「寒い〜」
肩をさすって身を丸くさせている。見かねたミナトが、
「マコ、おいで」
と言ってもマコは来ず、布団に抱き付いて動こうとはしなかった。
「一緒にいた方が温かいから」
「……いいにゃ」
鼻をピスピス鳴らしながらも拒む。
「まだ、怒ってる?」
「んん〜」
触ろうとすれば、布団に潜り込んでしまう。
約束の『おはようのちゅー』をしたが、照れ方があまりにも可愛くて朝から盛ってしまい、マコに怒られるはめになってしまった。
ほとぼりが冷めるまで、朝ご飯の支度をする事に。
しばらくして、部屋中に魚の良い匂いが充満して、布団の隙間からチラチラと匂いのする方を見る。
「……にゃ」
ミナトの背中に小さな振動が伝わった。
「?」
まさかとは思ったが、首だけ振り返るとうす茶の耳がびったりとくっついていた。
「…マコ、嫌だったんじゃなかったの?」
「ん〜寒いんだもん」
確かに今日の気温はミナト自身も寒い。
「仕方がないなぁ」
ご飯の支度を中断して、腰にある手を握る。
「温かい?」
「うん、お布団よりあったかい」
ミナトは振り返ってマコと対面すると、長椅子に移動した。ミナトは椅子に座り、膝元を跨いで座らせた。
「前の方が温かいよ」
そう言って、喉を撫でる。マコは恥ずかしさと気持ち良さで思考が混乱したが、最終的にはミナトに委ねていた。
尻尾を撫でてやると、これまた気持ち良かったのか、肩にすりすりねだってくる。
「にゃあ…」
額同士をくっつければ、マコは少し驚く。また、キスをするのだと思ったのだろう。
「温かくなってきた?」
「うん、ぽかぽかだよ」
気分が良くなってきたマコは自ら鼻を擦り寄せてきた。
「マコ」
「にゃ?」
人差し指と中指がマコの唇に触れると、顔を引いて不思議そうに見た。
「キスしよ」
耳がピクリと動く。
「……ちょっとだけなら、良いよ。でも、マコが苦しいのは」
二本の指で小さな口を塞ぐ。
「ふふ、分かってる。もう嫌われたくないからね」
そうして、啄むように、下唇を食べるように何度もキスを繰り返す。
「ん、どうしたの」
潤んだ目で、ミナトを見ていた。
「マコ、もう温まったから大丈夫。ご飯にしよ? 途中だったよね」
腕からすり抜けて、焦った口調で顔を真っ赤にしながら調理場へ逃げて行ったが、どうやって作るのか分からなくて、ミナトの元へ戻って来る羽目に。
「ふふ、マコってば」
2010.06.06 完成
2012.01.15 加筆