SMILE! 5 「でも、滝登」 「なぁに?」 「江夏サンに許可取った?」 滝登は大神の言葉に首を振る。 大神は滝登の事をよく分かっているみたいだ。 「こういうのって、同意だったら別に問題ないと思うけど、さすがに無許可はまずいんじゃない?」 江夏サンにだってやる事あるんだから、と大神は滝登に言い聞かせた。 「…じゃあおかーさんと一緒にはいれないの?」 「毎日っていうのは無理かもね」 それを聞いた滝登は顔を歪めた。 泣きそうな滝登を見て、おれは滝登を呼ぶ。 「……滝登、」 呼ぶと滝登は大神から離れ、おれの目の前に座った。 「……毎日は無理かもしれない。だけど、会えないわけじゃない。滝登が会おうと思えば、いつでも会えるだろう?」 「…うん、」 「……だから、それで我慢してくれないか?」 コクンと頷く滝登の頭を撫でた。 よかった、分かってくれたみたいだ。 「どうしても我慢出来なかったらまた監禁しちゃえば」 「…っ大神!」 余計な事を言うな。 滝登が鵜呑みにしたら、どうするんだ。 「……滝登、もうするなよ」 滝登が鵜呑みにすると困る。 だから、そう言ったのだが滝登は首を傾げて、 「それは、わかんなぁい」 と言った。 大神はそれを聞いて笑う。 「……大神、笑うな」 「いやだって、滝登わかんないって。江夏サンまた監禁されちゃうかもね。すっごい笑える」 …笑えない。 おれがどれだけ焦ったと思っているんだ。 「あー面白い。滝登、外してあげたら?」 大神はおれの手首を指差した。 滝登は頷いて、寝室から出て行った。たぶん、南京錠の鍵を取りに行ったんだろう。 「江夏サン、こっち向いて」 こっち向いてと言われ、大神の方を向くと携帯電話が向けられていた。 「……何してる、んだ」 「撮ってんの、こういう事滅多にないでしょ。だから」 「………、」 「江夏サン、はい、ちーず」 撮られると思い、ばっと顔をそらすと大神が笑い始める。 「残念でした、これムービーだから」 「……大神、」 なんだろう、地味にむかつく。 眉間にシワを寄せて大神を見ていると、滝登が鍵を持って戻ってきた。 滝登はすぐに南京錠を外して、少し赤くなっている手首を摩る。 「ごめんねぇ?」 「……大丈夫だ」 滝登に軽く微笑む。 終わったと安心していると、大神に手を引かれた。 「帰るよ。送ってあげる」 「……え、あ、ああ」 立ち上がると、大神はおれの手を引いて玄関まで足早に向かう。 「じゃあ滝登、またね」 「うん、また明日しょうくん。おかーさん会いにいってもいい?」 「……ああ、待ってる」 そう言うと、滝登は嬉しそうに笑う。滝登に手を振り、大神と共に部屋を出た。 . [まえ][つぎ] [戻る] |