SMILE!
3
ニヤニヤ笑う流星を剥がして、軽く頭を叩く。
「っいた!何するんだにゃ」
「…ニヤニヤ、しすぎ…」
「だって楽しいんだもーん」
小さくため息をつき、前に目を向ける。
グラウンドには生徒と教師が競技ごとにわかれて、練習していた。すでにテントなどは建ててあり、本部テントに皆集まっている。
「……行かなきゃ、駄目か…?」
昨日の今日で、すごく気まずいんだが…。それに流星との取引の事も、知られているようだし。
俯くと和泉に頭を撫でられた。
「大丈夫だ。それにもう遅い」
遅いってどういう事だ、と顔を上げると皆がこっちを見ており、バタバタと滝登が走ってきていた。
滝登はそのままおれの首に抱き着く。
「おかーさんっ」
「……滝登、」
何故か涙声の滝登の背中をぽんぽんと叩く。
「……どうした?…何か嫌な事でも、あったのか…?」
「ううん、違うのぉ。おかーさんがね、どっか行っちゃう夢、見たからぁ…」
「…そう、か。…おれは、ここにいるぞ…?」
「うん…!」
優しく頭を撫でてやると滝登は笑って返事をする。
どこかへ行ってしまう夢か。それが正夢にならなければ、いいんだが…
これから先の未来は滝登にもおれにも…、誰にも分からない。
抱き着く滝登をやんわりと離して、皆の元へ行く。
何て言えばいいのか分からず、黙って俯いていると、誰かに抱きしめられた。ゆっくり顔を上げると、黒髪が見えた。
「……五十嵐…?」
「…ん……ケガ、ない…?」
昨日の火事の事を心配しているようで、五十嵐はじっとおれを見つめる。
「…大丈夫、ケガはしてない」
「……よかった…心配した…」
「…すまない…」
余計な心配をかけてしまった。
そりゃああんな風に皆から逃げてしまえば、心配されるのは当たり前なのかもしれない。
「お前が謝る必要はねぇよ。ああなったのはオレ達に責任がある。お前は悪くねぇよ」
そう言ったのは加賀谷で、苦笑しておれを見ていた。
だから、どうしてそうなる?
おれが何も知らないから、加賀谷達の責任になるって?
それは違うだろ。今回の火事については、誰の責任でもないのに。
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