SMILE!
4
大神は来てくれるか分からない。
他の人に連絡した方がいいかもしれない。だけど、分からない名前ばかり。
ガチャと玄関が開く音がして、急いで携帯電話を鞄に戻す。
どうやら大神の気が向くのを待つしかないようだ。
「おかーさんただいまぁ」
「……お、かえり…」
楽しそうに笑う滝登は走り寄ってきて、抱き着く。拘束されてなければ、普通の状況なのに。
抱き着いた滝登は、おれの首に腕を回す。
「はぁち、」
耳元で名前を呼ばれ、滝登に耳を甘噛みされた。
「…っ、滝登…!」
滝登を力ずくで離そうとするが、意外に力が強くて簡単には離れそうにない。
その間も滝登は飽きる事なく、耳を舐めたり噛んだりしている。
ぴちゃと水音が、ダイレクトに響く。
「…た、きとっ…やめ、」
「あのね、おかーさん」
離れた滝登はおれの目の前に立ち、見上げてくる。
「全部ほしいの」
「……何を、」
「江夏八が」
真顔の滝登が怖い。
滝登がおれの手首に繋がる鎖を引っ張る。
「……っぃ、」
バランスを崩し、床に倒れ込む。
そんなおれを見下ろしている滝登は妖しく微笑んでいて、身の危険を感じた。
「側にいてくれるよねぇ?」
呆然としていると、インターホンが鳴った。
…もしかして大神?
「ちょっと待っててねぇ」
おれの頭を撫でて、滝登は玄関へ向かった。
大神だと、すごく嬉しい。
気が向いたんだろうか?いやでも、大神じゃなかったら、どうしよう。
「……大神、」
ぽつりと名前を呼ぶ。
「何、」
「…え?」
声が聞こえ顔を上げると、寝室の入口の所に大神が立っていた。
ベッドに鎖で拘束されているおれを見て、大神は眉間にシワを寄せた。
「この状況なんなの、どうなってんの?何のプレイ?」
説明してよと大神はおれと滝登を交互に見た。
「あのね、おかーさんとずっと一緒にいたかったのぉ」
「だから、監禁ね…」
「だって、しょうくん!聞いてよぉ!」
大神の腕を掴む滝登。
そんな滝登を宥めるように大神は頭をぽんぽんと叩く。
「何、どうしたの」
「あのね、おかーさんがずっと一緒にはいれないって言ったから、閉じ込めちゃえばいいかなぁって思ったのぉ!」
「極端な考え方するね」
「ダメだったぁ?」
「別にいいんじゃない」
…よくないだろ。
でも大神らしい答えだと思った。
わざわざ来てくれたから、文句は言えない。
.
[まえ][つぎ]
[戻る]
無料HPエムペ!