SMILE! 4 五十嵐を待たせるのも嫌だったので水やりをさっさと終わらせた。椅子に座っている五十嵐に近づくと、五十嵐はうとうとしていた。 「…五十嵐、」 ぽつりと名前を呼ぶと五十嵐は欠伸をして目を開けた。 「……終わった?」 コクンと頷くと五十嵐は椅子から立ち上がり、またおれの手を取った。 「…五十嵐…、どこ行くんだ?」 「……散歩?」 何故、疑問形 歓迎会中に散歩なんかしてても大丈夫たんだろうか?それにしても、おれと五十嵐が手を繋ぐ理由が分からないんだが。 温室を出て、校舎近くを五十嵐とうろうろと歩く。 歩いていると、五十嵐が急に立ち止まり、おれを背中の後ろに隠した。 「やっと見つけた…と思ったら、厄介な奴と一緒にいるなあ」 そこには加賀谷がいた。 「おい、五十嵐そいつ渡せ。鍵、そいつだろ?」 「…ダメ」 何で、おれが鍵だって加賀谷は知ってるんだ? 「…五十嵐、おれ」 「…ダメ」 まだ何も言ってない。 ただ、おれは加賀谷と話してみたいと思っただけで。 「…じゃ、じゃあ…10分だけ」 そのくらいなら、加賀谷と話しても大丈夫だろう。 ジーッと見つめてくる五十嵐。10分はダメなのか? 「…じゃあ、5分…」 「……3分」 …3分…、仕方ない、か。 五十嵐を待たせるわけにもいかないし。 「…わかった、3分で帰って来るから」 「……絶対」 「…はい」 返事をすると、五十嵐は繋いでいた手を話してくれた。 加賀谷の側まで行くとついて来いと言われ、大人しく加賀谷の後ろをついて歩く。ふと五十嵐を振り向くと無表情だったが、どこか嫌そうな顔をしていた。 ついたのは誰も来ないような林の中。そこには一つベンチが置いてあった。 加賀谷はベンチに座ると、おれを手招きした。ちょっとだけ加賀谷に近づく。 「そんな警戒しなくても、指輪取らねぇから安心しろよ」 指輪を取るつもりないのに、何でおれを探してたんだろう?というか、何でおれが鍵だってわかったんだ? 「…何で、おれが…鍵だって、わかったんだ…?」 「勘」 勘って… 「紅の担当が四日続くなんて事は今までなかったし…、もしかしたら、お前が鍵かもなあと思ったわけだ。で、暇だったんでお前を探してたんだよ」 歓迎会中なのに暇なのか。今回は赤塚が鍵だから加賀谷は暇という事か。 . [まえ][つぎ] [戻る] |