43:【覚悟の無さ】
『・・・・・・』
ムクッ
『やべ、このまま寝たいかも』
ボフッ!!
「肉〜〜〜〜〜っ!!!!」
僕がそろそろ、と思い起き上がった時、少し離れた所からルフィの声が聞こえた。
『あ!!そうだ!ルフィ・・・!』
ヤバいヤバい!ルフィは重傷なんだ!!寝てる場合じゃねェよ!!
わたわたと慌てて流砂に近寄って中を覗き込む。わわわルフィィィィ!!!
『ルフィィィィ!!危ねェ!!』
僕は飛んで、沈みかけたルフィを慌てて砂の中から引っ張り出した。
「ケホッ!!ガハッ!!」
『うわわわわ!!ルフィ!物凄い血が!!』
「うっ、ハー・・・ハー・・・ありガとう・・・」
『お前っ!そんな事より重傷・・・!』
「君は・・・!」
『え?あ!ペルさん!隼のペルさん!!』
後ろから声が聞こえて振り返ったら、なんと隼のペルさんだ。てかペルさんも重傷に見えるんだが!?
「君は確か、ビビ様と一緒に居た・・・!ビビ様は!?今どちらに!」
『大丈夫!!ビビちゃんはルフィの仲間みんなが守ってる!!アルバーナに向かってるから!てかペルさんも重傷・・・』
がしっ!!
「肉(にぐ)」
『!!? 分かった!!分かったから!!肉持ってくるよ!!ペルさん、ルフィを少し頼みます!僕急いで肉持って来ますんで!!』
「待つんだ。君の足じゃいくらか時間がかかってしまう。それにコレは重傷だ。一旦町に戻り治療しよう」
『いや、治療は大丈夫です。肉食ったら復活するんで。あ、でも水がいるな・・・よし、一旦町に戻りましょう』
「だが足がないな・・・この少年1人なら運べるんだが、私も見ての通り怪我で2人も運べないんだ」
『大丈夫です!僕も飛べるんで!!』
バサッ、と翼を広げて見せれば、驚いた表情をしたペルさん。ペルさんは軽く頷くとルフィを一緒に抱え、羽ばたいた。
町に着き、飯屋でどんどん肉料理を運ばせる。
ガツガツガツガツばくばくばくっがつぱくぱくモグモグモグモグ
「す、凄い勢いだな・・・」
『まだまだ行きますよ。ペルさん休んでいて下さい。痛々しいんで』
「いや、大丈夫だ」
ガツガツばくばくぱくっもぐもっうっ、んー!!
『いや、少し横になった方が』
「ビビ様が頑張っていらっしゃるのだ。そんな訳にはいかない」
『(素直に横になろうよォォォ)・・・そうですか』
んっ、んー!!うんー!!うぅぅ、ぅ、ガァーー・・・
『ってルフィ君!?えっ!?何!?喉詰まらせたの!!?みみみ水ゥゥゥ!!』
全く世話の係る!早く意思表示しないか!!え?してた?
「っ、ぷはーー!!ふー、危なかったー」
『アホゥ、ゆっくり食いなさい!!』
「そんな時間ねェじゃねェか!!」
『ま、まァそうだけど』
「ルフィ、と言ったな。ルフィ君、君のおかげでビビ様は無事にここに来れたのだな。・・・礼を言う」
「いや、いいんだよ。それにまだ終わってねェからな!!よし、しっかり食って元気出たし、行こう!!!」
『待ってルフィ。持って行く物があるよ』
「! そうだ!!俺、あいつの弱点を見つけたんだ!!」
『そうそう、水樽を買いに行こう』
「おう!!」
僕達は水樽を買うと、ペルさんの背中にルフィを乗せアルバーナへと出発した。
待っててビビちゃん・・・!
* * *
全速力で飛び続け、アルバーナが見え始めた。体力つけといて良かった!
