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賢者の石
05

「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」

ハリーの静かな声に皆が二人に注目した。ドラコがニヤリと笑う。

「それじゃ、ロングボトムが後で取りにこられる所に置いておくよ。そうだな──木の上なんてどうだい?」
「こっちに渡せったら!」

ハリーが強い口調で言った。ドラコが箒にのりヒラリと飛び上がり、樫の木の梢と同じ高さまで舞い上がった。

「ここまで取りにこいよ、ポッター」

ドラコが挑発する。ハリーが箒をつかんだがハーマイオニーが叫んだ。

「だめ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」

ハリーはそれを無視し箒で急上昇した。ドラコが呆然とした表情をしているのをデュークは見た。

二人は上で何かを喋っていたがデュークにはよく聞こえなかった。かろうじて聞こえたのは「取れるものなら取るがいい、ほら!」とドラコが叫んだ声で、彼は思い出し玉を空中高く放り投げた。

ハリーがそれを一目散に追いかける。地面すれすれのところで玉をつかみ、間一髪で箒を水平にたてなおした。そして草の上に転がるようにして着陸した。

その手にはしっかりと思い出し玉があった。

「ハリー・ポッター!」

マグゴナガル先生が走ってきた。ハリーの顔が強ばる。ドラコが勝ち誇った顔をした。ハリーがマグゴナガル先生に連れていかれる。

本当に彼は退学になるのだろうか、デュークは疑問に思った。あのハリー・ポッターがこのような事で退学になるとは思えない。しかも、彼は無傷だ。あの芸当を成し遂げて。

喜ぶドラコを傍にデュークはそう思った。


夕食の時、スリザリンのテーブルはハリーの事で盛り上がっていたがデュークは先程の事が気になってグリフィンドールのテーブルへと向かった。

「シーカーだって?」
ロンの叫び声が聞こえた。

「やはり、そうだったんだな」

デュークがそう言うと二人が驚いたように振り返った。そこには笑みを浮かべたデュークが立っていた。

「ハリー。おめでとう。」
「あ、ありがとう。でも、誰にも言わないでね。ウッドが秘密にしておきたいんだって」
「言わないさ。ドラコの反応が楽しみだからね」

ニヤっと笑ったデュークにハリーとロンはやはりデュークはスリザリンかもしれないと思った。

その時、双子がホールに入ってきた。組み分けのときの双子だ、とデュークは理解した。

「凄いな」片方が低い声で言った。
「ウッドから聞いたよ。僕たちも選手だ──ビーターだよ」

「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ」もう一人が言う。

「チャーリーがいなくなってから、一度も取ってないんだよ。だけど、今年は抜群のチームになりそうだ。ハリー、君はよっぽど凄いんだね。ウッドときたら小踊りしてたぜ」

顔から声までそっくりだ。

「それで、君は?」

片方がデュークの方を見た。

「おい、相棒。もしかして…」
「あぁ」
「「スリザリンの姫だ!」」

二人が顔を輝かせて同時に言った。

「今なんて言ったの?」ハリーが双子に聞く。

「スリザリンの姫だよ、スリザリンの姫。有名だぜ?」
「スリザリンなのに分け隔てのない性格」
「そして、何よりその美貌!」
「「姫と言わずして何という!」」

デュークは唖然とした。自分が有名だとは知らなかったし、なによりそのあだ名…。

確かに女顔だが姫という感じではない。

「俺は男だ」デュークが呆れた声でそういうと双子は「姫は姫」とわくわくした顔で言った。あまりにも素敵な笑顔で言うのでデュークは諦めた。

「僕たちはフレッドとジョージ・ウィーズリー」「俺はデューク・ナイトレイだ。改めてよろしく」

デュークが握手しようと手を出すと二人は腕がもげるほど手を上下に振った。

「じゃあな、僕たち行かなくちゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」

「それって僕たちが最初の週に見つけちまったやつだと思うけどねきっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」

フレッドとジョージが消えるやいなや、ドラコが来た。

「ポッター、最後の食事かい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」

ハリーが冷ややかに言うとクラッブとゴイルの二人は握り拳をボキボキ鳴らしたが、先生達がいるので睨みつける事しかできなかった。

「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ──相手には触れない。どうしたんだい?魔法使いの決闘なんて聞いた事もないんじゃないの?」

ドラコが言った。

「もちろんあるさ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」

ロンが口をはさむとドラコはデュークの方を見た。


「何故かそこにいるデュークにする。真夜中でいいね?トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね。」

ドラコはデュークの手を掴んでその場を去った。

「デューク、何をしていたんだい?」
ドラコは訝しむ顔をした。

「あぁ、ハリーにちょっと祝いの言葉をかけてた」
ドラコはそれで満足したようだ。それ以上は聞いてこなかった。

間違ってはいない。ドラコは俺がハリーに厭味を言いにいったのだと勘違いしたのだ。

「で、介添人を俺にやれってか?」
「あ?あぁ、あれの事か。行く訳ないだろ。馬鹿馬鹿しい。フィルチにでも見つかればいい」
「はぁ、さすがドラコだな」

行く気は毛頭無かったらしい。確かに、ドラコがそんな正面切ったことをするようには思えない。デュークは納得した。

その夜、ドラコはとても上機嫌でニヤニヤ笑いながら眠りについていた。



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