SMILE!
2
「俺達が双子だって言う度に双子なのに似てないんだねって毎回さ、同じ事ばっか」
笑っちゃうよね、と言った咲は笑えてなかった。
「似てないって俺達に言われても仕方ないじゃん…生まれた時にはそうなってたんだから」
「咲は僕よりも、それを言われるのを嫌がったよね。弟だから」
「そうそう。何で俺は菊と違う顔なんだろーって考えても仕方ない事を、ずっと考えてた」
咲は起き上がり菊の隣に座ると、菊の頬にそっと触れた。
「この顔と同じだったら、何も言われずに済んだのかなぁって。何もかも同じ双子だったら、みんなそれで納得するの?」
何もかも同じ。それは違うと思う。おれからしたら、全て同じなんて嫌だ。
菊がいて、咲がいる。
それでいい。
「菊と同じ顔になれるように整形でもしちゃう?」
自嘲気味に笑う咲に菊は怒ったような顔をするだけで何も言わなかった。
「…おれは、咲のままがいい」
「…え?」
咲も菊もじっとおれを見つめる。
「……二人が同じ顔…だと、おれは、きっと見分けられない…から…だから、今のままがいい」
おれの勝手な意見だけど、見分けられないのは困る。
「…っあははは!八さん、正直すぎるでしょ!」
咲は声を上げて笑った。
何か面白い事、言ったか?
「八さん、ありがとうございます。そんな事言ってくれたの八さんくらいですよ?」
菊も少し笑っていた。
二人に近付き、咲と菊の目元に触れる。咲の眼鏡の邪魔にならないように。
「「八さん?」」
「……目は、似ていると思う」
あと二人の雰囲気、
そう言えば、二人は驚いた顔をした。
ああ、驚いた顔も似てる。やっぱり双子だなぁと感じた。思わず、口元を緩める。
「八さーん!」
「…っさ、咲…?」
突然抱き着いてきた咲。それを見た菊もじゃあ僕もと言っておれに抱き着いた。
「……菊…、」
二人いっぺんに抱き着かれ、少し苦しいけれど、まあいいか…とおれも二人の背中に手を置いた。
「…やっばいなぁ、依鈴にライバル宣言しとく?菊」
「そうだね、でもまだ内緒にしとこうか?」
何の話だ?鈴にライバル宣言?
「……何の、話だ?」
「「秘密」」
クスクス笑う二人に眉を寄せる。
そんなおれを見て、咲と菊は、両側からおれの口元にキスを落とした。
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