不即不離(時かけ 功介)
「神様になりたいな」
そう言ったら真琴に大笑いされた。笑い事じゃないのに。観月は不貞腐れた。
「だって、神様って何でも出来るじゃんか」「観月は功介が好きなだけでしょ?」
ニヤニヤしながら真琴が言う。それが憎たらしくて観月はぎろりと真琴を睨み付けた。
「いいよね。真琴は。功介君の傍に居られて」
「んー?観月がいつも話せて無いだけじゃん。」
真琴にそう言われると観月は何も言えなかった。確かに、自分は功介君の前でろくに喋れた事がない。
「ねー観月。」
「何よ」
ふふふ、と真琴が何か企むような笑いをした。怪しい。真琴がこんな笑いをする時はろくな結果にならない、と観月は思った。
「あたしが観月と功介をくっ付けてあげる!!」
「あんたに出来るなら私は苦労してない」
「まあ、天才真琴様を見てなって」
やけに自信ありげな真琴。もう止めようがない。
「はいはい。それじゃあよろしくね。真琴様」
「おうよ」
それから1週間。何ら変わりのない日々を過ごした。もとから期待すらしていない観月はやっぱりか、とまたぼんやりと空に浮かぶ雲を眺めた。
「沢村居るか?」
あぁ、功介君の声が聞こえる。観月はとうとう幻聴が始まったか、とまた窓に目を向ける。
「観月!!津田君に呼ばれてるよ!!」
友梨ちゃんに声をかけられてようやく気付いた。
「功介君が?」
急いで観月は廊下へ向かう。好きな人に呼ばれて行かない馬鹿は居ないだろう。
「どうしたの?」
観月は寝癖で撥ねている髪を必死で押さえながら功介に聞いた。こんな事なら朝、早起きすればよかった。
「沢村が俺に用があるって、真琴が。」
あの野郎。観月はとんでもない事をしてくれたと今はいない真琴を恨んだ。
「あの、あのさ。功介君って気になる人とか居る?」
「ん?あぁ、最近真琴のやつ。最近テストの点いいんだよなー。馬鹿に負けるなんて屈辱だ。負けてられない」
「…そう。好きな人とかは居ないの?」
観月が意を決して聞いてみる。
「居たら真琴達とつるんでねーよ」
「だよね。ゴメンね?変な事聞いて」
自分が真琴に千昭に功介君の間に入ったら三人の関係が崩れてしまうかもしれない。観月はそう思った。なら、別にこのままの関係でもいいんじゃないだろうか。
「沢村も一緒に野球やるか?」
「やる。やりたい!!」
功介君を想えるだけで幸せだし。
それに野球やる功介君が見たいし。
不即不離
(真琴、三途の川を渡る準備は出来た?)
(ちょ。何の話!?あたし何もやってないってば!!)
(へ?あんたが功介君を呼び出したんでしょうが。)
(悪ぃ、沢村。あれ俺が沢村と話したかっただけ)
(ゴメン真琴。私今なら死ねる)
(ちょ、観月!!)
2010/09/29
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