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■本編02*

 長身を木の上で仰向けに尻尾を揺らしながら、のんびり休む。下では、耳をくるくると動かしたり、足を揺らしては空を見上げ、木の揺れる様を見ていた。

「出掛ける?」
 退屈そうにしていたマコを見て、声をかけると嬉しそうに返事をした。
 それに、倉庫の食料が底を尽きそうだったので、調達をしに町中へと二匹で足を運んだ。
「危ないよ」
「大丈夫!」
 初めて来た町に、マコははしゃぐ。買い物が済んでからも、ずっとキョロキョロとお上りさん状態だ。
「ね、こっち来てゆっくりしない?」
「まだ遊ぶんだもん」
 と、言ってから一時間が経った。
「遅いな……」
 町中からは出ないように注意はしたが、一向に戻って来る気配はなかった。
 木の椅子から腰を上げて、マコの匂いを辿る。
 その内に、何やら喧騒が大きくなって早歩きになった。

「痛っ! 耳はやめてって言ってるのに!!」
 マコの声だった。
「うるせーチビ」
「バーカ、俺達の縄張りでうろつくからだろ」
「お前ら気味が悪いのによく触れるね」
 三匹の子猫に囲まれ羽交い締めにされている。
「あいつら……また虐めてんのか!」
 『また』というのは、前にこの町に通りがかった際、子猫がマコのように毛色の事で三匹に虐められていたのを、ミナトが助けた事があるらしい。
 今はもう居ないらしいが……。

 毛色が黒い所為もあるが、マコは同い年の男の子と比べてやや小さい、だからすぐに標的にされてしまったのだろう。
「わぁ! 黒が来たぞ!!」
 ミナトが一喝する事でいじめっ子は散り散りに去っていく。
 解放されたマコは、引っ張られた耳を伏せてしょぼくれていると、ミナトが背中を優しく撫でた。
「耳を引っ張られたのか?」
「うん、黒くて気持ち悪いって」
「……ちぎられなくて良かったな」
 手が耳を触ろうとしたのを見て、マコは咄嗟に身を小さくさせ、上着に付いているフードを被った。
「にゃ、大丈夫」
「本当か」
 優しく微笑んでフードが盛り上がっている部分に口付けをした。
「俺から離れるからあんな事になるんだ」
 マコは再び項垂れる。
「だって、ねこじゃらしがすごく動いてたから」
「……すごく動いて?」
 すかさず片方の耳がぴくりと動いた。
「うん、見てたらうずうずしちゃって、持って帰って遊ぼうと思って、やっと捕まえたと思ったらあの三匹が目の前にいてね? そしたら連れてかれて……」

 マコの話を聞いて、もっとお灸を据えてやれば良かったなと思った。出会い頭ではなく、おびき寄せておいて気持ち悪いだのと言われてはたまったものではない。
「マコ、耳嫌いなのに」
 ぐすぐすと目に涙を浮かべ、鼻を啜り出した。
 被ったフードをそっとずらし、耳ではなくふわふわした髪の毛に頬摺りをして宥めた。
「克服しよう」
 そう切り出すとぴくっと反応し、ミナトから離れ見上げた。マコに微笑みかけると、渋々フードを取り、頭を差し出す。
「ほら、しゃんと」
 伏せた耳がぴんと立つ。キュっとミナトの手が耳を掴んで眉間に皺を寄せた。
「痛かった?」
 頷く。マコに謝るつもりで掴んだ部分を舐ると一瞬ビクついて肩を強張らせる。
「にゃ……ぁ」
 ザリ、ザリ、ザリ、ザリ……と内側だけを丁寧に舐められ、変な声が出そうで口元に手を寄せて耐えた。
「ミナト、さん、もう大丈夫だから」
 聞こえていないのか、舐めるのを止めてくれない。
「にぁ」
 背筋はゾクッと、そして腰は砕けてしまいそうで思わず内股になった。
 ミナトは今気付いたかのように声をかける。
「どうした?」
「にゃぁ……なんか怖い」
 頬を赤くさせて怖いなんて事を言うから、笑いそうになってしまう。
「俺が怖い?」
「? あ……とそうじゃなくって……ううん? ごめんなさい」
 混乱しているマコにまた笑いそうになった。
「違うなら特訓続けていい?」
 よく分からないまま、うんと頷く、ぎゅうと抱き締め耳元で話しかけた。
「マコは悪くないのに何で虐めるんだろうな……マコの耳、綺麗なのに」
 そう言われてマコは耳を伏せてしまう。
「綺麗じゃないよ……ミナトさんのより全然だもん」
「そう? 先が少し丸いとことか、黒とうすい茶色の境目なんかすごく好きだな」
 その部分をスッと撫でてやると、くすぐったそうに耳を扇ぐように動かす。
「にゃ……分かんない、黒の方が格好良いのに」
 マコの素直な反応は嬉しかったが、苦笑する。
「格好良い?」
「うん、ミナトさんの黒、マコ好きだよ」
「ありがと。マコは本当良い子だね」
「? ……!?」
 離れたと思った腕は腰へと移動し、お尻を鷲掴みした。
「すごい柔らかいな」
「にゃぁ」
 不意をつかれ耳元で囁かれた吐息にブルっと身を震わす。
「ちょっと移動しよう……」
 そう言って荷物を腕にかけ、マコを軽々とお姫様抱っこをすると、足早に人気が無く、木が密集している森の近くへと場所を移した。

 ミナトは木に背もたれ、膝の上に弟を跨がらせる。
「マコ? 耳の他に何か嫌なことされてないか」
「ん? 耳だけだよ」
「そっか、良かった」
 安心した後はまたお尻を触り出す。
「にゃ……んぅ」
 マコの唇を舌がペロリと舐める。
「あっ」
 態勢を崩されお尻を突き出す形になると、尻尾の先から付け根を優しく、体毛だけを触るように優しく触った。
 恥ずかしがりながらもクルルと喉を鳴らしている。
「にー」
 愛らしい声に手つきも激しくなってゆく。
 ミナトの愛撫にとろけてしまいそうですがりついた。小さな手がぎゅっと上着の裾を掴む。
「……しっぽ、ばっか」
「他も触れって?」
 ううんと首を振ったが聞き入れられずに三度、お尻を弄られた。
 次第にいやらしい手つきになり、割れ目を念入りに触る。ピクピクと体を震わせ顔も赤みを帯びてきた。
 ある部分をツンと突くと全身がビクリと跳ねた。
「感度が良いね……」
 ぼそりと吐かれた言葉にも気付かず、にゃーにゃー鳴きながら腕に頭をすり寄せてきたから耳が必然的に近づく形になる。そこにキスをしてから甘噛みをすると、目を思い切り瞑って耐える様を凝視して楽しんでいた。
「……可愛い」
 それから小一時間弄られ続けたとか。

2009.09.07 完成
2011.03.18 修正

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あきゅろす。
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