上から見下ろす景色は血の海、倒れた人で溢れかえり、まるで地獄絵図だ。僕は怯んで下を見るのを止めた。だが次には下に降りて皆を探さないといけない。こんな惨状を嫌がっている場合ではない。
『ルフィ!!僕は下に降りて皆を探すよ!!クロコダイルをぶっ飛ばせ!!』
「おう!!」
僕は低空飛行して地面に降り立った。
そして皆を探しに走り出した。
あちこちから悲鳴が上がり、目の前で人が倒れ、命が失われた。
僕は思わず目を瞑りかける。今までこんな所に身を投じた事など、もちろん一度も無かった。
今まで自分が、どれ程安全な場所に居たのか、この世界にくる前の生活から何にも変わってなかった。
いくらマルコ隊長に体術や剣術を教えてもらっても、本当の戦闘を知らない僕の甘さなんか変わるはずもない。
結局何時までも甘いままだったんだ。
ここは戦場だ。そんな甘さを持っていたら、こっちが死ぬだけだ。生き抜くならそんなの捨てるしかない。
それが、海賊の、僕が白ひげ海賊団に入った道だ。
なのに。
『(怖い・・・)』
人を傷つけ、時には命を奪う。
それを自分がするのか。
ロビンちゃんと戦った時なんて、僕は人に刃物を当てる事に緊張した。キフリと組み手した時とは訳の違う、命のやりとりだった。あの時間違えば、僕は死んでいたかもしれないのだから。
人の、命を奪っていたかもしれないのだから。
ドクドクと心臓が鳴り、緊張が高まる。
―――怖い――
『(エース・・・!!)』
怖くて仕方ない僕は、すがるようにエースの名を心の中で唱えた。
『(・・・!アレはたしぎちゃんだ・・・!)』
前方に海軍といるたしぎちゃんが見えた。たしぎちゃんは僕がエースと一緒に居た所見てたっけ・・・。
どっちにしろ海軍は面倒だし、別の道に行こう。
僕がくるりと反転した時だ。
「そこのあなた、待って下さい!!」
『Σ!!?』
え?やっぱり顔覚えられてたのか!?どどどどうしよう!!
「あなたの腰の剣、良業物、妖刀"翠万色"ではありませんか!?」
『えっ、あっ、』
ななな、なんだ、刀の事か!びっくりしたー!
「(あの時見た翠万色を、こんな少女が持っていたなんて・・・)あなたは反乱軍なのですか?」
『い、いえ!僕は反乱軍じゃありませんよ。それと国王軍でもありません』
「じゃァ何故こんな所に・・・」
『・・・友達を探しているんです!』
「友達・・・!?まさか、この戦いの中に巻き込まれたのですか!?」
『そんなところです!!すいません!とにかく僕は急がなきゃいけないんです!!』
たしぎちゃんを無理に振り払って、また走り出そうとする。
が、たしぎちゃんに腕を掴まれてしまった。
「あなたの友達は私達海軍が見つけ出します!!ですのであなたはここを離れて下さい!!何か友達の特徴など教えて頂けますか!?」
『いやっ、あの!!結構ですから!!』
うわわわ!面倒な事になってきた・・・!
その時だ。
「曹長!アレを!!」
1人の海軍兵が声を上げ、指を指した。見やるとそこに居たのは、
「道を開けなさい。急いでいるの」
「! できません!!!このアルバーナで起こっている事は、倒れていた兵士に全て聞きました!!あなた、その人を誰だと思ってるんです!!?」
! ロビンちゃん・・・!それにビビちゃんのお父さん!!コブラ王!!
ロビンちゃんはポーネグリフ(歴史の本文)のある所に行くのだ。
コブラ王が重傷で、脅されて連れ回されている様子にたしぎちゃんや海軍が行かせまいとする中、コブラ王から大変な事実を受ける。
「待て海軍!!私の事はいい!!今反乱の起きている宮前広場に、午後4時半!!!砲撃予告を受けている!!!何とかそれを止めてくれ!!!」
「100万人の国民の命が懸かっているのだ!!!」というコブラ王の声に焦るたしぎちゃん。
「・・・だったら!!あなたを助けて爆破も止めます」
キッ、と判断し「構え!!!」と声を張り上げた。
それをコブラ王が制止しようとしたが遅かった。
ロビンちゃんが能力で、海軍達を半分近く一掃した。
「・・・能力者・・・!!!」
「急いでるって言ったでしょう?私を怒らせないで!!!」
「曹長!!!この女・・・!!!ニコ・ロビンです!!!間違いない・・・!!!」
軍曹が気づき、ロビンちゃんの経歴を話し出す。
ロビンちゃんは苛立ちを隠せずに怒鳴りだす。
「ゴチャゴチャとうるさいわ・・・!!!道を開けるの!!?全員死にたいの!!?どっち!!!」
ロビンちゃんに多勢の意味はない、と理解したたしぎちゃんはまだ動ける軍曹や海兵に、爆破を阻止するように指示を飛ばす。
「さァ、その人を離しなさい!!!」
「邪魔だって言ってるじゃない・・・」
「!!」
『・・・!!』
ギュッ!!と僕は目を閉じた。その後に続いた叫び声。眼鏡の割れる音。
体が震えた。
僕は何時の間にか座り込んでいた。恐怖で体が動かない。
骨の折れる音と、断末魔の様な叫び声によって、僕は完全に打ちのめされていた。
ただ過ぎて欲しいと、思うしかできなかった。
「うぅっ・・・待ちなさい・・・!」
「何度、向かってくれば気が済むの・・・!?」
「ああ!!!」
必死に縮こまっていた僕の、隣を通る気配。
「早く、逃げなさい。あなたはここに居るべきではないわ」
『!!!!』
ハッ!と目を開ける。振り返るとロビンちゃんとコブラ王の背中が小さかった。
僕はゆっくりとたしぎちゃんを見た。・・・見るからにボロボロ。大丈夫、かな・・・?
