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そうだ、犬の散歩に行こう。(魔法 黒犬)



「ブラック、散歩に行こうよー」
「名字で呼ぶなって何度言えば分かる!?」

厄介な奴と付き合ってしまった。シリウスは思わず頭を抱える。レノアとの出会いは最悪で、付き合う時も最悪だった。

確かあの時、俺はスニベルスに会って最高に機嫌が悪かった。

「いてっ」
誰かに思い切りぶつかった。俺はとても苛ついていたので、ぶつかってきた主を睨み付けた。ところがそいつは目をキラキラと輝かせて言った。

「何かに似ていると思えば犬だ!!」
「あ"ぁ!?」

そいつが俺の事を犬だ、などと答えを当てた子供のようにはしゃぎながら言うものだからますます腹が立ったのを今でも覚えている。あれは怒れた。

「お前、ぶつかっておいてどういうつもりだ!?」
「うーん。分かんないけど、犬にぶつかったんだから謝らなくていいかなって」

女子に寛大な俺でも一度殴ってやろうかとも思ったほどであった。ぶつかった張本人であるコイツは、へらへら笑いながら今日の夕飯なんだろうだとか言っているので怒りを通り越して呆れてきた。

「とりあえず、お前。レイブンクローだよな?」
「ううん。私スリザリンだよー。えへへ〜」

おかしいだろ。どう考えてもスリザリンの柄じゃねぇよ、コイツは。しかも制服レイブンクローだし。

「あ、これはコスプレだよ。コスプレ。東洋で流行ってるんだってー」

はぁ。ため息が出る。

「あ。そうそう。ブラック。私と付き合ってみない?」
「は?」

何を言うかと思えばこの女。女子にも対して困っていないこの俺にまさか、付き合えと言うとは。しかもスリザリン寮生。常識からしてありえない。

「スリザリンとグリフィンドールの禁断の恋、みたいな?」
「・・・いいぜ?」

コイツでとことん遊ばせてもらおう。そう思ったのだったが・・・。

「ブラックー、ここに大王イカがいるらしいよー。きっとブラックと違って可愛いんだろうね」

「ブラックー。もし、虫に生まれ変わるとしたら何がいい?私はカマキリかなぁ」

などと、とんちんかんな話題ばかりを提供してきて、完全にレノアのペースだった。

別れればいいものを何故か別れられないのは何故だろう。心の奥のどこかでコイツといるのも悪くないと思っている自分がいるのかもしれない。まあ、飽きないからいいんだけどな。


「シリウスって空に住んでいる犬の名前だよね、確か」

おいおい、星座も分からないのかよ。というかお前本当にスリザリンか?この前ハッフルパフの奴と仲よさげだったけど。



そうだ、犬の散歩に行こう。



(お前って馬鹿だよな)
(犬のくせに生意気だね、黒ちゃん)
(ちょっと歯ぁくいしばれや)
(ごめんねー、はい骨あげる)
(やっぱ殴る)


2010/09/27




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