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渡しませんから(オリジナル 大竹)



「大竹君、ちょっといい?」

昼飯をサッカー部仲間と食ってたら、観月に声をかけられた。むさい奴らと想い人のどちらを取るかと言われたら当然想い人を取るわけで。

「あぁ、いいぜ?」

ついていくと、そこには女子がわらわらと居た。こちらを見てキャーキャーと黄色い声を上げる。自分の眉間に皺が寄るのを感じた。

「ゴメンね?大竹君と話がしたかったみたいで…。迷惑だったよね」

困った顔をする観月に少し良心が痛む。そんな顔をするなよ。

「きゃー、格好いい。今の見たっ!?あたしを見てたよっ!!」
「違うって、ウチを見てたんだよ!!」

「大竹君、モテモテなんだね」

笑ってそう言う。いや、お前に好かれなきゃ意味ないから。

「それじゃ、仲良くやってあげて」

観月がそこを去ろうとした。え、俺を置いていくの?

「ちょ、待てよ」

咄嗟に観月の腕を掴む。細っ!!…やべ、やっちまった。女子の塊の方から悲鳴が聞こえた。

「お、大竹君?」

流石に観月も驚いたようで、完全に止まっていた。

「悪ぃ」

あー、俺カッコ悪いな。いっそこのまま告っちまうか?いや、それはKYってやつだよな。あえてのKY?AKY?

結局、ここで想いを伝える勇気を俺は持っていないわけで、急いで観月の手を離す。観月がはっとなった。

「大竹君、手、大きいね。さすが男の子」

そんな事をいわれると顔が赤くなる。少しは意識してもらえているのだろうか?

「お前が細すぎるんだって。」

観月が笑う。そんなことない、だなんて彼女は謙遜するけど、もうちょっと丸い方がいい。ほら、抱きしめるときに気持ちいいし。とか、親父臭い事が頭を過ぎる。

観月が可愛いのが悪いんだよ。
とか責任転嫁してみたり。

「あ、やっぱり嫌だった?」
「何が?」
「知らない子と話すの」
「…まあ。」

でも、観月の頼みとなると断れない。これが惚れた弱みってやつか。ひとり納得する。

「ゴメン。大竹君この後部活のミーティングらしいから」

観月が女子達に向かって断りを入れると俺の手をぱっと掴んで歩き出した。あれ?え?えぇぇっ!?

状況が飲み込めず、あたふたする。え、どういう事?

歩いて廊下に出た時、ようやく観月が手を離した。少し名残惜しい。

「ゴメン、急に手掴んだりして。嫌だったよね」
「いや、全く」

即答してしまった。ちょっと怪しいかも

「助かったよ。観月が助けてくれなかったら俺がそうしてたかもしれないし」
「ふふふ、なら良かったー。迷惑だったらどうしようかと…」

おい、女子共。ナイス。観月と手を繋がせてくれたんだから

「あ。観月先輩じゃないっすか」
「山本君、久しぶりだね」

こちらに爽やか野郎がやってきた。観月が笑顔で手を降る。誰だアイツ?

ライバルっぽい奴の出現に俺は警戒した目つきでそいつを睨む

「こっちの先輩は?」

爽やか野郎が俺の方を見て観月に聞いた。観月は何て俺のことを説明するんだろうか?

「こちらは大竹君。私の一番仲いい友達…かな?」

まじで?ちょ、嬉しすぎる。

「へぇ、大竹先輩…ねぇ。」

爽やか野郎がこちらを品定めするように見てくる。もしかして、爽やかなふりして中身真っ黒なタイプか?これはヤバい。

「そんじゃ、観月先輩。昼練行ってくるのな」
「うん、またね。」

観月が最後にアイツが俺の耳元で呟いた。


渡しませんから


(俺の台詞をとるな後輩め)
(ん?大竹君何か言った?)
(いや。観月はいい奴だなって)
(な、何言ってるのっ)


――――――

桐葉様からいただいたリクエストを書こうと思ったのですが、上手くいかずこのような物になってしまいました。

リク夢は、また改めて書かせていただきます。


2010/01/18




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