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賢者の石
02
汽車が停車したので外に出ると、
ほんのりと寒さを感じる。

大柄な男(ハグリッドと言うらしい)に率いられついていくと湖のほとりに出た。

正面を眺めるとそこには巨大な城が見えた。
どうやら俺らが魔法を学ぶホグワーツのようだ。

四人ずつボートに乗るというので、マルフォイ、クラッブ、ゴイル、デュークで乗ったがボートは重いのか沈んでいて、なかなかにスリリングで楽しめた。


石段を上り、樫の木の扉の前に新入生達が集まる。
みんな緊張しているようだ。

扉がバッと開くと背の高い厳格そうな顔つきをした魔女が現れた。

彼女についていくと玄関ホールを横切り、
脇にある小さな小部屋があった。

「ホグワーツ入学おめでとう」と彼女が挨拶をした。

彼女はマグゴナガル先生だそうだ。
一通りこの学校について説明をすると彼女は去った。

組み分けの儀式なる物があるらしいが、
デュークは自分が何処に分けられるのだろうかと今さらながらに思った。

グリフィンドールだろうか、ハッフルパフだろうか。いや、レイブンクローかもしれない。家族は皆スリザリンだからスリザリンというのもありえる。

ただ、あの家族と一緒にされるのもデュークは嫌だった。かといって行きたい寮もない。

そうデュークが思案していると、後ろの壁から突然ゴーストが現れた。

数でいうと二十人くらいだろうか。白く透き通った体をした彼らはデューク達新入生に見向きもせず部屋を横切っていった。

「さあ行きますよ」マグゴナガル先生が戻ってきた。

「組み分け儀式がまもなく始まります。さあ、一列になって。ついてきてください」

デュークの前にはドラコが、後ろにはクラッブ、ゴイルが続いた。

大広間に入ると、そこは室内とは思えない光景が広がっていた。

空にはろうそくが浮かび、さらには星が点々と光っていた。

どうやらこれが魔法というものらしい。ある程度の魔法は出来たデュークだが、流石にこれには驚いた。


前を見ると椅子の上に古くさく汚らしいとんがり帽が置かれていた。
いったい何なのだろうか。

大広間がさっと静かになると急に帽子が歌いはじめた。なんとも言えない歌だった。帽子をかぶって組み分けをするらしい。

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けて下さい」
「アボット・ハンナ!」

金髪のおさげの少女が転がるように出てきた。彼女はハッフルパフに所属されたようだ。わぁっとハッフルパフから拍手と歓声がわく。次々と組み分けをしていった。

「グレンジャー・ハーマイオニー!」
「グリフィンドール!」さっきの巻き毛の少女だ。

グリフィンドールという事はやはり、正義感の強い子らしい。

マルフォイが呼ばれた。まぁ、彼はスリザリンだろう。予想通り、帽子が触れるか否かのうちに「スリザリン!」と組み分けされた。

満足げにスリザリンの席に着いたドラコはやはりドラコだった。

残っている生徒が少なくなっているなか何故かデュークはなかなか呼ばれなかった。

おかしい、ABC順のはずではなかったのだろうか?

次々に組み分けされていく生徒達。


「ポッター・ハリー!」その名前が呼ばれた瞬間広間がざわめいた。

彼の組み分けは中々に長かった。
生き残りは生き残りなりに色々な要素を秘めているのだろう。デュークはぼんやりとそんな事を思った。


彼が配属された瞬間にグリフィンドールの席からは割れるような歓声が上がった。まだ組み分けが済んで居ないのはデュークを含めてあと四人となった。

レイブンクローになった子の次はロンで彼はすぐグリフィンドールと決まった。

次は「ザビニ・ブレーズ」とZが終わった。

あれ、俺はどうなったんだ?デュークは焦った。
ちゃんと手紙の案内も来た。

何より自分は純血で魔法も使える。
他の魔法学校に行く予定も無かった。

「ナイトレイ・デューク!」やっと呼ばれた。
デュークは焦っていた自分を叱咤した。らしくもない。帽子を被る。

「フーム。君も難しい。頭がいい。才能もある。欲がある訳ではない。真面目でもない。興味の無い物にはとことん無頓着。だが、やるときはやる。そして自分には厳しい」

「さっさと決めてくれないか?」

だんだんデュークは自分が苛ついてくるのを感じた。自分はどこでもいいから早く終わらせてほしい。生徒達が待っているのがこのボロ帽子には分からないのだろうか。脳ミソが無いんだろう。

「その思考はまさしくスリザリン」ドラコと同じか…。

「スリザリンは嫌かね?」いや、都合がいい。悪くない。

「では…スリザリン!」
スリザリンのテーブルに向かうとドラコがよくやったとデュークの肩を叩いた。

「よろしくな」
「あぁ」

これからもドラコに世話になるようだ。

アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。
そして腕を大きく広げにこやかな笑みを顔に浮かべながら訳の分からない事を言った。

ドラコに関しては青白い顔を歪めていた。

「君は純血かい?」
突然監督生らしき生徒が声をデュークにかけた。

「ナイトレイ家を知らないのか?」
「…っ!!それは失礼をした。」

あれ、何でドラコが答えた?デュークはそう思ったものの目の前のご馳走に手を伸ばした。朝から何も食べていなかったのである。

とうとうデザートも消え、ダンブルドアがまた立ち上がった。広間が静寂に包まれた。

「今学期は2週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください」

クィディッチなぁ。そういえばドラコが選手になりたいとか言っていたなとデュークは思い出した。一年生が自分の箒を持てない事が不服らしい。

「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません」


何処だよ、それ。デュークは思わずそう漏らしたくなった。新入生に言われても分かる訳が無いだろう。

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

校歌などあったのかと今更ながらにデュークは思った。他の先生方の笑顔が急にこわばったのは気のせいではないだろう。

「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」

え、そういう。スリザリン生で真面目に歌っているものは極僅かであった。まあ…そうだよな。だんだん人数が少なくなっていくなか葬送行進曲で歌っている声が聞こえた。

見ると同じ顔、おそらく双子だろう。グリフィンドール生が最後まで残った。赤毛だったらからもしかしたらウィーズリー家の奴かもしれない。ふと、足元を見るとカエルがいた。これはあのグリフィンドール生ので間違いないだろう。そう思ったデュークは明日にでも届けることにした。

「さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」

監督生につれられてデューク達一年生は寮に向かった。寮はスリザリンのカラーである深緑で飾られていた。

「なぁ、ドラコ」
「何だ?」
「俺ってスリザリンなんだよな」

デュークがそう言った時のドラコは目が点になっていた。

「今さらすぎるぞ」
「いや。帽子が…」
「おいデューク。大丈夫か?」
「あぁ。ただ、俺はスリザリンになって良かったのか?と思って」
「お前がスリザリンになった理由はデュークがデュークだからで他にないだろ」

ドラコはさも当たり前の事だ、と言うように言った。

「…あぁ、そうだな」
「とりあえず、今日はさっさと寝ろ」
「ありがとな」
「何がだ」
「いや。おやすみ」

デュークはドラコと話して気が軽くなった気がした。

やはり、スリザリンになってドラコと一緒になれたのは良かった事かもしれない。そんな事を思いながらデュークは眠りについた。




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