『たしぎ、ちゃん、だいじょうぶ・・・?』
凄く声が震えているのが分かる。
・・・僕は、
「ハァ、だいじょ、ぶです。ハァ、ハァ」
『・・・っ』
「早く、ハァ、あなたは、この場から、ハァ、逃げて・・・」
『・・・僕は、』
その時だ。
「クハハハハハハ・・・。あの女にやられた様だな・・・」
「『!!』」
「まさかこの町まで追いかけてくるとは・・・。海軍、てめェらのボスはどうした。ケムリ野朗は逃げ出したか」
「・・・!!」
「負け犬は正義を語れねェ・・・!!!ここはそういう海だぜ・・・!!!てめェらは基地へ帰って、せいぜい正義の話し合いでもやってろ・・・!!!」
クロコダイルだ。クロコダイルはたしぎちゃんを嘲笑い、僕を見た。これもまた口元を歪ませて。
「友達よォ・・・麦わらのルフィは俺が殺した。全くフザケた野朗だった・・・」
『!』
「(・・・友達!?)」
クハハハハ・・・と愉快に笑う。
「一応知らせておこうと思ってなァ・・・!・・・さて、行くとしよう。俺は急ぎでな・・・」
僕は段々と怒りが沸いてくるのを感じた。
たしぎちゃんを嘲笑っただとか、ルフィを殺しただとか、それもあるけど。
『待ってよ』
「?」
歩き出したクロコダイルを引き止める。僕は立ち上がると翠万色を抜き、クロコダイルに突きつけた。
『僕は、逃げない』
僕が怒っているのは、
「・・・俺と殺ろうってのか」
『もう、逃げない。この状況からも自分からも!!』
自分の覚悟の無さだ。
「・・・」
『・・・それに、ルフィは、あんたを超えて行く男だ・・・っ!!!』
ダッ!!!と勢いをつけてクロコダイルに向かう。そして横薙ぎにクロコダイルを切った。
だが切れたのは砂。僕は咄嗟に後ろに下がり距離を取る。
「俺を超える、だァ・・・!?笑わせるんじゃねェ!!あいつはもう死んだんだ」
上を見上げると上半身だけ形を作っているクロコダイルが居た。
「俺は急いでんだ。てめェの相手なんざしてられねェ」
『待てよコノヤロウ!!!ポーネグリフの所には行かせねェ!!!』
そのまま飛んで行こうとするクロコダイルを追う為、僕は翼を広げた。
その時、クロコダイルの目が異様に驚いた様に見開かれた。
『・・・?』
訝しげに思った僕は動きを止めた。何だろう?
「・・・能力者か・・・?」
『・・・能力者じゃない・・・』
「じゃァ、”落とし子”か・・・!?」
『! ・・・そうだとしたら・・・?』
「俺と来い!!!」
『うわっ!!!』
・・・えっ?
「逃げようとすんじゃねェ・・・その瞬間、てめェは干からびる」
『はっ・・・?えっ?はァ!?ええええ何何何何なんでs「うるせェ黙ってろ!!」ええええ・・・!!?』
何が起きたかというと、僕、
『拉致られるゥゥゥゥウウウ!!!』
クロコダイルに捕まって、拉致された。
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