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■本編04*

 朝、目覚めるとマコの姿がない。
 焦ったミナトは、嫌な思考が浮かんでしまう、表面上では兄がいた事に喜んでいたが、実は両親の死が相当ショックを受けて……。
 慌てて外を飛び出したミナトはいつも見ている風景に違和感のある物が一つ。
「何あれ……?」
 マコが入るくらいの籠があり、その下には紐が括りつけられた長い木が支えてある。更に地面にはキャンディーが三つ。
 一先ず安堵をしたミナトは、視線だけで紐を辿るとマコの姿を確認した。籠は鳥を捕まえる仕掛けのミナト版という所だ。

 こんな事をするのも、ミナトの特訓の罠にマコが毎回引っ掛かってしまうのが悔しいかららしい。
 以前も幾度となく仕返しをされかけたが、マコの作戦も虚しく落とし穴を掘っている現場を目撃して、回避。引き戸に魚の骨を咬ませ、開けた瞬間、頭に落ちる作戦は匂いでバレてしまった。
(いつも見られてるって自覚がないからなぁ)
 そして、今回も可哀想だがこれもマコの為だと思い、紐の端がある部分を目標に迂回した。

 一歩一歩足音を出さないように標的に近付く。
「にっ!?」
 誰かに背中を撫でられ、くすぐったくて仰向けになり草でその部分を掻いた。
「わっ! あれ、お兄ちゃん!?」
 気が付けば目の前にミナトがいた。
「引っ掛かると思ったの?」
 手のひらには、籠の下にあったはずのキャンディーが三つ。そして、不敵な笑みを浮かべる。
「よそ見してるから」
 手を伸ばしてマコを引っ張って起こしてあげた。
「にゃ〜お兄ちゃんには弱い物がないの?」
 それ以前の問題だと思ったが、ミナトは少し考え、
「俺はマコに弱いかな」
 と言った。どこが? と眉間に皺を寄せて頬を膨らます。
「誘って来たら俺でも……ま、マコはそんな事しないけどね」
 舌を出して、膨らんだ頬を舐めた。
「一つだけ教えてあげる」
 嬉しそうに目を見開き耳を立てるとミナトの言葉を待った。
「マコは一点の物に集中し過ぎなんだよ」
 きょとんとする。
「目と耳と鼻を研ぎ澄ませて俺を感じてみて……そうだね、まずは目を閉じて?」

 そうして、自然と特訓は始まった。

「に」
「そ、良い子だね」
 訳も分からず、言われるがまま目を閉じたマコは、ミナトがそれから何も喋ってくれない事が不安で、眉を困らせる。

 ガサッと遠くの方から草の音と、何か鈍い物の聞こえてマコは肩をびくつかせた。音の元凶のミナトの手には大きめの石が。
「お、に」
 目を開けようとするマコに、言葉で制する。
「駄目だよ」
「にゃ」
「安心して、俺が側にいるのは匂いで分かる?」
 冷静になってミナトの匂いを嗅ぐ。
「分かるよ」
 そう返事をした後に、石をもう一度投げると、マコはまた驚いて身を硬める。
 そして、容赦なく鈍い音が幾度も、今度は色んな方向から聞こえて来るもんだから混乱を招き、先程の冷静さはもうどこかへ行ってしまったようだ。
「に〜っ」
 完全に怖がってしまい、しゃがみ込んでしまった。ミナトは苦笑をして、マコの側へ近付き優しく包み込むと、安心したのか息を深く吐いた。
「にゃー開けても良い?」
 頬を擦り寄せて甘えて来る。
「まーだ、お仕置きが済んでない」
「おしお……?」
 新しい言葉に難しそうに小首を傾げた。
「特訓に失敗したお仕置き」
 ここぞとマコをじっくり舐めまわすように見る。ふわっとした毛並みや、まだ幼い顔付きに小さな背丈を見ると、ミナトの欲望が沸き上がって来た。
「マコの為にも、今度から失敗したらお仕置きが必要だと思うんだ」
「何それ?」
(悪戯するけど、ごめんね)
 と、心の中だけで謝った。
「にゃ?」
 服を捲る事は分かったが、ますます何をするのか分からなくなった。
「服が落ちないように持っててくれる?」
 そこにあるであろう服の束を探しながら掴む。そっとお腹に触れると、中心にある窪みを舐めてマコの反応を見る。
「にゅ、何、してるの?」
 マコの問いには無視をして、今度はこう指示をした。
「もっと上まで捲って」
 何も疑わずに、首の辺りまで捲り上げるマコ。小豆粒程のサイズのものが二つ見えた。薄いピンク色で、素朴な張り具合がミナトを煽らせ、舌舐めずりをする。
「美味しそうな色だね」
 ぽつりと呟き、ゆっくりあばら骨の列をなぞって、目的の場所まで自身で焦らす。
「にっ、にゃ。くすぐったい」
「お仕置きって言ったけど、これもある意味、特訓だよ?」
「そうなの?」
 マコの耳元へ近付く。
「さっきみたいに俺の事だけに集中して」
 喋っている内に、その小豆に辿り着けば、急にクッと上に押し上げ、マコの体が跳ねた。
「にぃっ!」
 そこばかり、微妙な加減で押し潰す。
「やにゃ、そこっぐりぐりしないで」
 言葉では嫌がっていたが、体は完全に感じきっている事に気付いてない事が、また意地悪したくなったようだ。
「ごめん。マコにはこっちの方が優しいかな?」
「っ!」
 柔らかくて温かい物が、自身の胸に吸い付いたのが分かった。
「!? や、や、お兄ちゃん」
 全身に鳥肌が立ち、毛並みも逆立つ。
「何、何これ。お兄ちゃん、怖いよ!」
 やはり、質問には答えてくれないようだ。
 しばらくそれが何なのか分からず、滑りもあり、動くものだから見えないマコからすれば、恐怖でしかなかった。
「……特訓と、お仕置きだって、言ってるでしょ? 我慢」
 ミナトが喋ると、胸に息がかかった。
「に……あっお兄ちゃんの口?」
 唇の感触なんだと分かったのに、くわえている事を先に疑問を抱かないのだから可笑しかった。
 やはり、『特訓』と言う言葉が効いているのだろうか……。
「ふふ、よく分かったね」
「ゃ、喋らないで」
 先程よりも体は反応し、力も抜けてしまう。
「ご褒美」
 舌を小豆に添えて、小刻みに舐めた。マコは自然と口に人差し指と中指を持っていき、甘噛みをする。
「にゃ〜」
(あぁ、可愛くて純粋なマコ)
 勢いはなくなり、耳元でフッと笑う声が聞こえた。
「う? はぁはぁ……」
「マコ、特訓に集中してる?」
「に……ゃ」
 すっかり我を忘れていた事に気付かされ、真っ赤だったマコの顔は、しょんぼりしてしまった。
「マコにはまだ我慢も無理かな」
 無理だと言われた事と、このままではミナトに呆れられてしまう事に焦りを感じたのか、ぱっと目を開けて、真っ赤にさせながらも意地になって
「頑張るもん!」
 と、宣言をした事に楽しみだなぁと内心一人でニヤつく。

2012.01.02 完成

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