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SMILE!
3



「行くぞ」

「はいはぁーい。はちゅは、しばらくしてから出て行ってねー」

「歓迎会中は、ここ立入禁止だからね」


そう言って、隠岐達は部屋から出て行った。


「……」

「……、」


無言で見つめ合うおれと五十嵐。
気まずくて、目線を反らすと五十嵐がおれの手を握った。


「……い、いがら、し…?あ、の手―」

「……行こ」


手を引っ張られて、五十嵐に連れて行かれる。
青柳が、しばらくしてから出てって言ってたのにいいのか?まだ一分くらいしか経ってない。


「……いい、のか?…もう、外出ても」

「……ん」


大丈夫という事なんだろうか。
五十嵐と外に出る。まだ始まっていないのか、静かだった。


「……今日、仕事は」

「…え、ああ…今日は、温室だけだ」


昨日はひどい雨だったし、今日はやらなくても大丈夫だ。あんまりやり過ぎるのも、良くない。


「……温室行く、どっち」

「…あっち」


温室の方向を指差すと、五十嵐は歩き出した。今だに手を繋がれているので、当然おれも五十嵐について行かなければならない。少し前を歩く五十嵐に声をかける。


「…五十嵐、手…離してくれ」


そう言うと五十嵐は立ち止まり、おれを振り返った。


「……繋ぐの…嫌?」

「…嫌、じゃ…ない、けど」


嫌じゃないけど、けどこの歳になって、手を繋ぐなんて思わなかった。


「……い、がらし?」


何故か頭を撫でられた。よしよしと子供をあやすように。
相変わらず無表情な五十嵐は何を考えてるのか分からない。


「……じゃ、行こ」

「…あ、ああ」


五十嵐と無言で手を繋ぎ歩く事、数分
誰にも会う事なく温室についたと同時に、また放送が流れた。


《歓迎会スタートだよー!》


一回目と同じ…確か香西杏が一言そう言って放送は終わった。
五十嵐が先に温室に入り、後からおれが入った。


「……綺麗、」


ぽつりと五十嵐が呟く。
たった一言だったけど、嬉しくなった。


「…あ、りがとう」


五十嵐にジーッと見られ、恥ずかしくなる。


「…み、水やり…してくるから」


繋いでいた手を解き、五十嵐を椅子に座らせて水やりに行く。



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あきゅろす。
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