SMILE! 5 グラウンドの遠くの方に桐也先生が見えた。 生徒と笑って話していて、楽しそうにしている。きっと桐也先生だから、生徒もあそこまで懐くんだろう。 「…八さん、」 後ろから声をかけられ、急いで振り向く。 それが鈴だったから余計に。鈴から話しかけてくれるとは思ってなかった。 おれから謝りに行かないと駄目だと思っていたから。 「……す、ず」 「ちょっといいですか」 「……え、あ…」 どうしようかと、悩んだ。 …正直まだ心の準備が出来ていないから。何を話せばいいのか分からない。 「行っておいでよ」 くしゃりと頭を撫でられ、流星にそう言われた。ちらりと隠岐の方を見たが隠岐はグラウンドの方を見ていた。 「……行ってくる」 「了解にゃ。早く帰って来てね」 笑いかける流星に頷き、歩き出す鈴の後ろをついて行く。 校舎の裏まで来て、鈴は歩みを止め一言…、 「俺が、あの時どうして怒ったかわかりますか」 思い出すのはあの日の鈴との会話と…大神の言葉。 おれに好意をもっている、と。 もし、もしも鈴がおれの事を好きだとしたら何故怒ったのか説明がつく。 だけど、ただ単に頼らなかったから怒ったかもしれない。 聞かなければ分からない。向こうから言われるのを待っていても、何も変わらない。今までだったら、待ってるだけだったけれど。 「…八さんには、わかりませんよね」 嘲笑うように鈴は言った。それが少し悲しかった。 おれが分からない事が当たり前だと…そんな感じ。でもそれは本当の事。 「……分からない。だから、教えてほしい」 「何をですか?」 鼻で笑う鈴。 だけど、目は泣き出しそうなくらい悲しみを帯びている。この表情はおれがそうさせているんだと苦しくなった。 「……鈴は、おれの事…どう思ってるんだ…」 この答え次第で、おれと鈴の関係が決まるような気がした。 鈴は目を見開いて、こっちを見ていたがすぐに真剣な顔になった。 手首を掴まれ、鈴と距離が近くなる。掴まれた手首が異様に熱かった。 「好きですよ」 鈴の言葉が頭の中に響いた。 . [まえ][つぎ] [戻る] |