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■本編11*

 マコは悲鳴をあげながら、ミナトをゴールに全速力で走って来た。
「マコ!?」
「にゃ〜お兄ちゃ〜んっ」
 サッと後ろに隠れる。
「はぁっはぁっ、何で逃げるんだ。ちょっと人捜しで聞いただけ……」
 息を切らしながらマコを追って来たオス猫を見たミナトは顔をしかめ、オス猫も足をぴたっと止めた。
「お前、ニケ!?」
「……ミナト」
 マコはきょとんとした顔で二匹を何度も交互に見渡した。
「やあぁぁっと見つけたぜ! 久し振りだな、ミナっ」
 鈍い音がニケと呼ばれた猫の頭から聞こえた。

 ――マコを探している頃、ある街で食料の調達をしていたときの事だった。
 後を付けられていると察したミナトは、振り切る為に草木の多い道を選び、どこかでやり過ごそうとしたが、相手の体力の方が上で、すぐに追い付かれてしまう。
「マントを取れ」
 素直に従う。追い剥ぎか、と苦虫を噛み潰したような顔をしたが、次の言葉にミナトは呆気にとられた。
「うお、極上に可愛い。俺の目に狂いはなかった!!」
 事もあろうか、軟派して来たのが、このニケという猫だ。

 しつこいニケをやっとの思いで、振り切る事が出来たのにまたこうして再会してしまった。

「相変わらずシャイな猫ちゃんだ。……いてて」
 マコはミナトの行動に、目をまん丸くさせて驚いていたが、我に返り知り合いだと認識すると、殴られた頭を背伸びをしながらも撫でてあげた。
 その行為にまたイラッとしたミナトは、顔面張り手を食らわし、マコをがっちりと包囲した。

「弟なんかいたんだな」
 じろじろ見られ、マコは百八十度後ろを向く。
「だから?」
「似てねぇなぁって、ミナトもこれっくらい可愛げが」
 本日、二度目の張り手である。

***

 ミナトの住んでいる場所が分かったとなれば、通うのは当然で、翌日も足を運ぶ。
 心踊らせながら中を覗くも、猫の気配はなかった。ちぇっと口を尖らせ、そこらの丸太に腰掛けようとした。
(あれはミナトの…)
 顎を擦ると、少し暇潰しをしようと思った。
「おーい、確かミナトの弟…だったよな」
「あ、お兄ちゃんのお友達さん?」
 友達とは言ったものの、よくよく思い出してみれば仲が良さそうには見えなかった。
「お兄ちゃんに用なの?」
 少し不安だったが、悪い猫ではなさそうだが。
「いや、暇だし弟ちゃんとも仲良くしようかなって」
「マコと?」
 そう言って、林檎を弧を描くようにマコに向かって放り投げた。
 貰った林檎をじっと見つめるだけで、食べようとしないマコに声をかける。
「食べないのか?」
「他の猫から物を貰ったから。お兄ちゃんがだめって」
 律儀に守っているのか、と苦笑をする。
「マコちゃんのお陰でお兄ちゃんと再会出来たんだ、お礼だ。お礼」
 要らないと言っても何度も勧められ、断る術を知らないマコは、ニケのしつこさに気圧されてしまった。躊躇いがちに口を小さく開けて、一口しゃくりと小気味の良い音を立て、かじった。
「美味しい…!」
「そうか、良かった」
 蜜がたっぷりで、かじる度に果汁が口の中に溢れてくる。途端にマコは林檎に夢中だった。
「やっぱりお前も黒なんだな」
 隣で食べる様を見ていたニケは、手を伸ばすと、耳を軽く引っ張る。
「っや!」
 夢中だった林檎を手離し、耳を覆う。
「すまん。嫌だったか」
 くしゃっと頭を撫でて宥めたときだった。
「何か…お前」
「にゃ!?」
 急に頭に鼻を近づけてマコの匂いを嗅ぐ。ミナトの知り合いだとしても、ニケのような体格の大きい猫に迫られるとぶるぶると震えているだけしか出来なかった。
「甘くて良い匂いだな」
「り、林檎を食べたから?」
「そんな匂いじゃないが」
 再び嗅いだとき、首の辺りに鼻息がかかり、肩をびくつかせた。
「や」
「マコ!」
 ニケは驚いて声がした方を向いた瞬間、マコは間をすり抜けて声の主の元へ駆け寄った。
「いくら顔馴染みでも弟に手を出す奴は…」
「手ぇ出すって、何もしてねぇし」
「マコは怖がってる」
「いや本当、なぁ?」
 ちらっとニケを見て、こくんと頭を縦に振った。
「ふぅん……マコがそう言うなら」
 機嫌が良くないのを見て、ニケはあっさりと帰ってしまった。

