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■本編03*

「まなちゃ〜ん」
「触んな!」
 勉の手を強く払い除けた。
「何でいっつも俺に嫌な事するんだよ」
「まなの事が大好きだから」
 好きな子に意地悪して気を惹かせると言うやつなのだろうか、と学は考えたが、兄弟なのだから関係ない、と打ち消される。
「もうそれ耳にタコ」
「まなの事が大好きたい」
「……他に理由ないの」
「無いな!」
 きっぱりと言う勉に、パンチをお見舞いしたが、かわされる。

***

「よーし! 今日こそ一緒に寝よっか」
「って、言いながら寝てるし!」
 格闘ゲームをして、学は全敗してしまい、後から出された罰ゲームが、一緒に添い寝だった。
 梃子でも動かないのか、押し退けようが、顔が歪もうが気にもせず、動く様子が全くない。
「も〜近いんですけどおぉぉ」
「近くしてんだよ。バカ」
「ばっバカって、どっちが!!」
 いつもあほな事を言って、学を呆れさせている勉に言われたくなかった。
「そのバカにまなは憧れてた癖に」
「え、何それ!?」
 思惑通り、食い付いた事に内心ニヤリとする勉は、得意気に語る。

 学がまだ、幼稚園に通っていた頃の事だ。金魚の糞のように勉に付いて回っていた学は、名前の通り勉を見て真似をして学び、その為に、手本になろうと思って勉は色々な事を勉強したと言う。
 前に、名前を好きだと言ったのを思い出す学だった。
「まなは全く気付いてなかったけどな」
 もう一つ、好きな理由があると言い、学に問いかけるが、小首を傾げるばかりである。
「分からないか?」
「……」
「俺が『まな』って呼ぶのは、可愛いって意味も取れるだろ?」
 かあっと一気に頬が熱くなった。漢字で書くと愛になるのだ。
「そ、そんな事言って、どうするんだよ」
 それが、勉の愛情表現だと知った学の心臓がうるさくなる。
「どうすっかなぁ、ちゅーする?」
「そういうのは、好きなヤツとしろよ」
「おい、忘れたのか? まなの事大好きだっつってんだろ?」
「知らない!」
 布団を被り、そっぽを向いてしまう。
「大だぞ、大まで付いてんだぞ?」
「……兄弟だよ」
「関係ねぇよ。っつーか、まなが可愛いから悪いんだろ」
「何それ!? 可愛くないし!」
 理不尽な理由に、カッとなり再び勉の方を向いた。
「ああ! 面倒くせぇ!!」
 押し問答が続くと思った勉は、強引に唇を奪う。
「んーーー!?」
 抵抗しようとする手をそれぞれ掴みながら、学の上に跨ぐ。
「やわらか……。ん、んっ」
「や! ……んんっ」
 滑りの帯びた物が、学の口腔を支配してゆく。いつもと違うキスや、目の前の別人になったような勉に学は狼狽えるだけだった。
「あ、にっ」
「はぁっ」
 一瞬、唾が糸を引き、学の口元へ垂れる。
「はぁ………。まな、やらし」
 濡れた唇が誘っているように思えて、再びキスをする。
「んっ」
「……可愛いまな」
 耳に熱い言葉が残る。
「っ」
「可愛い」
「んっ……あ、兄貴。どうしたの」
 少し異常だと思った学は、思いきって聞いてみた。
「どうもしねぇよ。ただ、混乱しているまなが可愛いから意地悪してるだけ」
「も、もー! 混乱なんかしてない!!」
 折角、人が親切にしたのに、と怒ってしまった学でさえ意地悪をしたくなる。
「本当か〜目がきょろきょろしてたぞ?」
「してない。もう上に戻れよ!」
「へいへーい」
 学の上から退いても、にやにやしている勉を睨み付け、戻った音を確認した後、キスの感触を思い出しては布団を握り締めた。

2012.08.27 完成
2013.08.15 加筆

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