SMILE!
トモダチ side.栄
食堂を泣きながら飛び出した風大を追いかけ、風大の部屋の前でやっと捕まえた。
「風大…」
止まらない涙を制服の袖で必死に拭っている。
「…っさ、かえッ…お、れっ、何も悪く…ないよなっ?」
「……うん」
泣きじゃくる風大に、ただ頷くしかない。
「…なんでっ、あの人が…」
あの人は多分江夏さんの事。
風大は隠岐様達が自分を見ずに、江夏さんを見ている事が、嫌なんだ。
まるで子供。母親が構ってくれなくて、駄々をこねる。
「風大、江夏さんには江夏さんにしかないものがあって、それがきっと……隠岐様達を引き付けるんだよ」
「…江夏さんに、しか…ない?」
「うん」
はっきりと頷くと、風大はぼくの腕を掴む。
「…さかえっ…どうすればいいんだッ……オレの居場所が、なくなる……そんなのイヤだっ!なぁっ栄、オレ達、友達だろ!?教えてくれよ!」
「風大は、江夏さん…キライ?」
「…あんな人、好きじゃない」
その言葉を聞き、ぼくは微笑む。
ねぇ、風大…ぼく達、親友になれるかもね。
「じゃあ、江夏さん消そっか」
「…え?」
呆けた顔をする風大に、にっこりと笑いかける。
「江夏さんがいなくなれば、隠岐様も皆様も風大を見てくれるよ」
江夏さん、邪魔でしょ?
そう言えば、風大は頷いた。
「アハハハッ」
風大と別れ、自室に帰り自分の部屋に入る。同室者はまだ帰って来ていない。
面白くて堪らない。赤塚風大は嫌われていた。好かれていたのは江夏八。赤塚風大は使える。大切な駒。
それにしても、ムカつくのは江夏八。紅の皆様に守られて、更には生徒会や風紀の皆様までもが、気にかけている。
そこは風大でもなく、江夏八でもなく、
べに様である、ぼくの場所。
「許さない。死んじゃえばいいのに…」
勉強机に広がる無数の写真の中から、江夏八を探し出し、カッターを突き立てる。
「風大、君も最後はイラナイ」
今度は風大の写真を探し出して、ビリビリと破る。それを床にばらまく。
友達?親友?そんなもの邪魔なだけ。
引き出しの中から、ファイルを取り出す。
ぼくの大事なコレクション。晃雅様や、一沙様、上総様の写真。
全て、隠し撮りされているもので、こういう写真は親衛隊内で売買されている。
「ああ、晃雅様…美しい」
今すぐにでも、貴方を手にいれたい。
もうすぐ、もうすぐ、貴方はぼくのモノ
待っていて。すぐに邪魔な奴らを消すから。
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