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SMILE!
2



滝登はおれの腰に腕を回し、見上げてくる。


「おかーさん、大好き」


滝登はまだ勘違いしているんじゃないかと思った。
おれは滝登の親じゃない。滝登はそれを分かっているんだろうか。


「…滝登、」

「なぁに?」

「……おれは、滝登の母親じゃない、」


おれの事をおかーさんと呼ぶのはまだおれと母親を被せているからじゃないのか。
抱き着く滝登を見下ろすと、滝登は笑っていた。


「分かってるよぉ。本当のお母さんはもういないもんね」

「……、」

「おかーさんの名前は江夏八でしょ?ちゃんと知ってるよぉ。おかーさんって呼ばれるの嫌ぁ?」

「……嫌、とか…そういうんじゃ、なくて…」


なんて言えばいいんだろう…
嫌じゃないが、おかーさんと呼ばれるのは複雑だ。


「じゃあおかーさんって呼ぶ。ねぇおかーさん、一緒にいてくれるよねぇ?」

「……だから、それは…」

「どうしてダメなの?おかーさんはボクと一緒は嫌なの?」

「…違う…、」


滝登と一緒にいる事は嫌じゃない。だけど、ずっと一緒というのが無理なだけだ。


「ボクはもうおかーさんと離れたくない。他の所には行かないで、お願い、はち」


おれの名を呼び口元を緩めて笑う滝登が、少しだけ怖く感じた。


「……滝登…、」


楽しそうに笑う滝登を見て、気付かれないように少し眉間にシワを寄せる。どう言えば、滝登は納得してくれるんだろうか…
滝登は背伸びをして、おれの頬にキスをした。驚いて滝登を見る。


「ほっぺただから、別にいいでしょぉ?」


にこりと笑われ、思わず頷いてしまった。滝登はおれから離れ、手を振った。


「じゃあボクもう行くねぇ」

「……え?」

「また会いに来るから、待っててね…おかーさん」


ばいばいと言って滝登は、スキップして温室から出て行った。滝登の後ろ姿を見送り、水やりを始める。
何がしたかったんだろうか、滝登は。…よく分からない。





―side.滝登



久しぶりに帰って来た学園は、だいぶ雰囲気が変わっていた。
おかーさんのおかげかなぁ?
ボクも成長した。
少しだけど大人に近づいた。
おかーさんがどうしても必要だと気付いた。

おかーさんを、
江夏八を好きな人間はきっとたくさんいる。前のボクはただ一緒にいれればいいと思っていた。
でも今は違う。
ただ一緒にいるだけじゃダメ。

ボクのモノにしなくちゃ
きっと満足出来ない。
江夏八は、お母さんと雰囲気が似ている。だから、おかーさんと呼んでいる。

嫌なんだぁ、
おかーさんが別の所に行っちゃうのは。
本当のお母さんじゃない事は分かってるけど、本当の親のように、ボクだけを見て、ボクだけを愛してくれればいいと思う。
そのためには、どうすればいいのかなぁ?


「閉じ込めちゃえばいいかなぁ」


くすりと笑う。
檻の中に閉じ込めて鍵をかけて、鎖を繋ぐ。それから、死なないようにご飯と水をあげる。ちゃんとトイレにも行かせてあげる。お風呂に入れて綺麗にしてあげる。


「…最高の生活でしょぉ?」


ねぇそう思うでしょぉ?
大切に育ててあげるから、ボクの檻の中に入って?
そうすれば、ボクとおかーさんは一緒の人生だよねぇ



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あきゅろす。
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