。
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