純真無垢(復活 山本)
かっきーん
金属音が
桜の舞い散る校庭いっぱいに響き渡った。
「山本君カッコいいー!!」
「ステキー!!」
黄色い声が耳に障る。山本とか誰だよ。
席替えの時に男子を脅して無理矢理奪った窓際一番後ろの特等席から校庭を見下ろす。後輩が野球をやっていた。
山本という生徒がホームランを打ったらしい。もはや英語の授業など誰も聞いていない。窓に身を乗り出し声援を送る者、やっていられないと携帯を弄りだす者、それぞれが個人の趣味に走っていた。
観月も例外ではなくポケットからMP3プレイヤーを取り出して音楽を聞く。
曲を変えようと思い、プレイヤーを弄りだした時だった。
ガッシャーン
けたたましい音を立てて観月の傍のガラスが割れた。あまりの急な出来事に観月は何も反応出来ず、腕に割れたガラスが突き刺さる。あまり大きな破片では無かったが痛いものは痛く、観月は顔をしかめる。
「観月ちゃん!!大丈夫!?」
周りが、ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるものだから顔は歪んでいくばかり。
「観月。保健室行くぞ」
隣の席の大竹君が観月の腕に支障が無いように立たせてくれた。彼はとてもいい人で、ここはお言葉に甘えようと観月は教師に一言かけて教室を出る。
「大竹君。ありがとね」
「ん?あぁ、全然かまわねーよ。それより腕、大丈夫か?結構深く刺さっただろ?」
大竹君が観月が庇っている腕を覗きこむ。
「ちょっ、近い近い」
「わ、悪ぃ」
あまりに顔が近い者だから観月は思わず顔を赤らめる。大竹君の顔もどことなく赤い。
そこから何となく恥ずかしくて、会話の無いまま医務室に向かった。時折目があっては慌てて反らすという事が何度も繰り返される。
手当てが一通り終わると大竹君は「お大事に」と言って教室に戻っていった。
保健室に残った観月は意味もなくベッドに寝転がる。全く、野球ボールを窓に打ったやつの顔が見てみたい。そう思った時、保健室の扉がガラガラと開いた。
「沢村観月先輩居ます?」
「私が沢村だけど…」
扉を開けた主は中々に整った顔の持ち主で、雰囲気からモテるんだろうなと、観月は心の中でこっそり思う。
「ボール打ったのオレなんすよ」
「へえ」
それで。と観月は心の中で呟く。
「すんませんでしたっ!!その、余所見してたら先輩のクラスに打っちまって・・・」
「別にいいよ。ちょっと刺しただけだし。それから君、敬語使い慣れてない?タメでいいよ。気持ち悪いしさ」
「なら、遠慮なくそーさせてもらうのな。観月先輩は寿司好き?」
「まあ、好きだけど・・・」
急に名前に先輩付けされて観月は少なからず動揺した。当の本人は呑気に笑いながらこちらを見ている。
「うち、寿司屋やってるから今日食いに来ねーか?」
「は?」
お詫びがしたいそうだが、いくらなんでも急すぎる。彼に悪気は無いのだろうが、それは流石に遠慮願いたいところだ。
「いや、別に気にしなくていいってば。こっちも気を使っちゃうし」
「いいから気にすんなって」
そんな押しに負けてしまった。彼の人柄のせいでもあるだろう。キツく言おうにも言えないのだ。
「分かった。そういえば、名前は?」
「山本武。武って呼んでくれよなっ」
あぁ。この子が噂の。野球部の期待のエースってか。中1でレギュラー入りとはたいしたものだなとか思ったけど。観月は女の子達の会話を思い出す。
「それじゃ、行くか」
「え?ちょっと!!」
観月の手を取って歩き始めた山本。あまりの展開に観月の頭はついていかない。
気づくと山本の家、つまり家まで連れて行かれて半ば強制的に客席に座らされた。
「おう武。彼女か?」
「ん?違ぇって。先輩。まあ彼女になってくれたらいいんだけどな」
「はい?」
目が点になる。
「若ぇっていいなあ。武、男ならやるときはやれよ?」
目の前で会話にまたしてもついていけない。
「んじゃ、俺の部屋よってくか?」
「いやいやいやいや」
「遠慮すんなって」
もはや私の意見など関係ないようだ。観月は半ば諦めにも近いため息をついた。
部屋に案内されてベッドに座る。
「で、山本君よ。私、ここまでしてもらう義理がないんだけど。」
「ん?俺がしたいだけなのな」
さらっとこういう事を言う彼は凄い。さぞかしモテるのだろう。というよりも
「山本君モテモテだよね」
「んな事ねーって。それにオレ、観月先輩が気にしてくれたらそれでいいしなっ」
彼はまたそんな問題発言をした。顔が赤くなるのをほんの少し感じたが、窓に映る夕焼けのせいにした。
純真無垢
(山本君)
(何すか?)
(心臓に悪い)
(え?先輩、病院行きます?)
(・・・なんでもないよ)
─────
あーあ。訳分かりませんね。
これは大竹君夢か、と突っ込みたい。
というか私の中だと山本<大竹
という不等式が←ぇ
とにかく初のリボーン夢です。
私にはシリアス以外向いていないのかもしれない
2010/11/02
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