***

 まだ、光の差す寝床には、シャツやズボン、靴下とマコの衣類だけが散らかっている。
 マコの尻尾を掴み、頬擦りしながら問う。
「ニケに本当に何もされてない?」
「にっ大丈夫だよぉ」
 腰に腕を巻き付け、ちゅうっと臍にキスをする。
「こんなエッチな事もされてない?」
「にゃ……んん」
 頷こうとすれば、今度は唇にキスをされて、頭がじわりと痺れるような感覚に襲われてしまう。
 首筋に唇を滑らせ、ちくっと痛みが走った。
「いたいよ」
「ちょっと我慢。ちゃんと印を付けておかないと」
「印?」
「マコはすぐ狙われるでしょ?」
「そんなこと、にっ」
 手首に脇腹、太股、ありとあらゆる場所に強くキスを施したが、それだけではもちろん満足する訳がなかった。
「あと、もう一つ印を残さないとね」
 巻き付いていた腕は、下着へと入り込んで、割れ目をなぞるように撫でられ、マコはいつかの情事を思い出す。
「ふにゃっ」
 後ろから前へ捩じ込めば、袋を指先で転がされ、マコは腰を跳ねさせた。
 下着をずらしてお尻の双丘を晒す。片方の指を舐め、だ液を沢山付ければ、にちゃっと生温かい二本の指先がゆっくり窄まりの奥を目指す。
「お兄ちゃん…っ」
 くすぐるように優しく入れながら、
「脚を開いて」
 と囁いた。
「にゃ〜やだあぁ」
 やはり、セックスをするのだと確信し、頑なに拒んでも、火の付いてしまったミナトは、止める気は一切ない。
「そう言えば、林檎が落ちてたんだけど……」
 マコの体が凍り付く。
「あれ、どうしたの?」
「にっニケさんがマコに」
「……食べたの?」
 嫌な汗がどっと噴き出して、冷めた口調に泣きそうになった。
「違う、違うの!! ニケさんが勧めてっ」
「脚、開こっか」
「何もなかったよ!?」
「マコ、脚」
 再三、言われて従うしかないのだと素直に脚を開いた。
 良い子だ、と腿にキスをし、指を巧みに動かした。その愛撫だけでマコは意識がおかしくなりそうだった。
「ふふ……よく解したし」
 中に入ってた指を舐めた後、自身のパンツをずらす。
「いや、お兄ちゃん、いや」
「本当に嫌?」
 頭を何度も縦に振った。
「嘘つき」
 気持ち良かっただろ、と耳打ちし、屹立したミナトのそれをマコの中へと収める為、前に抱える形に。
「ん、ふっ」
 挿入が深くなるにつれ、ミナトの腕の中のマコはぎゅうっと力を入れてすがりつく。
「ふふ可愛いね、一気に全部挿れたくなる」
 そして、進める度にマコの陰茎が上下した。
「ほら、マコも喜んでる。やっぱり気持ち良いって」
「あっ」
 皮を剥き亀頭が顔を出した。
「やっ、ひりひりする」
「大丈夫、その内良くなるから」
 鈴口を中心に人指し指で擦る間も、下からは快感を与えられ続けた。止めるには力が入らず、先程ように腕にすがるしかなかった。
「あっあっやっ……めて。痛いっ離して」
 それも無視をして続けると、先が濡れて、透明な液が少量溢れる。
「見て? マコの、いやらしい液だよ」
 目の前にかざす。ミナトが角度を変えれば、濡れているのが見えた。
「にぃっ」
 それが何かまでは分からなかったが、ミナトの言葉のままに受け止め、恥ずかしくて顔を困らせる。
「まだ出るね」
 と、強く押せばマコはぴくんぴくんと腰をビクつかせた。
「ふふ、止めて欲しい?」
 二度頷く。
「じゃあもう一つ教えて、さっきニケに何されてたの?」
 普段の会話に、ぼんやりとした意識から引き戻される。
「さ、っき……?」
「こうやって」
 先程のニケと同じように鼻を近づける。
「っあ」
 今は、ほのかな体温にも敏感に反応してしまう。
「教えて?」
「んと、甘くて良い匂いって。マコ、甘い?」
「さぁ?」
 笑顔で答えるミナト。
「にゃうっ!?」
 急にお腹を鋭い針で突かれたような衝撃に、マコは息が止まるかと思った。
「もうニケに近付いたら駄目だよ?」
 ズル、と陰茎を半分程引き抜くと、快感に身震いした。
「な、んっ……で」
「オス猫の俺に付き合いたいって言うんだ、危険以外の何物でもないよ」
 では、マコ達は何なのだろう……と言う疑問も、ミナトの一突きでかき消されてしまう。
「はぁ、は、お兄ちゃ、怒ってる?」
「ん? うん、そうだね」
 あっさりと認められて、マコは困惑する。
「ニケさん?」
「と、マコにも少し」
 自分の名前を挙げられ、ショックだった。理由が分からないまま、激しく揺すられ絶頂に達してしまう。
「あああ!」

「――結局、お仕置きっぽくなったなぁ」
 ぐすぐす鼻を啜り、しょぼくれる。
「マコ、林檎いらないって言ったもん」
「その割には殆ど食べてたね? とにかく、ニケには近付かない事」
 と、すかさず突っ込まれ、マコは何も言う事が出来なくて……。ミナトには敵わないと思った。

2009.11.04 完成
2012.05.05 加筆

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